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SX時代のサステナビリティ・コミュニケーション最前線:SB2021 Sustainable Marketing Day (2)

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局
籠島氏、後藤氏、大屋氏

コロナ禍で生活者の社会的課題に対する意識が変わり、人権や環境を中心にサステナビリティを巡る世界の潮流も大きく動いている。今や企業は、自社の事業をSDGsの17のゴールに当てはめてSDGsへの貢献をアピールするだけでなく、そこから一歩踏み出して、いかに当事者の視点に立てるかということを大切にしながら、社会の変革につながるアクションを起こすべき時に来ているのではないか――。11月26日に東京・日本橋で開かれたサステナブル・ブランド ジャパンのセミナー「SB2021 Sustainable Marketing Day」では、企業のコミュニケーションの最前線でその新しい基準づくりに向き合う専門家からの問題提起もなされた。(サステナブル・ブランド ジャパン=廣末智子)

パネリスト:
籠島康治氏・電通 CXクリエーティブセンター部長
後藤敏彦氏・特定非営利活動法人 サステナビリティ日本フォーラム 代表理事
ファシリテーター:
大屋洋子氏・電通 PRソリューション局 ソーシャルイノベーション部コミュニケーションディレクター (「電通Team SDGs」SDGsコンサルタント)

経済価値とESG(環境・社会・ガバナンス)への対応を両立する経営に転換する「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」時代のコミュニケーションの在り方をテーマにしたセッションには、2018年に「SDGsコミュニケーションガイド」を発行し新たに改訂版「サステナビリティ・コミュニケーションガイド」(12月22日発行)の制作に携わる「電通Team SDGs」からコピーライターの籠島康治氏と、同ガイドの監修に携わった、サステナビリティ日本フォーラム代表理事の後藤敏彦氏がパネリストとして登壇。ファシリテーターは同チームの大屋洋子氏が務めた。

はじめに大屋氏が電通が2020年10月に実施した意識調査で、生活者の約8割が「地球環境や社会問題は他人事ではない」、また「地球や社会の“持続可能性(将来も問題なく続いていくこと)”について真剣に考える必要がある」と回答。その割合がコロナ禍以前と比べ50%以上増えていること、さらにSDGs関連の報道件数はうなぎ上りで、SDGsという言葉に対する認知度は2021年1月の調査で54.2%であり、特にZ世代では非常に関心が高いことがデータでも実証されていることを紹介した。

企業を取り巻く状況は急速に変化 環境・人権の情報開示の動き広がる

この後、後藤氏がパリ協定とSDGsが採択された2015年から、現在に至る世界のサステナビリティを巡る潮流について解説。日本では2017年に経団連が企業行動憲章の副題にSDGsを据えたことで企業経営者への認知度が高まったのに加え、今年6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂されたことも重なって、気候関連財務情報の開示やシナリオ分析に力を入れる企業が増えていることなどが報告された。

2017年に気候関連の情報開示のあり方を提言したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、そもそも2015年にG20が「気候変動が次の金融恐慌の引き金になりかねない」という懸念から金融業界に要請したのがきっかけであり、日本でも2019年に経産省と環境省、金融庁の支援による「TCFDコンソーシアム」が立ち上げられた。

また人権を巡る国際情勢についても、後藤氏は20世紀後半の猛烈なグローバリゼーションの進展に伴い、多国籍企業による人権侵害が多発したことを背景に、2011年に国連が「ビジネスと人権に関する指導原則」を策定。現在、欧州などでは人権デューデリジェンスを義務化する流れが主流になっていること、日本では昨年10月に指導原則に基づくナショナル・アクション・プラン(NAP)が公表されていることなどを改めて説明した。

「SDGsをやっています」ではなく、企業としていかにブランド価値の向上につなげるか、生き残りをかけた戦略が求められている

これを受けてセッションは、金融機関や投資家の動きも踏まえ、「世界のルールは、環境の問題にも、人権の問題にも企業が取り組みを開示しなければいけない、というところにまできている。いわゆるSDGsをやっています、というだけのコミュニケーションではなく、企業としていかにブランド価値の向上につなげるか、生き残りをかけた戦略が求められている」(大屋氏)とする見方を軸に、「サステナビリティ・コミュニケーションガイド」の中身にも触れながら議論が進んだ。

この中で籠島氏は、海外の事例として、米国ではサステナビリティキャンペーン広告を展開した飲料メーカーがペットボトルによる環境汚染度が高いとして消費者保護法の観点から環境NPOに提訴されたり、オランダの代表的なエネルギー会社に対し、「気候変動は人権侵害である」とみなした地方裁判所がCO2の大幅削減を命じる判決を出した例などを挙げ、「日本にもこうした流れがやがてくるのではないか」と述べた。

オランダでなぜ、気候変動が人権侵害とされるのかについては、後藤氏が「地盤が低いオランダでは海面が上昇すると家が浸かり、財産権が冒される。財産権や生存権はまさに人権であるからだ」と説明。こうした考え方に基づき、今年10月には国連の人権委員会が「環境権は人権だ」とする決議を採択したが、残念ながら日本は棄権した経緯を語った。

そもそもコミュニケーションを行うのが良いのかどうかを考えることが必要

このような流れを踏まえ電通Team SDGsでは、今回、「サステナビリティ・コミュニケーションガイド」の策定に当たって、環境と人権の二つを大きなテーマに掲げている。環境では気候正義やカーボンニュートラル、1.5℃、サーキュラーエコノミー、人権ではジェンダー平等やLGBTQ、障がい、外国人といった課題に注目し、それぞれ当事者の視点から考えることを第一に編集に取り組んだという。

籠島氏は「NPOから提訴された米国の飲料メーカーなどの事例も踏まえ、そもそもそのコミュニケーションを行うことが良いのかどうか、といったところから考えていただければ。そしてコミュニケーションを準備する時にはチーム編成をするところから多様性を担保し、制作や企画段階では有識者やNPOからアイデアをもらうことが大事だ」とアドバイスした。

これを受け大屋氏は、「今、SDGsの17のゴールに当てはめて、何番と何番をやっていますというふうにアピールしている企業が多い。しかし、そこから一歩踏み出してアクションを起こし、それを社会変革へとつなげていくステージに来ている。コミュニケーションもそれに合わせて変えていかなくてはいけない」と強調し、セッションはまとめに入った。

SDGsの根本を理解し、人権と環境への取り組みをビジネス発展の原動力に

籠島氏は、企業が世界を変革するところに向かってアクションを起こしていくべきだとする理由として、SDGsのアジェンダの前文に「Transforming our world (われわれの世界を変革する)」という言葉が書かれていることを紹介。「これまでいろんな人たちが世界を良くしようとさまざまに取り組んできたが、2015年の時点で達成できていなかった。だからこそSDGsという目標を掲げてみんなで取り組んでいるわけで、ここから先はじゃあどうすれば世界を変えていけるのかを考え、アクションにつなげて発信していく企業が増えていくといいなと思う」と力を込めた。

また後藤氏は、「パリ協定とSDGsは一体のもの。SDGsの前文に書いてあることは、17のゴールと169のターゲットは切り離せないものであるということ。その底流をなすものがまさに人権と環境であり、その二つをビジネス発展の原動力にする形で取り組んでいただきたい」と締めくくった。

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