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自分らしく生きるために悩み続けた画家を描いた映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』

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ルイス・ウェインは、19世紀から20世紀にかけて、擬人化された大きな丸い目のコミカルな表情をした猫の絵で人気を博した英国の画家だ。周囲に反対されながら結婚した最愛の妻が世話する子猫のピーターをきっかけに猫を描き始めた。だが唯一の理解者である妻を亡くした悲しみから徐々に心が壊れてしまう。『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』は「美しい世界を見つめて、多くの人と分かち合って」という妻との約束を守るために猫の絵を描き続けた実在の画家の生涯を描いた映画だ。当時の社会規範に閉塞感をもち「自分らしく生きること」に苦しむ画家の姿は、生きづらさを抱えた現代人に重なる。苦しみ抜いたルイスが、最後に見せる清々しい表情に心が明るくなった。(松島香織)

ルイスは唇に傷があることからいじめられ、自然を相手にひとりで遊ぶような少年時代を送り、芸術家や発明家を目指しボクシングを趣味とする夢見がちな若者だった。父親を亡くしてからは家長として母親と5人の妹の面倒をみるため、新聞の挿絵などに動物の絵を描いて何とか生計を立てていた。そしてある日、長女が幼い妹たちのために雇った住込み家庭教師のエミリーと恋に落ちる。二人は物事を要領よくこなすことができない不器用な性格で、すぐに心が通じた。

エミリーは聡明でユーモアのある魅力的な女性だったが、下層階級の出身でありルイスより年上だったことから、家族は二人の結婚を認めなかった。しかし二人は周囲の反対を押しきり結婚する。ルイスは貴族が飼っている犬の肖像画を描いたり、農業ショーを取材したりして幸せに暮らしていた。しかしエミリーは末期の乳がんと宣告されてしまう。

ルイスは妻を慰めるために、いつも彼女の傍にいる黒白猫のピーターを描いた。絵を見たエミリーはルイスの仕事の依頼者でパトロンでもあるイングラム卿に見せるよう提案し、当時女性が入れなかったゴルフ場に男装してルイスとともに会いに行く。子どものようにはしゃぐ、粗末な木の車いすに座った男装のエミリーと、車いすを押して芝生の上を走るルイスの姿は微笑ましく、同時に痛々しく切ない。

ベッドに横たわるエミリーを支えながらルイスは「なぜこんなに地球にいるのが難しいのかわからない。君が世界を美しくしてくれた」と話す。彼は猫の絵で社会的には成功していたが、版権を持っておらず、借金を続け経済的な困窮から脱出することができなかった。当時、上流階級の女性は仕事をせずに結婚することが人生のすべてであったが、実家の妹たちの嫁ぎ先は見つからず、借金を責められ、エミリーを失ってから友人となっていた猫のピーターも逝ってしまい、再び少年の頃に苛まれていた嵐の海に溺れる悪夢を見るようになる。

心を失い、貧しい人を受け入れる病院で猫の絵を描き続けていたルイスを救ったのは、病棟を視察に来たダンだった。彼は若い頃、電車の中でルイスにペットのポメラニアンの絵を描いてもらったことがあり、映画の冒頭のシーンで登場する。年齢を重ねたダンが「絵を描き続けることで他者とつながり、ひとりにさせないことがエミリーの願いだったのではないか」とルイスを諭すシーンは非常に感動的だ。それぞれの心の闇は目に見えるわけではないが、相手に共感し尊重することが何より大切なのだと本作品は教えてくれた。

12月1日(木)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
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『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』
https://louis-wain.jp/

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク記者
編集担当。アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、
自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。