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地域の社会課題解決へ学校の枠超え高校生が議論 ――第3回SB Student Ambassador ④ 東日本・西日本大会

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SB Student Ambassador

サステナブル・ブランド ジャパン編集局

他校の生徒との交流に目を輝かせる高校生(10月30日、法政大学市ヶ谷キャンパスで開かれた「東日本大会」より)

サステナブル・ブランド ジャパンが9月から全国9ヶ所で行った「第3回 SB Student Ambassador(SA)ブロック大会」は11月13日の西日本大会で閉幕した。各地域でZ世代の起業家の言葉に耳を傾け、地元企業や自治体のSDGsにかける思いや取り組みを学んだ参加者は、来年2月14・15日に開かれる「SB国際会議2023東京・丸の内」への出場権を懸けて論文作成に挑む。高校生たちは大会を通じて何を得たのか――。四国・北陸・東北東海・九州中国・北海道に続き、最後に同じプログラムで行われた東日本と西日本の大会の内容を東日本大会の様子を通じて紹介する。

●東日本大会 =10月30日、法政大学市ヶ谷キャンパスにて開催、40校257人参加=

倉敷鷲羽高校の生徒らアイデアを具現化、現場から中継も

昨年のSA大会、そして今年2月のSB国際会議に出場し、そこで発表したアイデアを「SDGsいちななマルシェ」として具現化した岡山県立倉敷鷲羽高校ビジネス科の生徒たち

東日本大会は10月30日、法政大学で開催。オープニングでは特別生中継として、今年2月のSB国際会議に出場した岡山県立倉敷鷲羽高校ビジネス科の生徒たちがちょうどこの日にJR岡山駅前の広場で、SA大会で発表したアイデアを具現化した「SDGsいちななマルシェ」を開こうとしている現場が映された。

マルシェは、形が崩れて使えなくなった果物のドレッシングや生産から加工まで高校生が間に入ってつくったお茶など、このSAを通して出会った全国の高校生と連携して仕入れた各地の特産品44品目を陳列。約半年かけて準備してきた生徒からは、完売に向け、「1人でも多くのお客さまに楽しんでもらいたい」とする意気込みが聞かれた。

JETROと連携「一品一村マーケット」挑戦の結果は

成田空港で実際に販売も行った「一村一品マーケット」の取り組みについて発表する高校生

続いて会場では、JETROとの連携で高校生と日本旅行がタッグを組み、開発途上国の現状を学びながら、現地で生産された商品を国内の空港で実際に販売した「一村一品マーケット」の取り組みが紹介された。プロジェクトには今年、関東と関西から各3校が参加し、高校生の視点で売り場を盛り上げ、開発途上国への貢献につなげていこうと、学校の枠を超えて奮闘した結果、2日間の店舗実習で過去最高の売り上げを記録した日もあったという。

このうち、東日本大会では中村高等学校と相模女子大学高等部、豊島岡女子学園高等部のメンバーが活動報告を行い、「途上国の劣悪な労働環境を改善するために本当に必要なのは何か、改めて考えさせられた」「高校生に国際協力なんか無理、と思っていたが、企業と協働することで活動の幅が広がった。皆さんも『小さな勇気』を心がけて」などとスピーチ。さまざまな社会課題の解決に向け、会場の高校生の思いを高めた。

東日本大会の午後の部に登壇した、左から、オンワード商事の大竹博文、森田一晴、カンタスエアウェイズリミテッドの犬飼克俊、積水化学工業の野澤育子、三浦仁美、日本貨物鉄道の石井智の6氏

午前の基調講演はAllesgoodの勝見仁泰CEOが担当(詳細は第3回 SB Student Ambassador ブロック大会②東海・九州ブロック大会に掲載)。午後のプログラムは①制服のチカラ②モビリティ×SDGs③気候変動④社会インフラを支える物流、の4つのテーマでワークが行われ、高校生は自分の選んだテーマの講演を聞いた後、仲間同士でアイデアをまとめ、発表するグループワークショップに臨んだ。

制服はメッセージを発信する強力なメディア

テーマ①「制服のチカラ」には、国内約1600社の企業制服や学校制服の製造、販売を手掛けるオンワード商事ワークスタイルデザイングループから、大竹博文、森田一晴の両氏が登壇。

同社は、「ヒトと地球の、明日の笑顔をデザインし続ける」というパーパスの下、サステナブル素材の使用促進や梱包形態における環境負荷低減に取り組むほか、縫製工場に健全な労働環境や環境配慮が実現されているかを監査するスキーム「オンワード認定工場」制度も導入している。

はじめに大竹氏は、「制服はメッセージを発信する強力なメディアである」として、制服に社会課題を解決する効果があることを強調。環境面では、サトウキビの廃糖蜜を原料にした企業制服の開発や、海洋漂着ペットボトルを回収して繊維にリサイクルするためのビーチクリーン活動を実施していること、さらに、製造時の無駄なサンプル作成を避けるために、デジタル上で素材や柄を忠実に再現し、モデリングできる技術を活用するなど、アパレルならではの取り組みを進めていることが披露された。

