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EUが規制強化案を決議、グリーンウォッシュ時代が終焉へ 企業はマーケティングをレベルアップできるか

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Tom Idle

企業・ブランドがグリーンウォッシュを行うことは公的にも、法律上もますます難しくなってきている。欧州議会は5月11日、明確な根拠を示すことなく「カーボンニュートラル」「環境にやさしい」などと謳い、購入する商品が環境に良いものだと消費者が信じるように欺く主張をする企業への規制強化案を決議した。提案された、環境に関する主張やラベルを実証・検証することを義務付ける反グリーンウォッシュの規制案は、「消費者と環境の大きな勝利」と称され、賛成544票、反対18票、棄権17票と圧倒的多数の賛成により可決された。

これにより、EUの加盟国は、疑わしい環境関連の主張を禁じる国ごとの法案を採択する道を開いた。ディディエ・レンデルス司法担当委員は「商品の実際の持続可能性を消費者に誤解させる慣習を禁じることで、グリーンウォッシュとの戦いを強化する」と指摘する。(翻訳・編集=小松はるか)

企業・ブランドは、証拠による裏付けがない場合、「環境に優しい」「自然の」「生分解性」「エコ」といったグリーン・マーケティングの主張を実質的に禁じられる。さらに、製品やサービスの一部しか持続可能でない場合、製品・サービスの全体を指して持続可能だと表示することもできなくなる。また、製品情報に使われるサステナビリティ認証ラベルについても、公式のサステナブル認証制度に基づくものか、公的機関が定めたラベルしか受け入れられなくなる見込みだ。

加えて、カーボンオフセット制度のみを根拠に、「ネットゼロ」「カーボンニュートラル」といった環境に関する主張を行うことを禁止することも規則に盛り込まれる計画だ。これは、消費者に深刻な誤解を招くとして運動団体から長らく非難され続けてきたことだ。実際に、カーボンオフセット制度をカーボンニュートラルの主張の根拠として使うことを禁じる動きはすでに始まっている。英国では、広告基準協議会(ASA)が状況を評価するのに6カ月の月日を費やし、より厳格な執行手続きに踏みきろうとしているところだ。

カーボンオフセット制度を巡る動きは、カーボンオフセットの真のインパクトに改めて注目が集まっていることとも合致する。1月、英ガーディアン紙は、世界最大のオフセット認証機関の一つヴェラ(Verra)が発行した、熱帯雨林の保全によるカーボンクレジットの90%が「無価値」だと報じた。ヴェラは調査結果に強く抗議しているが、これをきっかけに世界中で、カーボンオフセットの価値のみならずカーボンニュートラルを広く主張することの有効性についても議論がなされるようになった。

英国の投資の現場では、グリーンウォッシュの取り締まりがすでに始まっている。「サステナブル」とみなされている年金基金がいまだに石油・ガス会社の財源として定着している実態を受け、英金融行為規制機構(FCA)が投資ファンドのESGラベリングを見直す反グリーンウォッシュの規則を公表した。

一方、米国では、連邦取引委員会が2012年以降初めて、マーケティング担当者向けの手引書「グリーン・ガイド」の改訂に着手し、企業が製品や使用する素材の持続可能性について誇張できないようにすることを目指している。

消費者は企業・ブランドに透明性がある緻密なコミュニケーションを期待

グリーンウォッシュが完全になくなるまでには間違いなく時間がかかる。しかし、これから始まる規制や改善された基準は、期待通りのインパクトをもたらし始めている。例えば、明確な根拠を示すことなく「持続可能な飛行」「未来を守る」などといった環境に関する主張を行った、エティハド航空やルフトハンザ航空などの航空会社に、広告キャンペーンを停止する指令を出す事例も生まれている。

しかし、ますます抜け目のない消費者に打ち勝ち、野心的なサステナビリティ目標を次々に達成していくという競争のなかで、グリーンウオッシュを回避することは依然として課題だ。野心的なサステナビリティ目標の撤回を余儀なくされた企業でさえも、大きな監視の目にさらされる。例えば、サンダルなどを販売する米クロックスは4月、企業を新たに買収したことでCO2の絶対排出量が前年比で45.5%増加したことから、ネットゼロの達成目標年を2030年から2040年に後ろ倒しする計画を発表し、反発を受けた。新たな目標は「より信頼でき現実的」かもしれないが、消費者は企業・ブランドにもっと透明性が高く緻密なコミュニケーションをとることを期待しているのだ。

そして、それが実際に大きな課題だということも証明されている。世界広告宣伝業連合(WTA)などは、マーケティング部門のサステナビリティの取り組みについて世界調査「サステナブル・マーケティング2030」を行った。調査によると、グリーンウォッシュへの規制が強化されるなかでも、8割のマーケティング担当者は「企業はサステナビリティの取り組みの発信において、より積極的になる必要がある」と回答した。しかし、3分の1はそれを実行するための知識・スキルが不足していると答えている。

また、多くの企業・ブランドが、自社には伝えるに値するサステナビリティのストーリーがあると回答しているにも関わらず、能力ギャップは2021年の20%から35%に増加し、状況は後退している。サステナビリティをマーケティング部門のKPI(重要業績評価指標)と捉える企業が2021年の26%から現在の42%に増えていることを考えると、この傾向は大きな懸念事項だ。調査に協力した英カンターのオズレム・セントゥルク氏は「マーケティング担当者の94%が革新的な変化の促進に積極的に取り組みたいと考えているにもかかわらず、組織が未だににこれまでと同じように振る舞っていることは驚くべきことだ」と語っている。

「主張の裏付け」というプレッシャーが高まる

この調査は、最近公表された英公認マーケティング協会による調査結果とも関連する。半数の企業が「グリーンウォッシュだと揚げ足を取られ、非難される恐れがあるため、サステナビリティのキャンペーンを行うことは気が進まない」と回答した。

多くのサステナビリティ課題と同じく、グリーンウォッシュの問題を解決するのにも協働で取り組んでいくことがメリットをもたらす。まさに、クリエイターや代理店、サステナビリティに取り組む人たち向けに、サステナビリティ・コミュニケーションの新たなスキルを身につける支援を行う国際ネットワーク「クリエイティブズ・フォー・クライメート(Creatives for Climate)」の考えと同じだ。ホームページでは、トレーニングプログラム「グリーンウォッシュ・ウォッチ(Greenwash Watch)」のページを設け、反グリーンウォッシュの規制・決定について役立つ分析を紹介し、消費者に誤解を与えることのない信用できる戦略をつくるためのフレームワークも提供する。

広告の規制機関がより厳しい措置を科し、消費者監視団体もグリーンウォッシュに精通し、政府でさえも取り組みを強化するなか、企業が根拠を示すことなく環境に配慮していると主張する時代は終わりを迎えている。同時に、消費者との接点となるコミュニケーターには、自らの能力を高め、主張の裏付けを必ず行わなければならないというプレッシャーが高まってきている。