サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

コミュニティ・ニュース

地域の社会課題解決へ学校の枠超え高校生が議論――第3回SB Student Ambassador ③ 中国・北海道ブロック大会

  • Twitter
  • Facebook
SB Student Ambassador

サステナブル・ブランド ジャパン編集局

各ブロック大会には、サステナブル・ブランド ジャパンのユースコミュニティ「nest」の大学生メンバーらが「メンター」として参加。高校生と同じZ世代の視点からアドバイスを行い、交流を深めた(写真中央のメンターは、創価大学3年の小山正義氏。 11月6日、札幌大学で開かれた「SA北海道大会」より)

地域の社会課題解決に向け、高校生たちが学校の枠を超えて自分達に何ができるかを考えた「第3回SB Student Ambassador(SA)ブロック大会」。サステナブル・ブランド ジャパンと日本旅行が毎年共催で開いているもので、今年の参加者はこの日の学びをもとに各校で論文を作成し、選考に残れば、来年2月14・15日に行われる「SB国際会議2023東京・丸の内」に招待される。大会の様子を、四国・北陸・東北東海・九州に続き、北海道と中国の2大会から紹介する。

基調講演「未来を変える、はじめかた」。 小さな挑戦重ねて

北海道大会で講演する西側氏

中国・北海道大会で基調講演を行なったのは、株式会社coxco(ココ)代表取締役でNPO法人DEAR MEの代表理事を務める西側愛弓氏だ。タイトルは「未来を変える、はじめかた」。西側氏は、1995年3月生まれの27歳で、IT企業退職後の2019年7月にNPO法人DEAR MEを、12月にアパレルブランドのcoxcoをそれぞれ設立し、ファッションを通して貧困問題など社会課題の解決に取り組んでいる。

昔からファッションが大好きだったという西側氏が、社会課題に関心を持ったきっかけは、大学生の頃、海外の一人旅で目の当たりにした貧困問題だった。さらにドキュメンタリー映画「ザ・トゥルー・コスト」(2015年)を観て、アパレル産業の劣悪な労働環境や大量生産・大量廃棄の問題に衝撃を受ける。

そして大学3年の時に立ち上げたのが、貧困地域でファッションショーを開催する団体DEAR MEだった。ランウェイを歩くのは、貧困地域で暮らす子どもたちだ。衣装は彼ら彼女ら自身がデザインし、日本の専門学校生らが古着を使って製作。「ただファッションショーをするのではなく、環境問題にもみんなで向き合っていくことも目的」と西側氏は言う。

2023年2月にはファッションスクール「coxco Lab」を開校予定で、ファッションや美容スキルだけでなく、サステナビリティ教育や性教育を子どもたちに無償で提供するという。教育と雇用の創出により、貧困率の削減を目指す。自身を「落ちこぼれだった」と振り返る西側氏。会場に集まった高校生らに対し「社会課題は、私たち人間が生み出した問題だからこそ私たちが解決する責任があるし、解決もできる」「抜きん出た能力や才能がなくても、『大きな野望』と『小さな挑戦』を重ねていくことで変えられる社会や未来があると思う。悲観的にならないで」と語りかけた。

●中国大会=10月8日、岡山大学津島キャンパスにて開催、26校173人参加=

中国大会は10月8日、岡山大学津島キャンパスで開かれ、26校から173人が参加した。オープニングでは岡山大学の加賀勝・上席副学長が、食の不均衡の解消を目指す「TABLE FOR TWO」など同大学の取り組みを紹介。地元企業のテーマ別講演には、岡山トヨタ自動車、中国銀行、テオリ、トンボの4社が登壇した。

地域とコラボで生まれたパートナーシップ

中国大会のテーマ別公演に登壇した、左から岡山トヨタ自動車の梶谷俊介、中国銀行の武田憲和、テオリの中山正明、トンボの槇野陽介 の4氏

岡山トヨタ自動車からは代表取締役社長の梶谷俊介氏が登壇し、「いま、わたしたちにできること」のタイトルで、同社と顧客、地域とのパートナーシップの取り組みなどを紹介した。岡山の魅力を発信するマガジンの発行や防災検定の実施、マルシェの開催など、「地域の方とコラボすることで、地域もわれわれも元気になるというつながりが生まれた」という。

同社は昨年、いろんな世代の社員が膝を突き合わせ、「SDGs宣言」を作成した。「『多様な人々をつなぎ、共に育ち合い、笑顔あふれる安全で快適な地域づくり』に社員一人ひとりが取り組むことを通して、持続可能な社会の実現に貢献してまいります」とするもので、「岡山県交通死亡事故ゼロ社会に貢献する」など、2030年までの6大ミッションを掲げる。梶谷氏は講演の中で「これらのミッションを毎年の方針に落とし込んでいく」と宣言した。

