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ハードに「魂」はあるか、都市の持続可能性を問う

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SB2019Tokyo

セッション「地域コミュニティでつくるサステナブルな都市ブランド―横浜」。左からファシリテーターの安田智宏氏、JTB総合研究所の岡田邦喜氏、横浜市の貝田泰史氏。

都市を持続可能にしていくためには、どのような取り組みが必要なのか。サステナブル・ブランド国際会議2019東京では、SDGs(持続可能な開発目標)未来都市に選出された横浜市を例にしてトークセッションが展開された。魅力的な施設が立ち並ぶ横浜だが、識者は「整備されたハードに魂を込めていかないと意味がない」と指摘する。(オルタナS編集長=池田 真隆)

同セッションのテーマは「地域コミュニティでつくるサステナブルな都市ブランド―横浜」。横浜市を持続可能にしていくためにどのような取り組みが求められるのか。産官学の視点から話し合った。

このセッションにパネリストとして登壇したのは、JTB総合研究所事業開発部主席の岡田邦喜氏と横浜市文化観光局横浜魅力づくり室企画課の貝田泰史氏の2人。ファシリテーターは関東学院大学広報課アドミッションズセンター課長の安田智宏氏が務めた。

横浜市の歴史を振り返ると、大きな転換になったのは1859年の開港である。様々な文化が入ってきたことで、「イノベーションハブ」と呼ばれ、感性の高い街として評価された。そんな横浜市だが、来年6月には新市庁舎を建設予定で、自動運転の実証実験や医療拠点の再整備なども進めていく。

セッションでは、岡田氏が、横浜市が持つポテンシャルについてこう説明した。「1989年に開かれた横浜博覧会を機に人口が増え、魅力的な施設が相次いで建設された。歴史的建造物が残っていることも価値。これからのポイントはコトづくり。ハードは整備されたので、魂をどう入れていくのかが大事」。

参考都市の取り組みとして、米ニューヨークにあるブライアントパークを紹介した。この公園は麻薬の売人がたむろするなど治安が悪く、ゴミなども散乱していた。

しかし、行政が民間に管理を委託したことで、年々治安や衛生状況が改善されていき、今では、コミュニティ活動の拠点になっている。企業から、商品の宣伝にその公園に来る人にPRしたいという問い合わせを受けるようになった。このブライアントパークのように公園を活用した取り組みで、交流人口を増やすことが有効ではないかと、岡田氏は提案した。

貝田氏は、「横浜に来るインバウンド層を国別で見ると、米国が2割で7割はアジア圏。観光だけでなく、ビジネスで来ている人が多いのが特徴」と述べた。一方、課題としては、「60代以上が多いので、少ない10代の層を巻き込みたい」とした。

ファシリテーターの安田氏は、若者にアプローチするためには、自己満足基準の多様化を理解することが必要と強調。「若者はマスの媒体よりも、SNSが主流。満足する基準が、身近なコミュニティに集約している」。

この価値観に合った施策として、学生がつくるガイドマップを提案した。学生たちが横浜を歩き、気付いた魅力や課題について発信する取り組みだ。企業が訴求するのではなく、同世代が発信することで親近感を持ってもらえるのではないかと説明した。

池田 真隆 (いけだ・まさたか)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナS編集長
1989年東京都生まれ。立教大学文学部文芸思想学科卒業。大学3年から「オルタナS」に特派員・インターンとして参画する。その後、編集長に就任し現在に至る。オルタナSの編集及び執筆、管理全般を担当。企業やNPOなどとの共同企画などを担当している。
「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。