生物多様性
生物多様性とは、生きものたちの豊かな個性とつながりのこと。その中には、「生態系の多様性」、「種の多様性」、「遺伝子の多様性」という3つのレベルの多様性があると定義される。「生物多様性」という言葉だけ聞くと、なんとなく「たくさんの生きものが生息していること」と思いがちだが、これは「種の多様性」のみのイメージだ。多様な種を取り巻く多様な環境や、種の中の遺伝子の多様性も含めて大きく捉えることが必要とされる。
生きものの多様性だけではなく、植物や気候や多彩な環境、個体の個性も「生物多様性」という概念に含まれる
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「生態系の多様性」は地球環境の多様性とも言い換えられる。山岳や平地、森林、河川、サンゴ礁など、様々な地形と気候や植物、生物によって形成される、環境そのものの多様性だ。砂漠化の進行やサンゴ礁の消失などは、生態系の多様性を損なっている例としてイメージしやすい。
「種の多様性」は、動物、植物、微生物なども含めた生きものの多様性のことだ。絶滅危惧種を保護する活動などは、直接的には種の多様性を保持する活動にあたる。「遺伝子の多様性」は、例えば同じ種類のテントウムシでも様々な模様の個体が見られるというような、種の中の個性の多様性である。
様々な環境の中で、多くの生きものが食物連鎖や共生の関係を保ち、バランスを取りながら地球を形づくっている。そこには当然、私たち人間も含まれている。生物多様性が保全されるということは、人間社会の存続可能性を高めるだけでなく、地球そのものが持続可能になるということだ。
生物多様性に配慮することは、企業にとっても有益だ。サプライチェーンの最上流まで遡って持続可能な調達をし、環境や生態系を守ることで、ステークホルダーの信頼を得るだけでなく、永続的に安定した企業活動を行うことを目指す大企業も多い。「生物多様性」の概念のように、遺伝子というミクロから生態系というマクロまで大きく広い視野を持つことは、企業経営や人の社会においても必要とされるものだろう。
国内で「生物多様性」という言葉が注目されたのは、2010年の「生物多様性に関する条約第10回締約国会議(CBD/COP10)」がきっかけだ。同会議は、生物多様性の保全や、その構成要素の持続可能な利用、遺伝資源の利用に関して公平な利益配分などを目的に、名古屋で開催された。この時、遺伝資源へのアクセスと利益配分に関して名古屋議定書が採択された。また、CBD/COP10の働きかけにより、国連総会は2010年から2020年を「国連生物多様性の10年」として採択している。