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真にインクルーシブな企業文化をどう醸成するかーーリイマジン・ジェンダー リサ・ケニーCEO

JENNIFER ELKS
Jopwell

米国では、男性や女性という既存の性別に当てはまらない性自認を持つ「ノンバイナリー」の人たちがテレビドラマなどで当たり前のように描かれるようになり、広く認知されるようになってきた。性自認が流動的な「ジェンダー・フルイド」など性の多様性を受け入れようとするパラダイム・シフトが社会に起きている。しかし、こうした流れはビジネスに浸透しているだろうか。米国のサステナブル・ブランドが、ダイバーシティやインクルージョン、公平性をテーマに今年5月に開催したオンラインイベント「Just Brands ’21」の基調講演に登壇した、リイマジン・ジェンダー(Reimagine Gender)のリサ・ケニーCEOに話を聞いた。リイマジン・ジェンダーは、ジェンダーについて理解を深める研修やコンサルティングを行う組織だ。(翻訳=梅原洋陽)

リサ・ケニー
リイマジン・ジェンダー CEO。長く企業の重役を務めてきた経験を生かし、フォーチュン500社など多くの企業と連携し、ジェンダーについての理解促進や組織変革を支援してきた。SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)や3%カンファレンス、米サステナブル・ブランド国際会議などで講演を行うほか、『Harvard Business Review』『Fast Company』『Quartz at Work』『Fortune』などのメディアでジェンダーについて記事を執筆する。

――性自認(ジェンダー・アイデンティティ)に対する理解が広がっています。リイマジン・ジェンダーではどのように、またどういうタイミングで企業と連携し、企業の状況を評価し、支援しているのでしょうか。

リサ・ケニーCEO:実際のところ、一般的に企業は早い段階でジェンダーへの取り組みを始めています。最初の問い合わせは人事やDEI(ダイバーシティ、公平性、インクルージョン)部門の責任者の方からが多いです。CMO(最高マーケティング責任者)やイノベーション部門の責任者、CEO、社員が主体となりDEIを推進する「従業員リソースグループ(ERG:Employee Resource Group)」などからの問い合わせもあります。しかし、ジェンダー平等にある程度の時間を費やしてきた企業でさえも、その関心は女性や多様なジェンダーの人たちのニーズなどに留まり、ジェンダーを包括的に理解しようとすることは少ないです。

多くの問題は結局、基本的なことから生じていると思います。ジェンダーについて話をする時、私たちは実際に何について話をしているのかということです。リイマジン・ジェンダーでは、そうした性とジェンダーの違いやジェンダーとセクシャリティの違いについて、さまざまな組織が理解を深めるための支援をしています。ジェンダーとは何か、そして性自認を超え、その他の関連する側面に目を向ける必要があります。私が思うに、ジェンダーとは複雑なものです。しかし混乱する必要はありません。多くの誤解はありますが、一度理解すればジェンダーに対する抵抗はなくなっていくでしょう。

――誰もがジェンダー構造に影響を受けています。どのようなことが一般的な例としてあり、職場にはどのような影響があるのでしょうか。また、男性と女性という性別の二分法(バイナリー)や家父長制が女性にどのような悪影響を及ぼしているかは明らかになっていますが、男性にとっても同様の影響はあるのでしょうか。

リサ・ケニーCEO:ジェンダーは全ての人に影響があります。もちろん異なるかたちで、その度合いもさまざまですが、男性も含まれます。子どもの迎えのために、適切な時間に退社することを快く思われていないと感じている男性もいます。他にも、技術職や営業職の分野では、一般的な男らしさを示さなければならないというプレッシャーを感じている人たちもいます。素晴らしい父親でありながら、新型コロナウイルス感染症の拡大初期に、子どもたちがZoomの画面に映り込むことに抵抗を感じた男性は女性よりも多いです。こしたことから職場で本来の自分自身を発揮できなくなり、それがイノベーションを阻害する可能性もあります。

消費者の視点に立つと、小売業の人たちが注意すべきことがあります。私の友人がある色の靴を購入しようとしたところ、男性の靴売り場にはその色の靴がおいていませんでした。結局、その靴は女性用のサイズしかないことを知り、何も買わずに店を後にしたようです。

リイマジン・ジェンダーでは、全ての人がジェンダーに関する何かしらのストーリーを持っているのだということをよく話します。自分自身のジェンダーストーリーを振り返ることは重要です。(リイマジン・ジェンダーでは、子どもの頃から現在に至るまでの自らのジェンダーストーリーが仕事や私生活の場面でジェンダーについて考える際の指標になっているとし、それを改めて理解することが企業のジェンダーへの取り組みに変化をもたらすという考えから、CEOなどビジネスリーダーに対し自らのジェンダーストーリーに向き合う方法をウェブサイトで紹介している。)