違う立場、視点の人と課題解決へ

岡山市に本店を置く中国銀行からは、地方創生SDGs推進部次長の武田憲和氏が登壇し、ビジネスマッチングなどの銀行業務を踏まえつつ、「SDGsが掲げる課題解決を通じて、魅力ある地域をつくっていけるのではないか」と問題提起した。同行が進める一例として、キャッシュレス決済ツールなど、ITを活用したサービスを紹介。「高齢者の特殊詐欺防止など防犯に役立つほか、ペーパーレス化で環境負荷も減らすことができる」と強調した。

同社もSDGs宣言を行い、地域経済が抱える問題やダイバーシティ、環境保全に重点的に取り組んでいる。その中から武田氏は、フードロスへのアプローチとして、岡山大学と共同で取り組む「カンパン料理アイデアコンテスト」などを紹介し、「銀行だけだと全然気がつかないような企画。立場や視点の違う人たちと一緒に取り組むことで、地域の課題解決につなげていければ」とする期待を話した。

廃棄されていた竹に着眼、家具の素材に

「孟宗竹を活かした家具・インテリア創り」と題して登壇したのは、竹を使った家具の製造・販売を行うテオリ(倉敷市)取締役会長の中山正明氏だ。地元はタケノコの産地。四半世紀ほど前、家具の素材として「孟宗竹」に着眼した。5〜7年経った古い竹は間伐されて廃材になるが、集成材として家具に使うことができるからだ。当時の思いを中山氏は、「木は材料になるまで80年かかる。竹は3年ほど。地域の材料を使えばずっと続くと思った」と振り返る。

竹は1本100円で買い取っている。テオリは原材料を手にし、農家は収入を得る。竹林の荒廃防止にもつながる「三方良し」。SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」などにも通じる取り組みだ。昨年は2万5千本の竹が集まったという。切った後の竹は、表皮から塗料や入浴剤を作り、枝葉はチップにして土に返す。それが肥料となって、また竹が育つ。1本の竹を伐採したら余すことなく使い、最終的には土に還る。そんな循環型社会を目指している。

一人一人に合った制服を選べるように

学生服・体育着メーカーのトンボ(岡山市)からは、事業開発本部マーケティング課課長の槇野陽介氏が登壇。「ジェンダーレス」をテーマに、SDGsの目標15「ジェンダー平等を実現しよう」や4「質の高い教育をみんなに」などに関する取り組みを紹介した。同社は全国1万5千以上の学校に制服を納めており、これまでであれば男子は詰襟、女子はセーラー服だった状況が、近年大きく変化しているという。代わりに増えているのが、男女差の小さいブレザーやスラックスだ。背景には、11人に1人が当事者とされるLGBTQ(性的マイノリティー)の人たちの存在がある。

槇野氏は、スカートを履きたくなくて不登校になったトランスジェンダー男性の事例を紹介。一人一人が自分に合った制服を選べるよう選択肢を増やす重要性を強調し、「見た目の男女差を小さくしたジェンダーレス制服によって、『絶対にこれを着なさい』という強制力に苦い思いをしている方を少しでも減らしたい」と思いを語った。同時に、メーカーだけでなく、社会全体でジェンダーへの理解を広げていく必要性も指摘した。

4つのテーマでワークショップを行った高校生は、テーマごとに代表1チームが全体総括の場で発表。地方で増える空き家問題に対し、リノベーションした空き家でマルシェを開催し、地域活性化を促す提案があった。フードロスをテーマにしたチームは、生ごみを肥料に変える「フードポスト」を街中に設置するアイデアを披露した。フードポストに生ごみを投下すると、抽選で商品券が当たる仕掛けを考え、利用者の増加を期待。生ごみから作られた有機肥料が農家に届けられ、野菜などの栽培に生かされることで、フードロスに貢献できると力説した。

中国大会に参加した高校生の感想の一部 =アンケートより=

何か案を出した時にその案の問題点と解決案、そして、その解決案の問題点というふうに問題点と解決案の繰り返しをすることでより良い案ができると分かった(岡山県立玉島高等学校2年)

西側さんの基調講演が印象に残りました。自分が企画したプログラムで、貧困の地域にいて働くことのできない人を雇いたいという考えに感動し、自分も社会に貢献しなければいけないと思うきっかけになりました(岡山県立岡山操山高等学校1年)

銀行はお金を貸し借りする場だけでなく、地域活性化のために活動していると知り、今後SDGsをどんどん活用してより良い街づくりに近づけていけたらなと思いました(倉敷鷲羽高校2年)

