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コミュニティ・ニュース

地域の社会課題解決へ学校の枠超え高校生が議論 ――第3回SB Student Ambassador ② 東海・九州ブロック大会

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SB Student Ambassador

サステナブル・ブランド ジャパン編集局

同じ地域の高校生同士が一堂に会する機会。緊張しながらも生き生きと発表する姿が目立った(10月23日、福岡大学七隈キャンパスで開かれた「SA九州大会」より)

サステナブル・ブランド ジャパンと日本旅行の共催による「第3回SB Student Ambassador(SA)ブロック大会」。来年2月14・15日に開かれる「SB国際会議2023東京・丸の内」への出場権を懸けて論文を作成するための事前学習となる場だ。同じ地域の高校生同士、学校の枠を超えて地元企業や自治体の取り組みを学び、地域の課題について真剣に考え、アイデアを出し合った1日の様子を、四国・北陸・東北に続き、東海と九州の2大会から紹介する。

基調講演「『私はできる』と思って」 エシカル就活発案の24歳CEOが提言

東海・九州大会の基調講演を行ったのは、Allesgood(アレスグッド)のCEO、勝見仁泰氏だ。同社は、就活生が、自分の取り組んでいる社会課題にアプローチしている企業とマッチングできるシステムを提供している。この「エシカル就活」を発案したのは、勝見氏自身が学生時代、東南アジアで目にした貧困問題を原点に、ドイツでの起業経験を経て、日本企業への就職を志したものの、業種や業界を決める段階で、「そんなのどうでもよかった。興味があったのはどんな社会問題に貢献できるかということだけだった」からだという。

このSA全国大会中に24歳の誕生日を迎えるという勝見氏は、10代のころ、自身に野球の道ばかりを勧める周囲の大人に違和感を感じていた。その体験を踏まえ、会場の高校生に「大人の言うことを疑って、自分の頭で考えて」とアドバイス。そして、「自分は世界を変えられると思いますか?多くの人が『やめた方がいい』と言ったとしても、『私はできる』と思ってほしい。コンフォートゾーンから出ること。行動するために考えるのでなく、考えるために行動して」と訴えた。高校生たちは年齢も近い勝見氏の講演に聞き入り、質問を求める手も多く挙がった。

●東海大会 =10月10日、名古屋大学東山キャンパスにて開催、24校150人参加=

東海大会は10月10日に名古屋大学東山キャンパスで開催され、24校150人が参加。オープニングでは、ホテルや地域食材を活かした飲食店が並ぶ複合商業施設VISON(三重県多気町)の今原佐織氏が、同社は地元林業を支援していて木造建築であることや、自動販売機を設置しておらず、マイボトルに入れてもらうよう給水ポイントを設けていることなどを紹介した。

テレビは古いメディア。悩みながら取り組んでいきたい

東海テレビの伏原氏による講演

地元企業からは、「持続可能社会とテレビ ~地域の課題を知って、考えて、伝える~」と題して、東海テレビ(名古屋市)報道局統括の伏原健之氏が登壇。東海テレビは1960年から公害問題や性的マイノリティをテーマにしたドキュメンタリーに積極的に取り組み、地域の課題解決の手助けをしてきたという自負がある一方、メディアとしてのテレビ放送には、インターネットの普及や陳腐化した内容により「終わコン」「マスゴミ」と言われてしまう現状があることを報告した。

さらに伏原氏はCMの多くは多量生産・多様消費を促すような内容でSDGsには逆行することを指摘し、「見るメディアが変わっても情報が知りたいということは変わらない。矛盾を抱えているが、悩みながら地域の人と一緒に社会をより良くしたい」と締めくくった。

これに対して高校生はテレビを見ない理由を「CMが多い」「興味のある番組がない」などと率直に話し、テレビの良さとしては「自分の知らないものを知ることができる」「災害やコロナウイルス感染症の情報では信用できる」ことを挙げた。

テレビを通してSDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」と16「平和と公正をすべての人に」を実現するための取り組みについては、「地域に誇りが持てるよう、地域課題を高校生が考えて番組をつくる」「政治について分かりやすく解説し、ツイッターを利用してリアルタイムで質問に答える」など具体的なアイデアが出た。また災害などでは特に外国人への配慮が必要なことを指摘し英語の字幕で伝えることや、コミカルな番組の演出で当事者を傷つけていないか注意が必要、などの意見が出た。

クラウドとSDGs――FIXERが提唱する脱炭素

「クラウドとは何か?」を説明するFIXER(東京・港)のメンバー

Microsoft Azureのサービスをいち早く提供してきたFIXER(東京・港)からは、坂口孝志氏、塩澤彩乃氏らが登壇し、「クラウドとは何か?」ということから説明した。それによると、これまで多くの企業が社内のサーバーでデータを管理していたが、インターネット経由でデータをやり取りする(クラウド化)ことで、メンテナンス費用などのコスト削減や設置場所を気にしなくてよいといったメリットがある。またクラウドに移行することで、電力消費が抑えられ、CO2削減効果があるという。