次に人権問題の観点から、森田氏が、ジェンダーに配慮した作業服として、女性現場監督が男性と同じ作業服を着用し、体にフィットせず能率が低下していたため、女性目線を取り入れた制服を新開発した事例を紹介。LGBTQについては、同社が扱う学校制服約60校のうち、半数で女子スラックスを導入し、各種店舗制服においてもジェンダーレス制服を開発、導入しているという。

グループワークのテーマは「これからの時代に求められる制服」。高校生からは「3年で着なくなることはロスとなるため、制服レンタルサービスを公式導入」「制服をアプリでカスタムする受注生産方式」「完全リサイクル可能な素材を活用」など多くのアイデアが飛び交った。
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もはやカンタス航空が1社でやれることなどない

航空業界の未来について力説する犬飼氏

テーマ②モビリティ×SDGsは、航空業界から、カンタスエアウェイズリミテッドの犬飼克俊・法人営業部長が登壇し、同社が2022年春、クライメイト・アクション・プランを刷新し、2030年までの目標として▽CO2実質排出量25%削減(2019年比)▽持続可能な航空燃料「SAF」を全体の10%混合③燃料効率の年平均1.5%改善④2027年までに使い捨てプラスチックごみゼロ⑤一般廃棄物の埋め立てゼロ――といった行動指標を定めたことが紹介された。

犬飼氏によると、柱となるのはオペレーションと機材の改善で、AI技術の開発により、燃料効率が最善となるルートを毎回のフライトごとに算出。また通常のフライトでは一回当たり約34キログラムのごみが出るところを、たい肥化が可能なサトウキビや作物でんぷんから作られたカトラリーなどを活用し、2019年には業界で初めて、シドニー~アデレード間でごみを出さない商業飛行を実現している。

もう一つの柱はSAFで、2020年にはメルボルン~ロサンゼルス間で、バイオ燃料を10%配合してのフライトに成功。1.8トンのCO2排出を削減した。さらに同社では2022年3月、INPEX、オーストラリア・ニュージーランド銀行と協業し、ユーカリを栽培し、バイオ燃料としての利用につなげる事業への参入も決めている。

犬飼氏は、「もはやカンタス航空が1社でやれることなどない。未来のために、いろんな会社と連携しないといけない。今までに誰もやっていないアイデア、突拍子もないアイデアが欲しい」と高校生に投げかけた。ワークのテーマは「選ばれる航空会社になるために必要なこととは?」で、高校生たちからは「機内食の量をプランごとに分けてフードロスを減らす」「機内アナウンスに声優を起用」「機内モニターを一部座席で外すことで重量を下げ、燃料効率を高める」などのアイデアが出ていた。

製品の製造〜廃棄までのサイクルでどう社会課題に貢献するか

「気候変動」をテーマに行われた積水化学工業の講演

テーマ③は「気候変動」。積水化学工業の三浦仁美・ESG経営推進部担当部長はまず、同社の蓋つきプラスチックごみ箱「ポリベール」を紹介。従来製品より軽く、1人で持ち上げることが容易なためごみ収集システム全体の効率化につながり、CO2排出量を削減できる、「使われることで貢献する」製品だという。

またソーラーパネルで再生可能エネルギーを発電できる工業化住宅「おひさまハイム」の例では、生産プロセスである工場においても、プレカット品の納入や廃棄物の分別回収を通して廃棄物削減とリサイクルを実現していることが示された。こうした事例により、高校生たちは「製品の製造~廃棄までのサイクルで、どう社会課題に貢献するか」という視点を学んでいく。

続いて同社ESG経営推進部の野澤育子氏の案内のもと、高校生たちはグループワークショップに臨み、住宅、自動車、学校の3つを題材に、具体的に「原料調達段階」「製造・施工段階」「販売・輸送段階」「使用・消費段階」「使用後・廃棄段階」の5段階にライフサイクルを分け、気候変動の課題に貢献する方法を考えた。さらには同じ題材について気候変動以外の多くの社会課題に貢献するアイデアも書き込む。

最後は、題材となる製品を高校生たちが自由に定め、ライフサイクルごとに、「気候変動とその他の課題」の複数の課題を同時に解決する方法を考えた。議論の末、「空き家を活用し、地域人材で運営し、地産地消の食品を使った子ども食堂」「放置森林から原料調達した竹製品で、『竹ホテル』をつくる」など意欲的なアイデアが挙がった。

