グリーンウォッシュに「うっかり」陥らないために――国際NGOが広告コミュニケーション業界向けに規制対応ガイドを公開
Image credit:Pavel Danilyuk
|
世界各国でグリーンウォッシュ規制が加速している。多くの企業が対応に追われる中、気候変動対策に取り組む広告・PR関係者のネットワークNGOが、対応ガイドを公開した。最新の法令の要旨に加え、誤解を招く表現や根拠のない訴求に陥らないための具体的な指針を示す。(翻訳・編集=茂木澄花)
国際NGO、クリエイティブズ・フォー・クライメート(Creatives for Climate)が「代理店リーダーのためのグリーンウォッシュ防止ガイド(The Anti-Greenwash Guide for Agency Leaders)」を無料で公開している。こうしたガイドの発行は初めてで、次々に改正されるグリーンウォッシュ規制に対応できるよう、広告代理店を支援する狙いがある。ガイドは、同NGOが6月にアムステルダムで開催した第1回「エシカル・エージェンシー・サミット」で発表された。
ガイド発表の直前には、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、報道機関やテック企業に対し、化石燃料の広告から収益を得ることで「地球の破壊(planetary destruction)」に加担するのをやめるよう呼び掛けている。またスコットランドのエディンバラ市議会は、世界で初めて化石燃料をはじめとしたCO2排出量の多い製品の広告を禁止した。そうした中で発表された「グリーンウォッシュ防止ガイド」には、次のような内容が掲載されている。
「グリーンウォッシュ防止ガイド」の要旨
Image credit: Creatives for Climate
|
・うっかりグリーンウォッシュに加担しないためのヒント(「グリーンウォッシュを防止する方法」のチェックリストなど)
・コミュニケーションキャンペーンにおいて、誤解を招く、根拠のないサステナビリティ関連訴求に陥らないための指針
・世界的な企業のマーケティングキャンペーンにおける、さまざまなグリーンウォッシュの事例(HSBC、KLM、オートリ―、プライマーク、ユニリーバなど。解決済みの事例も、現在進行中の事例も含む)
・前向きな変化を大規模に推進する手法の例
・豪州、シンガポール、欧州、米国、英国における最新の規制枠組みのリストと要旨
「グリーンウォッシュを防止する方法」のチェックリストは、「すべきこと」8項目と「してはいけないこと」7項目で構成されており、非常に簡潔だ。チェック項目に対応する実際の事例も掲載されている。以下にリストの一部を抜粋する。
グリーンウォッシュ防止のチェックリスト(抄訳)
【すべきこと】
☑ まず主張ではなく、事実を伝える
☑ サステナビリティ訴求は必ず……
・誠実かつ正確に
・分かりやすく明瞭に
・最新の事実と科学的根拠で裏付ける
☑ 曖昧な用語や美化するような言葉を避ける(「環境に良い」「地球に優しい」など)
【してはいけないこと】
☒ サステナビリティ訴求の邪魔になる重要な情報を省いたり隠したりする
☒ カーボンクレジットでオフセットしたことを「クライメート・ニュートラル」や「カーボン・ニュートラル」と呼ぶ
☒ 製品の一部にしか該当しない特徴によって、製品自体の品質を誇張する(「ナチュラル」「オーガニック」「リサイクル」「リサイクル可能」「生分解性」など)
ガイド関係者は語る――「規制遵守が最終目標ではない」
「規制改正が加速しており、多くの代理店が、短期間で変わる法令への対応に苦労しています。しかし、気候危機の本質を反映した影響力のあるキャンペーンを目指すのであれば、規則に抵触しないことは最低条件であり、それを最終目標にすべきではありません」。Creatives for Climateの創設者でCEOのルーシー・フォン・スターマー氏はこう述べる。同NGOは、クリエイターがグリーンウォッシュに加担しないための情報源として「グリーンウォッシュ・ウォッチ」という研修プログラムや「グリーンウォッシュ・スウォッチ(見本帳)」という事例共有ツールも提供している。
「グリーンウォッシュを排除し、代理店を守ることに対する意識を高めるために、本ガイドを作成しました。業界の進路を正しい方向に向けるような、大きな変革を起こしたいと考えています」
グリーンウォッシュに対抗する法的措置や規制措置は、この2年で急増しており、グリーンウォッシュに関する訴訟は2024年も増え続けると見込まれる。同ガイドは、施行済み、導入見込みの法律について、キーワードを分かりやすく説明する。また、どういった訴求が違法で、さらなる証拠が求められるのかも示している。
「グリーンウォッシュ防止ガイドは、環境に関するメッセージを伝えるという難しい仕事に指針を与えてくれる便利なリソースです。きちんと対応しない場合のリスクは計り知れません」。こう述べるのは、クリエイティブ・エージェンシーのワイデン+ケネディでサステナビリティ担当ディレクターを務めるルーク・パーディー氏だ。「ワイデン+ケネディを含む業界全体が及ぼす影響の範囲と可能性は、途方もなく大きいものです。だからこそ、自分たちが振るう影響力にできる限り責任を持つことが重要です。私たちが何を、どのように伝えるかによって物事が変わるのですから」
非営利の環境法律団体クライアントアースの弁護士で、同ガイドの作成にあたってアドバイザーを務めたジョナサン・ホワイト氏はこう述べる。「企画したキャンペーンが反グリーンウォッシュ法令に違反した場合、代理店は苦境に立たされるでしょう。最近の世界的企業に対する法的措置からも明らかです。司法による監視が強化されている現状において、最新の規制を遵守することは最低限の対応に過ぎません。意識的で正確なメッセージを伝え、事実を完全かつ率直に扱うことが、成功への道なのです」