• 公開日:2025.12.05
SB-J エディターズ・ストーリー
【編集局コラム】SBSA、4年越しに参加者からメンターへ パワフルな姿から感じる高校生の強み
  • 山口 笑愛

取材現場で心を動かされた言葉、記事にはならなかった小さな発見、そして、日常の中でふと感じたサステナビリティのヒント。本コラムでは、編集局メンバーの目を通したそんな「ストーリー」を、少し肩の力を抜いて、ゆるやかにつづっていきます。 

今回の担当は山口です。

「サステナビリティの原点」

サステナブル・ブランド国際会議の学生招待プログラム「第6回 SB Student Ambassador ブロック大会」。今年は全国9カ所で開催され、先月11月に、無事全ての大会を終えることができました。

私は、プログラム内で開催されるテーマ別ワークショップの司会と、生徒のディスカッションをサポートする「メンター」という役割で、九州、東海、東日本、西日本の4大会に携わらせていただきました。

SB Student Ambassador(SBSA)は、私も高校1年生の時に参加したプログラムで、私にとっての「サステナビリティの原点」といっても過言ではない場所です。

4年前、SA東日本大会に参加した高校1年の頃の筆者(中央)

参加生徒は、高校1〜2年生がほとんど。年齢はそれほど離れていませんが、パワフルな行動力とチームワークにどの大会でも圧倒され、なんだかだいぶ年を取ったような気分に。現状に満足せず、常に前進しようとする挑戦欲とクリティカルさは、何歳になっても忘れたくない力だと、高校生たちが教えてくれました。

登壇者が実践する「自分だけ」のサステナビリティ

ブロック大会では、午前中に基調講演があり、午後からテーマ別のワークショップが行われます。

基調講演では、毎年、サステナビリティに最前線で取り組む起業家らが登壇し、活動の経緯やサステナビリティへの思いを紹介。今年の大会では、「グローバルヘルス」と「サステナビリティ」を軸に事業を行う FiberCrazeの長曽我部竣也・代表取締役社長や、廃棄物からアートを制作する事業を手がける、ACTA+の共同代表・代表取締役の橋本季和子さんなど、今まさに社会課題と向き合っている方々が登壇しました。

登壇者の方々に共通していたのは、自分の「好き」がルーツになった気づきや、もやもやが行動のきっかけになっているということ。例えば、ACTA+の橋本さんは、実家が廃棄物処理会社であるというルーツから始まり、デザイナーとしての経験や好きだった韓国への留学で得た気づきが積み重なって現事業の「きっかけ」が生まれたといいます。長宗我部さんが今取り組む開発事業も、「なぜ自分がやるのか?」という問いを突き詰めた結果、出会ったアイデアだったそうです。

自分ならではのルーツや経験を生かしたアイデアを形にする姿に、改めて、サステナビリティの幅広い可能性を感じることができました。

初対面から始まるグループワーク

午前中の講演もあっという間に終了し、ついにメンターたちの出番。

高校生にグループワークの説明を行う筆者

高校生たちは、それぞれ事前に選んだテーマ別の教室に移動し、午後からグループワークを行います。

早速、事前に決められたチームごとに着席。「知らない人ばかりで緊張しているかな」と思いながら、アイスブレイクの自己紹介タイムをスタートさせると、期待とは裏腹、私の小さなジョークや問いかけにも笑いと拍手を送ってくれる生徒がたくさん。少し緊張を見せていた生徒たちも、昼食中の会話で見つけた共通の話題で盛り上がっていたり、チームそれぞれのペースで仲を深める雰囲気に、参加者だった頃の自分を思い出しました。

ここからは、テーマごとの講演とディスカッションテーマが設けられ、それに沿ってグループワークが進んでいきます。例えば、九州大会のテーマの一つ「持続可能な観光」では、タイ国政府観光庁福岡事務所の大森優華さんがオーバーツーリズムに伴う問題やタイの対策方法を解説。その後、「タイの事例を参考に九州に観光客を呼ぶための仕組みや商品を考えてみよう」というテーマでグループディスカッションが始まります。

生徒たちは、九州といっても、福岡県、佐賀県、熊本県など住んでいる場所はさまざま。それぞれの県の良さを出し合うところから始めたり、地域の「不便、エコじゃない部分」をシェアしていったり、グループそれぞれの方法で、お互いの住む場所について知りながら意見交換をし合う様子がとても印象に残りました。

高校生の「チームビルディング力の高さ」

どのセッションでも共通して感じたのは、生徒たちのチームビルディング力の高さです。初対面同士のメンバーにも関わらず、昼食の時間から積極的に会話を進めている姿。またグループワーク終盤では「〇〇にはこれをお願いしたい」「このメンバーで役割分担しよう」と、お互いの強みを理解した上で効率良く作業を進めていく姿がとても印象的でした。

また、前日から準備してきたというノートを持参していたり、熱心に登壇者やメンターに質問をするなど、高校生の知的好奇心が溢れる場面に多く接し、「楽しそうだから」という理由で参加した当時の私との、サステナビリティに対する関心の高さの違いを感じました。

高校生にとっての「宝物」とは?

90分間の濃密なグループワークの後は、ついに成果発表。どのグループも、時間終了直前まで手を動かす熱中ぶりを見せる中、それぞれが経験やリサーチをもとに「自分ごと化」して発表する姿がとても印象に残っています。

最初は「モビリティ」「地方創生」など、大きなテーマを前に「何から考えたら良いか分からない」と戸惑って声をかけてくれる生徒も。私は、それぞれの興味や「好き」を意識して、身近なテーマからブレインストーミングをするように声かけをしました。

例えば、オンワードコーポレートデザインのテーマにある「宝物」という言葉。客観的に考えて行き詰っている生徒たちに「みんなにとっての宝物ってなんだろう?」という問いを投げかけると、それぞれ「思い出のローファー」「子どもの頃の服」「卒業アルバム」などのアイデアがパラパラと出始めます。高校生らしい発想に置き換えて具体化することで、クリエイティブなアイデアに発展させていく姿に、懐かしさと、フレッシュなエネルギーを感じました。

「宝物」を「思い出のローファー」に置き換えて完成したアイデア

大会終了後、「来て良かった」「SB国際会議にも参加できるように頑張る」と駆け寄って来てくれる生徒たち。メンター一同、彼ら・彼女らの止まらないワクワクと行動力に背中を押された気分になりました。今回、高校1年の頃の私のように「たまたま」参加した生徒も、強いパッションと共に来た生徒も、サステナブルなアイデアを考える楽しさとモチベーションを持ち帰ってくれていたらな、と思います。

エネルギーとクリエイティビティが溢れる場をサポートさせてくださり、ありがとうございました。

written by

山口 笑愛(やまぐち・えな)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 インターン

ミネルバ大学在籍中。ユースコミュニティ「nest」に参加したのがきっかけで、高校1年生からSBに関わる。今はファッションと教育を主軸に、商品制作、メディア、イベント企画を通して発信活動中。

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