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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

「アウトドアに公平性を」米ノース・フェイス、すべての人が自然を楽しめるよう7億円助成

NITHIN COCA

米アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」はこのほど、世界が困難に直面する中でも必要な進化・発見を行えるよう、探検を通して暮らしや考え、行動をリセットする後押しを行う新プロジェクト「リセット・ノーマル」を開始した。その一環として、人種などさまざまな背景を持つ人々が平等に自然の中を探検できるよう、アウトドアにおける公平性の構築に取り組んでいる団体などに総額700万ドル(約7億3800万円)を助成する「エクスプロア・ファンド・カウンシル(Explore Fund Council)」を設立すると発表した。(翻訳・編集=サステナブル・ブランド ジャパン編集局)

新型コロナウイルス感染症が大流行していた春から夏にかけて、米国では多くの人たちが仕事や勉強から離れ、自然の中を探検した。実際、屋外では新型コロナウイルスに感染しづらいとされていることもあり、公園やキャンプ場など、人が安全に集まることができ、社会的に距離を置くことができる場所は人気が高い。いくつかのレポートによると、今年は例年に比べキャンプ場やハイキングコースの利用者が多かったようだ。いくつかの国立公園では、旅行制限があったにも関わらず2019年よりも多くの人が訪れたという。

しかし、米国では低所得者層、特に有色人種の人々には自然を楽しむ、という選択肢はあまりない。有色人種の人々は、自然の少ない地域に住む割合がそのほかの米国人の3倍高いと言われる。自然へのアクセスの欠如、高額なアウトドア用品、文化の壁など、米国人の多くが自然を楽しむことができていない。

今年7月に発表された「アメリカ進歩センター(CAP)」の報告書『ネイチャー・ギャップ』の執筆者、ジェニー・ローランド・シア氏とシャナ・エドベリ氏はこう話している。「社会的な距離を保たなければいけない今、きれいで新鮮な空気が何よりも求められ、必要とされているにも関わらず、あまりにも多くの人にとって自然は手の届かないところにある」。

ノース・フェイスはこの格差を解消するために、700万ドル規模のグローバル・プロジェクト「エクスプロア・ファンド・カウンシル」を通して、アウトドア分野における公平性の実現を加速させる、と発表した。

米サステナブル・ブランドの取材に対し、ノース・フェイスでソーシャルインパクトのシニアディレクターを務めるエイミー・ロバーツ氏はこう語る。

「2020年、私たちは重大で文化的な転換期を迎えている。ノース・フェイスの影響力とプラットフォーム、ネットワークを活用して、意味ある変化を生み出していく義務がある」

2021年に発足する、最初のエクスプロア・ファンド・カウンシルは、文化に関する探検の機会を促進し、多様なコミュニティの人たちが野外探検の恩恵を得られるようにすることに焦点を当てている。同カウンシルを率いるのは、エミー賞を受賞した俳優であり脚本家、監督、プロデューサー、エンタテインメント業界の新たな声を擁護するために努力を続けてきたレナ・ウェイト氏と、世界的な登山家で冒険写真家であり、2018年のドキュメンタリー映画『フリーソロ』でアカデミー賞を受賞したジミー・チン監督だ。

カウンシルは、文化やエンタテインメント、学術、アウトドア分野で活躍するリーダーたちとともに、より多くの人たちが自然の中を探検できるよう柔軟なソリューションを開発し、アウトドアの公平性を継続的に構築し、すべての人に機会を創出するために、世界規模で700万ドルの寄付を行う。

CAPの報告書が示す通り、自然へのアクセスの格差は非常に大きい。1930年代のレッドライニング(特定警戒地区指定)によって、少数民族は自然から遠く離れた、好ましくない地域に住むことを余儀なくされた。先住民からの土地の盗用、いまだ続く自然資源機関や環境保護活動における雇用や代表者の不足など、多様性と自然に関しては、構造的な問題が存在している。

人種差別も問題だ。今年初め、ニューヨークのセントラルパークで、黒人男性がバードウォッチングしていただけで、白人女性が警察に通報したというニュースを覚えているだろうか。多くの黒人や褐色の米国人は、白人が大多数を占める公園や自然の中にいても安全で快適とは感じていないという事実がある。

この問題を解決するには、献身的な努力が必要だ。そのため、エクスプロア・ファンド・カウンシルは短期的なプログラムではなく、長期的目標を掲げ、将来を見据えた計画を立てている。最初の1年は、専門家を集めて自然を探検する機会を阻む障壁に対処し、有色人種のコミュニティに探検の機会を提供することに力を入れる。これがプログラムの未来をけん引することになる。

ロバーツ氏によると、2021年春には、プログラムの詳細と具体的な内容を発表する計画だ。

ただし、計画を立てることは重要だが、実際に低所得者層のコミュニティの人々に手を差し伸べるとなると別の話だ。ノース・フェイスのプロジェクトのユニークな点は、ティックトックやインスタグラムなどのプラットフォーム上で、世界中の人々がこれまでのノーマルをどうリセットするかを共有するコンテンツをつくることに積極的に取り組んでいる点だ。

「SNSのAPフィルターやGIFを使い、私たちが実現したいのは、人々が自分のチャンネルを使って創造性を解き放ち、コミュニティと共有することで他の人々の運動への参加を促し、探検を通して前進するという希望をすべての人にもたらすことだ」とロバーツ氏は言う。

2020年、私たちは自然にアクセスできるということが信じられないほど価値があることだということを学んだ。場所や人種に関係なく、すべての人が、共有する自然遺産に平等にアクセスできるようにすることは、誰もが共感し支持する目標であり、そうすべき目標と言えるだろう。