クラウドを活用したSDGs目標としては4「質の高い教育をみんなに」と13「気候変動に具体的な対策を」が挙がり、高校生からは「教科書が重いのでデジタル化したらどうか」「趣味について周囲から性別や年齢で判断され辛い思いをしたことがあるが、クラウドで仲間づくりができる」といった、やや専門的な内容を自分事に引き付けて考える意見や、「クラウド化で使用しなかった電力を電量の足りない国や地域に回してはどうか」「メタバース上で授業をすれば対人関係が苦手な人でも気軽に受けられる」といったアイデアが多数出た。

住まいとSDGsーYKK APが問題提起する「環境」と「経済合理性」の両立

YKK APの三浦氏

「窓」をはじめとした建築用プロダクツを製造・販売しているYKK AP(東京・千代田)からは「環境問題」と「経済合理性」の両立をテーマに、「『窓』から考えるサステナビリティ」が提示された。同社サステナビリティ推進部の三浦俊介部長は、環境に配慮するためには今まで以上にコストがかかるし、環境のために自分に我慢を強いることは果たしてサステナブルなのか、と問題提起する。

建物の断熱材使用が進んでおらず窓枠にアルミが使用されている日本では、窓からの暑さ・寒さの影響が大きく、窓辺で冷やされた空気が冷たい風となって室内全体を冷やしてしまう「コールドドラフト」現象が起きやすい。一方、ドイツなどの欧州では樹脂の窓枠が主流であり、英国では室温18℃以下の場合は人権侵害に当たるとされ、改善が法律によって義務付けられていることを紹介した。住宅問題で健康被害が出るリスクはそれだけ大きい。

住まいを通じたSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」と13「気候変動に具体的な対策を」への取り組みについて、高校生からは夏の直射日光を遮るグリーンカーテンを作ることや、冬にはカーテンを二重にするなど、身近なところから変えていく方法が提案された。また住宅建築で多く使用されるコンクリートを二酸化炭素が吸収できるものにしたり、住宅会社がもっと断熱の必要性を説明することや、国の制度で補助金を出すといった意見も上がった。

東海大会に参加した高校生の感想の一部 =アンケートより=

世の中でSDGsがなかなか達成されない第一の原因として、私はSDGsを知っていても理解している人が少ないからだと考えています。なので、このような理解を深めるイベントをより広く実施して欲しいです(中京大学附属中京高等学校1年)

窓のことについて知れた。大人でも知らないことだったと思う。身の回りに注目していないだけでこのようなものが隠れているんだと実感した(青山高等学校2年)

勝見さんがおっしゃっていた、私ならできると思ってくださいという言葉がとても印象に残りました。 これからどんなことにも頑張ろうという気持ちになれました。 また今までよく理解していなかったクラウドという言葉についても深く理解できました。これからは技術系の問題にも目を向けることができそうです(名古屋大学教育学部附属高校2年)

●九州大会 =10月23日、福岡大学七隈キャンパスにて開催、16校160人参加=

九州大会は10月23日、福岡大学七隈キャンパスで開かれ、16校160人が参加。冒頭、福岡大学の朔啓二郎学長から「SDGsへの取り組みは個人と組織が得意分野を生かして協力することが必要。次世代のリーダーに、社会が求めるものに結びつけてサステナビリティを目指すための知見を深めてもらう機会としてほしい」とエールが送られた。

オープニングではアパレル商社の豊島と日本旅行が進める「地域とつながる修学旅行-八重山ビーチクリーンの取組-」が紹介され、オンラインで沖縄県石垣島の海岸で修学旅行生が地域住民や観光客と一緒になってごみ拾いをしている様子が映し出された。集めたごみはTシャツや雑貨にリサイクル加工して、観光客にプレゼントしているという。石垣島から登場した豊島の営業企画室SDGs推進支援の中村洋太郎氏は「今日は300キロのゴミを拾った。こうした取り組みは一社だけでは無理で、旅行会社、教育関係者、高校生など多くの人と取り組むことで社会が変わる」と話した。

多様性と共生社会―パラスポーツの視点から考える

浦田理恵氏

続いて、アソウ・ヒューマニーセンター(福岡市)から、東京2020パラリンピックでパラスポーツ・ゴールボールの選手として銅メダルを獲得した浦田理恵氏が「一歩踏み出す勇気~自分が変われば世界が変わる~」と題して登壇した。

浦田氏は教師を目指していた20歳の頃に網膜色素変性症と診断されて失明し、絶望に陥った。そんな時、ゴールボールという競技に出合ったことで周囲への感謝の気持ちが生まれ、人生をポジティブに考えられるようになったという。「ゴールボールは強い人だから勝てるわけではない。パスのやり取りには鈴の音や声掛けなどひとつ一つの仲間とのコミュニケーションが大事」と話す声には張りがあり、とても明るい。