●北海道大会=11月6日、札幌大学にて開催、25校106人参加=

北海道大会は11月6日、札幌大学で開催され、オープニングでは西側愛弓氏に続き、SPACE COTAN取締役兼CMOで、液体燃料ロケットの開発を行うインターステラテクノロジズのビジネスディベロップメント部に所属する中神美佳氏が基調講演を行った。

北海道は『宇宙版シリコンバレー』に 人口5千人の町に注目集まる

中神氏

タイトルは「北海道は『宇宙版シリコンバレー』に」。中神氏の故郷、北海道大樹町は人口5400人の小さな町だが、いま大きな注目を集めている。アジアで唯一の、民間に開かれた宇宙港「北海道スペースポート」があるからだ。その運営を手掛けるのがSPACE COTANであり、「宇宙版シリコンバレー」の形成を目指す。宇宙空間を利用したビジネスや宇宙旅行がいま、大樹町から始まろうとしている。

中神氏によると、宇宙産業の市場規模は2020年で40兆円、2040年には110兆円と推計され、急成長が期待されている。一次産業が基幹産業だった大樹町に宇宙産業が誕生し、複数の企業が進出。長年の人口減少にも歯止めがかかった。経済効果は年間267億円で、北海道新幹線よりも大きいという。中神氏は「宇宙を核とした地方創生」をキーワードに挙げた。

宇宙産業を牽引しているのは人工衛星だ。位置情報アプリなど、私たちは普段から宇宙のデータを使っている。人工衛星には、SDGsに関連して二つの役割が注目されている。一つは情報格差の解消だ。地上に通信回線の確保が難しかった開発途上国で、人工衛星の利用が期待される。もう一つはデータ観測だ。海洋状態から鉄道線路の老朽化まで、衛星データで検知できる。

もともとはまちづくりに興味があったという中神氏。今夏、NASA(アメリカ航空宇宙局)を見学した経験を振り返り、「紆余曲折はあるだろうが、理想をイメージしていれば一歩一歩近づけると思う。きょう感じたことを心の羅針盤にして、理想を追いかけてください」と高校生に呼びかけた。

グローバル人材確保へ産官学の結びつき強化を

アミノアップの岡本氏

午後の企業のテーマ別講演では、アミノアップ(札幌市)、テックサプライ(同)、オンキヨー(大阪府東大阪)、セレスポ(東京都豊島)の4社が登壇した。

このうち、機能性食品の開発・製造を手掛けるアミノアップからは総務部の岡本佑斗氏が、「北海道のグローバル化を目指す上での課題」について話した。バラエティーに富んだ同社の機能性食品の中には、例えば、アスパラガスの廃棄部分から成分を抽出し、睡眠の質向上やストレス軽減に効果を発揮するETASなど、食品ロス改善に貢献する製品もある。

近年は、販路拡大に積極的に取り組み、海外40カ国以上に輸出。国際学会の運営や海外の研究者との勉強会も行なっているが、そこで課題となっているのが人材確保という。

岡本氏は、グローバル人材が道外や海外に流出しているとし、「産官学が有効に結びついていないからではないか」と問題提起。北海道の企業全体がグローバル人材難に直面している、とも強調した。一方、異文化への順応力などを備えた「グローバルマインド人材」が今後、重宝されると指摘。会場の高校生に向けて「会社風土や取り組みなど、どのような企業ならグローバルマインド人材が多く来てもらえるか、一緒に考えたい」と呼びかけた。

ビルメンテナンス会社がペットボトル問題に挑む理由

テックサプライの幡氏

「ペットボトルで取り組むSDGs」をタイトルに掲げたのは、ビルメンテナンスや警備業を手掛けるテックサプライだ。代表取締役の幡優子氏が、ペットボトル国内完全循環を目指す日本環境設計(現JEPLAN)との出会いから、熱っぽく説明。ペットボトルの国内生産量は年間244億本(2018年度)で、そのうち9割を回収。しかし使用済みペットボトルから新たなペットボトルを作る割合は12%(同)にとどまっており、残りは石油を使って生産しているという。そこで幡氏は、石油を使わないケミカルリサイクルに注目。川崎にケミカルリサイクル工場を持つJEPLANとパートナーシップを結び、ペットボトルの完全循環実現に向け活動している。

同社は、道内の高校と共にペットボトルを回収し、サステナブルなエコバッグの制作なども行う。なぜビル管理会社が、ペットボトルか。幡氏は「ただ建物だけきれいにしていても、地球全体が汚れてしまえば人間は生きていけない。7世代先の子どもたちのために、一番身近なペットボトルの問題から、地球を守る取り組みを進めている」と強調し、高校生にも行動を呼びかけた。

