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オンデーズの「視力格差」是正や盲導犬支援活動ーー田中代表が唱える社会貢献の捉え方とは

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ネパールでの支援活動の様子

メガネやサングラスを製造販売するオンデーズ(OWNDAYS、 沖縄・那覇)は、発展途上国へのメガネ配布や、盲導犬育成支援など「視力格差」を是正する社会貢献活動に力を入れている。時には宣伝目的と非難されることもあるが、「むしろ宣伝活動としてやらなければ意味がない」と言うのが、同社代表の田中修治氏である。その真意は一体何だろうか。2008年に破綻寸前の同社の筆頭株主となり、世間をあっと言わせた業界の風雲児・田中氏に、社会貢献活動に取り組む理由を聞いた。(いからしひろき)

東日本大震災の避難所で改めて知った「メガネは暮らしに必要なもの」

オンデーズがメガネ配布活動「EYE CAMP」を始めたきっかけは、2011年3月の東日本大震災だ。さまざまな企業が被災地に多額の寄付をする中、企業再生途中のため資金がなかった同社は、売り物のメガネを避難所の人々に配ることしかできなかった。当時の様子を、田中氏はこう振り返る。

「避難所には着の身着のまま逃げ出して来て、メガネのない生活を強いられている人がたくさんいました。われわれはお金の代わりに仕方なく現物で支援したのですが、思いのほか喜んでくださって……。メガネはこんなにも人々の暮らしに必要なものなのだと、改めて実感しました」

それは田中氏をはじめ従業員にとって、会社のアイデンティティを再確認する貴重な機会だった。そうした理由もあり、同社はその後も継続的に支援活動を行うようになる。

国内のみならず海外へも支援の手を伸ばした。インドやネパール、フィリピン、カンボジアなど、主にアジアの発展途上国の現地NGOと提携し、3カ月に1度、現地医師の協力で視力測定と眼病検査を行っている。そして一人ひとりの目に合ったメガネを仕立て、食料、学習用具、スポーツ用品などとともに寄贈している。これまで日本を含む7つの国に配布したメガネは約8000個にのぼる。

イラクでの様子。視力を測った上でメガネを作っている

ちなみに、こうした海外への支援を通じて、「国内だけでは気づかなかった視力格差の現実を目の当たりにした」と田中氏は言う。

例えば、発展途上国の、病院もないような山奥の村に行くと、眼科検診を一度も受けたことがない人がごく普通にいるという。つまり自分の視力が弱いことに、ほとんどの人が気づいていないのだ。

それによるマイナスの影響が顕著なのが子どもたちだ。文字がよく見えないと集中力が続かず、学習意欲が奪われてしまう。学力がつかなければ、将来的な収入も上がらない。しかもその原因が視力であることを誰も分かっていない。視力の格差は貧富の格差と地続きなのだ。

「失明などにつながる目の病気と違い、視力格差の問題は後回しにされがちです。しかし生活のクオリティーを著しく下げるという点では、絶対に是正すべきなのです」

ネパールでの支援の様子。田中氏も現地に赴いてメガネを贈呈

「寄付や社会貢献活動は目立たずやる」は間違い

同社は〈目のパートナー〉という共通点から、国内の盲導犬の育成支援にも、2019年4月から取り組んでいる。

「One Vision Project」と名付けられたこの取り組みでは、商業施設での盲導犬の啓発イベントの開催や、盲導犬用グッズの制作と無償提供、チャリティーピンバッジの店頭販売、サポートカーの寄贈などを行っている。

グッズやサポートカーには同社のロゴを入れているが、これを「宣伝目的だ」と批判する声が、実は少なくないという。

盲導犬用のハーネスバッグ
CAPハーネスバッグの贈呈式。手前右から2番目が田中氏

日本では「寄付や社会貢献は目立たないように行うことが美徳」とする風潮がまだ根強く残っているが、「その考えは間違っている」と田中氏は断言する。

「僕はむしろ、社会貢献活動は宣伝目的でやらなければ意味がないと思っています。なぜなら、今回のコロナ禍のように、会社の業績が悪くなると真っ先に削られるのは寄付金や社会貢献活動費などだからです。我社は最初から広告宣伝費として計上しているので、真っ先に削ることはありません」

前記した途上国へのメガネ配布活動においても、当然オンデーズというブランド名を前面に押し出している。同社にとって、社会貢献活動と宣伝活動は一体なのだ。ただし、一体ではあっても、宣伝臭が強すぎると社会貢献活動はかえって逆効果を招く。「寄付や社会貢献は美徳」とする日本では、打ち出し方に一定の配慮も必要だろう。

さらに、「途上国へのメガネ配布は海外展開への足がかりでもある」と田中氏は打ち明ける。支援国の多くが経済的に未熟で、実際に出店した例はまだ少ないが、「いまのうちに社会貢献を通じてブランドを浸透させておけば、いざメガネ市場ができた時に一番乗りできる」と、その狙いを隠さない。

盲導犬協会のサポートカーの納車式。車体には堂々と自社のロゴが

ここまで明け透けにされると、確かに「宣伝目的…」と揶揄したくなる気持ちも分からなくないが、その中身は支援される人たちの実益に伴うものであり、パフォーマンスではなく事業として行っている分、より真剣に取り組んでいるといえる。

企業は“社会のインフラ”になることを求められている

同社はメガネづくりにおいても、「大量生産・大量消費が環境にとって一番悪い」という考えから、“つくりすぎない”ことを理念としている。そのために、例えば無理に価格を下げることは止め、代わりにアフターケアの保証を手厚くし、商品サイクルを長くするよう努めている。

「2016年にオランダのデン・バーグに出店した際、欧州のマーケットでは大量生産・大量消費に消費者が飽きていて、高くてもいいから“より環境的、社会的に良いものを”という空気感があることを実感しました。それがきっかけなのですが、日本では最初の2〜3年は価格の安いメーカーにお客様が流れてしまい、苦戦しました」

その後、日本でも遅ればせながら、欧州のような風潮が一般的になりつつあるのは承知の通りだ。

なぜ同社は、ここまで“エシカル”であることを重要視しているのだろうか? そう問うと田中氏は、「投票してもらうため」と言う。

「これからの時代、消費者は“この会社はどれくらい社会に貢献しているか?”“この商品を買えばどれくらい世の中が良くなるか?”という目で物を買う人が増えます。つまり投票活動と同じです。企業として投票され続けるためには、自社の利益がどう社会に還元しているのか、きちんと明らかにするのは当然です」

まとめると、寄付や社会貢献活動といった善意の枠組みではなく、広告戦略やPRといったものを上手く掛け合わせ、会社の本業の延長で利益を社会に還元するような仕組みを整えることが必要だということだ。

企業はそうした“社会のインフラ”の一つになる覚悟があるか、問われているのかもしれない。

いからし ひろき

プロライター。2人の女児の父であることから育児や環境問題、DEIに関心。2023年にライターの労働環境改善やサステナビリティ向上を主目的とする「きいてかく合同会社」を設立、代表を務める。