「いつかみんなにやってくるのが老化、そして死だ。だからこそ、体の機能にハンデがある人が生きやすく、安心して住むことができるためにはどういった環境が必要なのか、地域や地球に対して自分は何ができるかを考えてほしい」というのが浦田氏の願いだ。

テーマに掲げられたSDGs目標は、3「すべての人に健康と福祉を」10「人や国の不平等をなくそう」11「住み続けられるまちづくりを」の3つ。これらを解決するため、高校生からは「体育の授業にパラスポーツを組み込む」「パラスポーツを体験できる施設を増やす」「正しい知識を身に着けて違う意見も受け入れ、相互理解を深めてこそ多様性・共生のある社会を実現しSDGs達成につながる」と一人ひとりの意識を変えることが大事であるとする意見が上がり、浦田氏は「みんなが一緒に考えることがとても大事。日本が変わるきっかけになる」と力強くコメントした。

地域経済の活性化-西日本シティ銀行「街-1(まちわん)カード」で考える

西日本シティ銀行の後藤氏

「地域金融機関ならではのSDGsへの取組み」と題して登壇したのは、西日本シティ銀行(福岡市)の地域振興本部地方創生チーム副調査役の後藤純弥氏。同社はオリジナルのSDGs啓発カードゲーム「街-1(まちわん)カード」の開発などを通じて、地域に根差したSDGsやESGに取り組んでいるという。

講演を聞いた高校生はSDGs目標8「働きがいも経済成長も」11「住み続けられるまちづくりを」17「パートナーシップで目標を達成しよう」をテーマに意見を出し合い、「場所」「人」「モノ」を示す街-1カードを使った地域活性化策を考えた。

そこから出てきたのは、「アプリを作ってATMと連動しポイントがたまるようにする。高齢者にはシールにして、レストランのクーポンとして使えるようにし、駅に人が集まるようにする」「孤独死を防ぐためにロボットを活用する」「駅のトイレで出た排泄物を利用して、駅ビルで農業をする」など、「おもしろい街づくり」という言葉がぴったりな高校生ならではのアイデアだ。

ワンヘルス――「人、動物、環境」をひとつに健全性目指す福岡県

福岡県保健医療介護総務課ワンヘルス総合推進室の江島氏

一方、福岡県からは、令和2年12月に議員提案により全国初の「福岡県ワンヘルス推進基本条例」を制定し、人と動物の健康と環境の健全性をひとつの健康と捉え、一体的に守るワンヘルスを推進していることが報告された。近年では新型コロナウイルス感染症をはじめとする人と動物の双方に感染する人獣共通感染症が流行しており、人の健康を守るだけではパンデミックに備えることは不可能となっている。

同県におけるワンヘルスの取り組みについて、福岡県保健医療介護総務課ワンヘルス総合推進室の江島宏和・室長補佐は「森林破壊や温暖化で生態系が崩れ、虫や動物から病原体に免疫をもっていない人へ感染するリスクが高まっている。環境を守らないと病気が増えていくということだ」と説明。こうした問題に対応するため、「ワンヘルスセンター」や「ワンヘルスの森」といった実践拠点を整備している。次世代につなぐ人と動物の健康及び健全な環境が調和した社会を目指す福岡県のワンヘルスへの取り組みは海外でも注目されているという。

講演を聞いた高校生は、SDGs目標2「飢餓をゼロに」と3「すべての人に健康と福祉を」、13「気候変動に具体的な対策を」をテーマに議論を行い、「福岡県が開催しているワンヘルス高校生チャレンジのCMを作る」「地元高校生が小学生にワンヘルスセンターをガイドするなど成果を上げてサクセスストーリーを作る」「保健所を犬カフェや猫カフェにして正しいペットの飼い方を学び、安易な気持ちでペットを飼わないようにする」などのアイデアが出された。またアジアと欧州の食糧支援の違いを調べたグループもあり、さまざまな視点から考えが寄せられた。

九州大会に参加した高校生の感想の一部 =アンケートより=

パラスポーツについてあまり考えたことがなかったけど、パラスポーツから他のいろいろなことも考えられて面白かった(中村学園女子高校2年)

どんなことをしたら、人が集まってくるのか住みやすくなるのかを考えて、自分視点だけではなくて、違うところに焦点を置いて考えを深めることができました。私たちは阿蘇の魅力プロジェクトをしているので、高校生を集めるためにどうしたらいいのか視点を変えて考えてみたいと思います(千原台高校2年)

他校の同世代の方々とのディスカッション、グループワーク本当に楽しかったし、刺激になりました(福岡雙葉高校1年)

本年度行われた「サステナブル・ブランド国際会議 学生招待プログラム 第3回 SB Student Ambassador ブロック大会」の詳細はこちら

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