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日本政府はパリ協定に整合した政策をーーNGOや若者らがキャンペーン始動「あと4年、未来を守れるのは今」

温室効果ガスの排出削減が遅れるほど、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるパリ協定の目標達成が難しく、不可能になる――。そうした危機感を抱く環境 NGOや若者グループが10日、「あと4年、未来を守れるのは今」と称するキャンペーンを始めた。菅政権の2050年温室効果ガス排出実質ゼロ方針の下、「地球温暖化対策計画」と「エネルギー基本計画」の改定を進めている日本政府に対し、原発や現在実用化されていない技術に頼ることなく、脱炭素に向けてパリ協定の目標と整合性のとれる内容に見直すことを強く求めるもので、グレタ・トゥーンベリさんをはじめ、若者を中心に世界で急速に広まっている気候変動対策を求める運動と呼応し、日本でも幅広い層の参加を呼び掛けている。(廣末智子)

2020年から毎年7.6%削減が必要
カギは2025年までの4年間

国連環境計画(UNEP)によると、パリ協定の目標を達成するには世界全体の排出量を2030年までに半減させる必要があり、そのためには2020年から毎年7.6%ずつ削減する必要がある。これに遅れるほど達成可能性は低くなり、対策が間に合わず今のままの排出が続いた場合、4年後の2025年から非現実的とも言える毎年15.5%もの削減が必至になるという。もっとも最新の調査では、コロナ禍における2020年の排出量は7%程度となる見通しで、7.6%減であれば、「野心的ではあるが不可能ではない」として、ネットゼロに向けて足並みを揃える各国のエネルギー政策に、この「2030年の野心的目標」を具体的な数値として落とし込むことの必要性を強調している。

キャンペーンは、パリ協定が12日で5周年を迎えるのを前に、すでに現実化している気候危機に歯止めをかけ、「2025年までの4年間に、日本がどのような気候・エネルギー政策を施行するかが喫緊の課題であり、経済、産業構造や暮らしのあり方を抜本的に変えることこそ今、求められている」という共通認識に基づいて、350.org Japanなど22団体が呼び掛け。この日はオンライン上で発足会見が行われ、日々の生活の中で温暖化の影響をまともに受けている人や豪雨などの被災者、福島の原発事故体験者、また小さな子どもの未来を心配する母親や、「Fridays For Future (未来のための金曜日)」運動に参加する若者らが登壇。「あと4年」に込める思いをそれぞれに語った。

海水温高く、魚がほとんど獲れない(漁師)
雪が減り、湖は凍らない(スノーボーダー)

函館市の漁師、岡山潤也さんは「北海道はほかの地域よりも温暖化の影響がはっきりと出る。25年漁師をやっているが、台風が少なく、海水がかき混ぜられることがないので、海水温だけが高い状況が続いている。魚は水温の変化にとても敏感で、サンマも、イカも昆布もほとんど獲れない状況。僕たちの仕事はあと4年もたないかもしれない」と危機感をあらわに。スノーボーダーとして自然環境の変化を日々見ているという小松吾郎さん(POW Japan代表)は、「この5年で雪の量が減り、湖は凍らなくなった。気候危機は一目瞭然でデータを見る必要がないほどだ」と、深刻さが定着している様子とともに、長野県白馬村では昨年12月、日本の山岳エリアとして初めて気候非常事態宣言を出し、スキー場では再エネを導入するなど、新しい動きが出ていることも報告した。

災害時は弱い人がさらに弱い立場に(西日本豪雨被災者)
日本のエネルギー政策は変わっていない(福島原発事故体験者)

2018年の西日本豪雨の被害を受け、「たった100円使うのにも迷う時期が数カ月続いた」という岡山県倉敷市の片岡奈津子さん(特定非営利活動法人そーる理事長)は、「新生児や障がい者、高齢者には行く場所がなかった。支援は避難所に集中し、在宅や自主避難している人には全く支援が届かない。もともと弱い立場の人の脆弱性が明確になった」と災害で痛感した問題を提起。同じような災害は「どこにいても起こるし、真備町がまた被災するかもしれない」と不安を口にした。

福島県福島市出身で、原発事故を体験した宍戸慈(ししど・ちか=北海道子育て世代会議)さんは、「原発事故は、海を汚し、大地を汚し、人と人との関係性を分断していった」と、被災から10年が経っても住み慣れた場所に戻れない、また戻りたくない人がいる福島の現実を強調。移住した先の北海道でも今年、近隣の町が、いわゆる「核のごみ」の最終処分場の選定に向け、文献調査の応募を決めた事実を報告すると同時に、「広島、長崎を体験し、福島の事故まで体験した私たち日本人が先陣を切って核を手放し、原子力を卒業して持続可能な代替エネルギーに転換していく役割がある。3.11から10年経っても変わらない日本の原子力政策を見直し、より民主的な手段で対話し、選択し続けていかねばならない」という決意を語った。

本質的な原因取り除くのは企業の社会的責任(企業関係者)
大学を卒業してからでは遅い、気候正義の考え方大切(Z世代)

また企業の社会的責任という文脈では、元パタゴニア日本支社長の辻井隆行さんが、「世界で起きている環境問題の本質的な原因を取り除くのは企業の責任だ。最近は企業の中にもSDGsに真剣に向き合う動きがあるが、本業で出してしまっているネガティブなインパクトをできる限りゼロに近づけることが重要。例えば、本業で森林伐採をしているのに、里山に植林をしているとか、本業で出すCO2はそのままなのに環境を守ることで排出量削減に貢献しているというようなことは通用しない」と指摘。エネルギー需給率が著しく低い日本では、「小さな自治体や企業でも手に負えるような自然エネルギーに移行することが国益にもつながり、最終的には企業の利益にもつながる。出遅れるとそれだけノウハウもたまらない」などと話し、企業の早急な取り組みを促した。

一方、Z世代を代表する形で登壇した、環境活動家の露木志奈さんは、COP24、COP25にも参加した経験から、「大学を卒業してからでは遅いと感じた。気候は待ってくれない。(環境活動を)全力でやると決めて学校を休んだ」と、現在、慶應義塾大学を休学して全国の中高生らに、一人ひとりが日々の行動を通じて環境を守っていくことの大切さを訴える活動を行っている最中であることを紹介。「地球という場所に生まれてきたばかりの若い人たちが、大人たちが出してきたCO2によって今後のことを心配しなければいけないのはおかしいことだと思う」と話した。また同じZ世代で、Fridays For Future Fukuokaの代表として活動する九州大学大学院の阪口真生志さんは、「大事なのは、クライメート・ジャスティス(気候正義)という考え方。先進国が今までたくさんのCO2を出してきたために、CO2をあまり出していない生活をしている途上国や先住民の人たち、また今の若者や次世代の人たちを苦しめてしまっている。問題を解決するために今変わらないと、いつ変わるのか。CO2排出大国の一つである日本にとって、今回のエネルギー計画の見直しはいいチャンスだ」などと語った。

キャンペーンには10日時点で市民活動などを行う67団体が賛同。今後はさらに参加型アクションなども行っていく考えで、ホームページ上では署名のほか、学校やサークル、PTAなどさまざまな団体の賛同を募っている。

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廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。