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IKEAフード、アニマルウェルフェアを強力に推進――日本含む世界の店舗で2025年までの目標設定

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IKEAの「ベターチキンプログラム」は自然光や新鮮な空気など、鶏の飼育環境も重要な指標になっている

IKEAがフードサービスの分野でアニマルウエルフェア(動物福祉)への取り組みを強めている。「IKEA Foodベター・プログラム」と呼ばれるこの取り組みは、ブロイラー(食用若鶏)製品に関する取り組みからスタートし、今後、豚、肉牛、乳牛、産卵鶏、サーモンに広げていく。ブロイラー製品に対する調達基準を示した「ベターチキンプログラム」は、鶏の生育環境から飼料や抗生物質の使用に関する条件まで基準を明確に規定し、日本を含む世界の店舗で2025年までに基準を達成することを目指している。IKEA本社の持続可能な食に関するリーダーであるプリヤ・モチュパリ氏に、同社のアニマルウェルフェア戦略について聞いた。(環境ライター箕輪弥生)

日本国内に9店舗あるIKEAストアでは、食品部門の売上がIKEA全体の平均の2倍以上と好調だ。IKEA全体でも顧客の約2割が食事目的に来店し、人気のスウェーデン風ミートボールは世界で年間10億個が販売されているほどだ。

家具や雑貨でもサステナブルな素材や製品、販売方法を追及するIKEAだが、フードサービスの分野でも、植物性素材の開発やオーガニック食品の積極的な導入と共に、アニマルウエルフェア(動物福祉)にも明確なゴールを示して推進している。

これはIKEAの P.P.P (ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ)という、人と地球にポジティブな影響を与えようというサステナビリティ戦略に沿っている。目標は食材として調達する動物の数を減らすこと、そして実際に調達する動物は良い環境で育てられたものを選択することだ。

すでに始まっている「ベターチキンプログラム」は、自然光や新鮮な空気の環境の中で、鶏が羽を広げられ、自由に動くことができる十分なスペースや止まり木があるなど、鶏が自然な行動を行える環境を推奨する。さらに成長速度を速めたり、胸肉の収量を高めたりするための遺伝子操作を避ける、森林破壊をもたらさない飼料を与える、抗生物質の恒常的な使用を止めるなどの規定もある。

持続可能な調達スペシャリストのプリヤ・モチュパリ氏

「プログラムを作成する中で、動物が自然な行動をとれることをもっとも重視した」とIKEA本社の持続可能な調達に関するリーダー、プリヤ・モチュパリ氏は言う。さらに、鶏に投与する抗生物質は人間の健康への影響が懸念されるために2025年までに段階的に廃止する。これは「アニマルウェルフェアの推進が動物の免疫力を強化し、病気のリスクを減らせると考えている」(プリヤ氏)からだ。

採卵鶏のケージフリー運動を展開している国際NGO「ザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパン」の上原まほ氏はIKEAのベターチキンプログラムについて、「目標年度が設定されていて、そこへの道筋が明確にされている」と評価する。「日本ではアニマルウェルフェアの取り組みをここまで明らかにしている企業は見当たらない」という。

IKEAのアニマルウェルフェア戦略は、事前に事業全体に関する調査を行い、NGOやサプライヤー、社内や顧客の意見も取り入れて練られた。もちろん、ESG投資に影響を与えるアニマルウェルフェアの指標も考慮している。

「アニマルウェルフェアはIKEAのフード事業にとって最大のリスクであり、かつチャンスでもあることが調査や社内の意見からもわかった」とプリヤ氏は説明する。今後は、「IKEAのサプライチェーンで扱う豚、肉牛、乳牛、産卵鶏、サーモンすべての動物についても、アニマルウェルフェアや環境への影響を考えるサステナブルな農場から調達をしていく」意向だ。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・マーケティングプランナー・NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/