書評:マッキンゼー出身者がNPOで見つけた「働く意義」
『働く意義の見つけ方』 (小沼大地、ダイヤモンド社)
『働く意義の見つけ方』(ダイヤモンド社)
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民間企業の社員らが途上国で社会課題に取り組む「留職」プログラム。元マッキンゼー社員で、NPO法人クロスフィールズ(東京・品川)の小沼大地代表が2011年に立ち上げ、今日までさまざまな活動を展開している。小沼代表は自らの著書『働く意義の見つけ方』(ダイヤモンド社)のなかで、目の前にある仕事に「社会とのつながり」を感じることで、仕事の情熱が湧きあがり、仕事が「志事」に変わっていくと説き起こす。(オルタナ編集部=吉田広子)
小沼代表は大学卒業後、海外青年協力隊として2年間、シリアに派遣された。経営コンサルティング会社から出向していたドイツ人コンサルタントとともに、環境教育のプログラムを立ち上げた。そこで、社会貢献とビジネスがつながることで、働く意義を実感でき、新しい価値が生み出されることを肌で感じたという。
帰国後、企業で働く同級生に再会し、自身の経験や思いをぶつけた。だが、返ってきた言葉は「相変わらず熱いなぁ。そろそろ大人になれよ」。彼らから、あふれていた情熱や目の輝きが失われていることにショックを受けた。
なぜ、「働く意義」が失われてしまうのか。情熱は、企業にとっても事業を推進していくうえで重要なパワーになる。その具体的な解決策の一つが、クロスフィールズが運営する「留職」プログラムだ。民間企業の社員が途上国で社会課題に取り組む「民間企業版の海外青年協力隊」だ。
小沼代表は、「社会とのつながり」を取り戻すことで、仕事が「志事」に変わっていくと説いている。「志事」とは、「自分」「仕事」「社会」という3つの結び付きを、働く人がしっかりと意識できている状態での働き方だ。
小沼代表は青臭さと腹黒さを合わせた「青黒さ」をもって、事業を加速させてきた。なぜマッキンゼーに入社し、退職したのか。そこで得た経験をNPOの設立にどう生かしたのか。本書『働く意義の見つけ方』では、立ち上げ時の苦労や葛藤、大手企業が初めて「留職」の導入を決めた瞬間、実際に派遣された社員のエピソードなど、臨場感をもって描かれている。