日本酒造りに音楽。専門の技術力が付加価値に

オンキヨーの北川氏

オーディオ機器メーカーとして知られるオンキヨーからは、北川範匡氏が登壇。「音楽を聴いた酵母や微生物による食品といった新しい付加価値提案」のタイトルで、長年培ってきた音響技術の可能性を広げ、付加価値を高める取り組みを紹介した。事業売却に伴い、音響機器の設計・製造から、音振動技術を使った新しいビジネスへシフトしたことを説明。その一つが日本酒造りだ。タンクに機械を取り付け、スピーカーの技術を使って酒を揺らす。約30日間、音楽を聞かせる。東京農業大学に調査を依頼した結果、ある周波数をかけると発酵が進むことが判明。音楽を聞くと酵母の動きに変化があり、酒の味も変わることが分かったという。

北川氏は「専門分野の技術力が付加価値をつくる武器になる」としつつ、自身の経験から「趣味と仕事の線引きをあえて明確にせず、ハイブリッドにしたらよい」と提案。今後、大学などで研究生活を迎える高校生に向けて「成功体験を持つことがサステナブルな未来につながる。勉強で成功するのが難しくても、趣味で成功する。その過程を勉強にも生かせれば自然と楽しめるはずだ」とエールを送った。

イベントは目的?手段?SDGsに果たす役割とは

セレスポの犬塚氏

「イベントと社会」のタイトルで登壇したのは、イベント会社・セレスポのサステナブルイベント研究所所長、犬塚圭介氏。「イベントには必ず目的がある」と切り出し、「言い方を変えると、イベントとは何らかの目的を達成する手段でしかない。そのイベントの目的を強く意識することで、終わった後の効果、レガシーが効果的に表れる」と強調した。また、イベントには社会実験と教育、コミュニケーションの機能があるとして、2018年に千葉県内のイオンモールで実施したユニバーサルイベントを紹介。ユニバーサルイベントとは、障害の有無や年齢、性別の違いなどに関係なく、多くの人が安心して参加できることを目指したイベントだ。

そのイベントでは車いすユーザーと、普段車いすを利用していない人が、車いすで一緒に買い物を行った。通りづらかった場所などを共有し、売り場の改善につながった。車いす利用者だけでなく、ベビーカー利用者らにとっても買い物がしやすくなり、一つの課題解決となった。イベントの機能を使うことで、SDGsの目標達成の手段ともなり得る。

犬塚氏は高校生へのメッセージとして「さまざまな課題があるが、あまり直接的に伝えると重くなり過ぎることもある。変化球をかけて見せ方を変えたり、ゲーム性を持たせたりすることも大切。正しく伝えると同時に、楽しく伝えることも考えてみてほしい」と語りかけた。

大会の締めくくりとなる全体総括の場で、高校生の代表4チームが、ワークショップでの議論で生まれたアイデアを披露した。「買いたくなる付加価値の高い商品」をテーマにしたチームは、イヤホンを着けた歩行者の交通事故に着目し、歩行者に音で信号を認識させるアプリ開発を提案。SDGsの目標の9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」を挙げ、「目標達成に近づくのではないか」と期待した。「SDGsの達成に向けた文化祭」をテーマに議論したチームは、ペットボトルを再利用した衣装でのファッションショーを企画。「着たい服で個性を表現し、ジェンダー平等の実現にもつなげられる」などと具体的な構想を明かした。

北海道大会に参加した高校生の感想の一部 =アンケートより=

オンキヨーさんの音楽を聴かせたお酒づくりというのが印象に残りました。SDGsの考え方を実際に企業としてどういう風に生かしていくのかを知ることができました。また、今回付加価値のある商品について考え、これから社会に出た時につながるような経験になったと思います(市立札幌大通高校1年)

西側愛弓さんの貧困問題や性に着目したファッションショーなどの取り組みがとても印象に残っています。意見を沢山出し合って話し合うことの大切さを学ぶことができました。 そして、さまざまな観点から物事を考えていく事の重要性や難しさを知ることができました(小樽桜陽高校1年)

学校生活でもSDGsやサステナブルについて考えようと思える機会になりました、ペットボトルだけでスカートができたりロケット発車所ができて人口減少が止まったりと可能性は無限大だな、と思いました(名古屋大学教育学部附属高校2年)

本年度行われた「サステナブル・ブランド国際会議 学生招待プログラム 第3回 SB Student Ambassador ブロック大会」の詳細はこちら

SB Student Ambassador
SB Student Ambassador

「SB Student Ambassadorプログラム」とは、SB国際会議に参加し、高校生の立場から意見を発表するプログラムです。

SB Student Ambassador2024のWEBサイトはこちら