――ジェンダーという概念は変化しています。最近の調査によると、Z世代の半数、ミレニアル世代の56%がジェンダーは流動的なものだと考えているようです。これは企業にとってどのような意味を持つでしょうか。

リサ・ケニーCEO:企業にとって非常に重要なことです。こうした流れは一過性の流行ではありません。そして一部の従業員にだけ関係していることでもありません。若い世代はジェンダーに関して根本的に異なる理解をしています。企業はその点を真剣に考えなければ、才能のある人や顧客を惹きつけ、繋ぎ止めることに苦労するでしょう。人事方針や従業員リソースグループをつくるだけでは十分ではありません。将来的な競争力を考えても、全社的に根本から「ジェンダーについて再考する(reimagine gender)」ことが必要でしょう。

――企業が多様なジェンダーに配慮した方針を採用する時にはどのようなことに気をつけるべきでしょうか。リイマジン・ジェンダーはその過程でパートナー企業とどう連携していますか。

リサ・ケニーCEO:企業はまずジェンダーの課題がどこに、どのようなかたちで現れているかを特定することから始め、少しずつ深掘りすると良いでしょう。例えば、顧客を分類する際、より利益が出る方法があるかもしれないのに性別を基準にしていないか。ジェンダーに関する思い込みや偏見をもとにリサーチを進めていないか。それが真のイノベーションの妨げになっていないか。有望な採用候補者にどのように、そしてどのタイミングでジェンダーに関する質問をするのかなどです。

リイマジン・ジェンダーではワークショップやトレーニングなどを通して、企業がジェンダーについての理解を深め、ビジネスのさまざまな場面で活用できるインクルーシブで包括的な視点を伝えています。良い成功事例というのは確かにありますが、万能な解決策はありません。そのため、私たちはさまざまな企業と連携し、確実に取り組みを進めていけるように支援しています。企業側が一旦腑に落ちると、取り組みの価値はすぐに理解され、そこから一緒により深化した取り組みを始めることができます。

――昨年から続く人種や社会的公平性についての関心の高まりは、企業のLGBTQ+への認識にどのような変化をもたらしていますか。

リサ・ケニーCEO:全体の傾向として、職場や製品をよりインクルーシブにしようとする動きが見られます。企業は、これが正しいというだけでなく、賢い選択だと認識しているようです。こうして公平性に改めて注目が集まることは、企業が自社の取り組みを再評価し、振り返る機会となっています。また、ジェンダーと人種は交差的なアイデンティであり、(それぞれに対する差別や偏見が組み合わさることで新たな抑圧が生じることがあるため、)このことは常に認識しておくべきでしょう。

――米NGOヒューマン・ライツ・キャンペーン財団の 企業平等指標(Corporate Equality Index)によると、LGBTQインクルーシブな方針や取り組みを行う雇用主の数は引き続き増加しているようです。2021年の調査によると、フォーチュン 500の企業の94%はジェンダー・アイデンティティに基づく差別をしないという方針を掲げており、71%はトランスジェンダーの従業員に対する福利厚生を設けていると回答しています。実際の状況はどうでしょうか。企業はただ方針を実施するだけでなく、方針を企業文化にまで落とし込んでいると考えますか。

リサ・ケニーCEO:ジェンダー・インクルージョンに関する取り組みは大きく前進しているものの、まだまだやるべきことがあります。方針を定めることはすべきことのほんの一部です。性自認であれ表現方法であれ、そうした多様なジェンダーの人たちだけが重要なのではありません。先ほどもお伝えしたように、全ての人が社会によって決められたジェンダーという枠の影響をさまざまなかたち、そして異なる度合いで受けています。色や服、趣味、感情や職業などあらゆるものがジェンダー化されることで大きな代償を払い、実際にはメリットがありません。方針だけで変化は起きず、文化的な気づきが必要です。

――2019年にデトロイトで開催したサステナブル・ブランド国際会議で、ビジネスにおけるジェンダーとインクルージョンの状況について講演をしていただきました。あの時からご自身の仕事に変化や成長はありましたか。

リサ・ケニーCEO:本質的には変わりありません。人々のジェンダーに対する理解を深め、その人たちが他の人を助けることができるようになり、それぞれの組織が成長していくことをサポートしています。もちろん具体的な部分では進化しています。

私は以前よりもさらに企業の取り組みの支援に力を入れています。企業は従業員の問題やマーケティングにおける過ちから起きる危機への対応だけでなく、市場機会に意識が向いています。企業は、ジェンダーへの取り組みを深めることで得られる競争力に気づき始めています。