貨物鉄道に顔を付け、先頭車両をカフェにする⁉︎

日本貨物鉄道の石井氏は「社会インフラを支える物流」をテーマに

テーマ④は日本貨物鉄道の石井智・経営統括本部経営企画部グループリーダーが登壇した「社会インフラを支える物流」。

「JR貨物グループの長期ビジョン2030」として同社が掲げる4目標の1つ目が「物流生産性の向上」。貨物の多様化にも対応すべく生まれた、東京貨物ターミナル駅(東京・品川)内のマルチテナント物流施設「東京レールゲート」がその例だ。また、クライアント企業ごとに列車を貸し切るブロックトレインによる迅速化や、逆に複数のクライアントの共同輸送によるコスト低減なども挙げられた。

2つ目は「安全安心な物流サービス」。新型車両の導入や線路改善、運転手サポートシステムの開発などに加え、災害時に一部区間が寸断された場合にトラックや船舶など代行輸送網を構築する「BCP対応」も該当する。3つ目が「グリーン社会の実現」。従来はトラックで輸送していた区間も、長距離区間を鉄道で輸送し、その前後をトラックにより輸送するモーダルシフトが進行すれば、環境負荷を下げながら労働負荷も改善できる。現在ではさらにバイオディーゼル燃料の導入も進めている。

そして4つ目は「地域の活性化」。同社では東日本大震災時に石油や生活物資を緊急輸送するなどして地域を支えるほか、平時も地域イベント支援や、貨物駅用地を商業施設などに転用する不動産事業、さらには水耕栽培で野菜を育てる植物工業事業といった新規事業も手掛けている。

この「地域の活性化」はワークのテーマともなり、高校生たちは「どうすれば貨物鉄道を使って社会貢献できるか」のアイデアを出し合った。「貨物鉄道のコンテナがそのまま『動く道の駅』となり、各地の特産品を販売して回る」「貨物鉄道に顔を付け、先頭車両をカフェにすることで認知度を高める『トーマス計画』」などユニークな案が多数生まれたようだ。

最後に再び280人の高校生が全体に集合。各テーマ内で出されたアイデアのうち、優れたアイデア1つずつが選ばれ、代表発表を行った。見守った勝見氏は総評として、「代表になったチームもそれ以外も、手応えがあるはず。考えて話し合って、アウトプットするという経験がとても大切。今日皆さんが得た仲間とチャレンジを大事にしてください」と激励を送り、大会を締めくくった。

東日本大会で高校生と談笑するメンターの立命館アジア太平洋大学2年、オクラン彩里亜アバ氏(右から2人目)

今年のSA大会ではサステナブル・ブランド ジャパンのユースコミュニティ「nest」の大学生メンバーが企業と高校生をつなぐメンターとして加わり、同じZ世代として社会課題の本質を学び、解決策に向けたアプローチを高校生たちと共に考えた。各会場では初めて会ったメンターと高校生が一つの課題を通して心を通わせる場面が多々見られた。

会場で引率した教員は「生徒たちにとって、こうして企業と密接に関わって物事を一緒に考えられる場は貴重」、高校生は「今日初めて会った高校生とも、真剣にアイデアを話し合う中ですごく打ち解けられた。それが何よりの収穫でした」と話していた。

東日本大会に参加した高校生の感想の一部 =アンケートより=

これからは何かに挑戦する機会があれば、必ず行動しようと思います。ほかのことがやりたかったり、やっている途中だとしても、どうにかして関わっていきたい、そうでなければ勿体無いと強く感じることができました (郁文館高校2年)

物流の貨物列車についてのメリットを知ることができた。 常に学ぶ時はwhyを突き詰めて知識を身につけようと思う(同)

制服やその形を改良することももちろん大切。だけど、制服の必要性や今後どうなっていくのかを考えることがこれからをつくる私たちにとってとても大切なこと、という話がとても心に残りました(法政大学高等学校3年)

●西日本大会 =11月13日、関西大学千里山キャンパスにて開催、26校200人参加=

(内容は東日本大会とプログラムがほぼ同様のため割愛させていただきます)

西日本大会に参加した高校生の感想の一部 =アンケートより=

自分にもできるかも!と思うようになれたのが嬉しかった。人見知りの自分がたくさん発言できたのがとてもいいものを得られたと思いました。いつも発言しようと思ってもなかなか発言することができなかったので、自信になりました(育英西高校1年)

自分達が生み出したものは自分達で処理、リサイクルし、資源として利用するという良い循環が作れるのではないかという気付きがあった(関西大学高等部1年)

今回のような取り組みを行うことで、コミュニケーション能力、プレゼン力が発達すると思います。それを生かした社会貢献ができるような人材が今後増えていくことに期待したいです(関西大学北陽高等学校1年)

社会問題やSDGsに関心のある多くの高校生と出会い、対話したかったから参加しました。一村一品マーケットの講演が印象に残っています(奈良女子大学附属中等教育学校1年)

サステナブル・ブランド国際会議2023東京・丸の内の「第3回SB Student Ambassador全国大会」には、今回の9ブロック大会に参加した高校生の中から、論文選考によって15校約60人が招待される。

本年度行われた「サステナブル・ブランド国際会議 学生招待プログラム 第3回 SB Student Ambassador ブロック大会」の詳細はこちら

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