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コロナ禍で「ジェンダー不平等」が明らかにーー内閣府が『男女共同参画白書』公表

IvelinRadkov

2020年版の「男女共同参画白書」がこのほど公表され、コロナ禍で非正規労働者を中心に雇用情勢が急速に悪化する中、その影響が男性に比べて女性により重くのしかかっている実態が浮かび上がった。また配偶者による経済的・精神的DVの相談件数や女性の自殺者が増加するなど、女性の中でもひとり親世帯や貧困層にある人への負荷がより大きくなっている、日本のジェンダー不平等の実態があらためて明らかになった。SDGsの目標5である「ジェンダー平等を実現しよう」は、最新のSDGs達成度ランキングでも引き続き日本の最大の課題の一つとされており、早急な改善に向け、ジェンダー視点に立った有効な手立てが迫られる。(廣末智子)

1度目の緊急事態発令、男性は39万人、女性は70万人が失業

白書によると、1度目の緊急事態宣言が発令された2020年4月の就業者数は、その前月と比べ男女ともに大幅に減少したが、男性が39万人の減少だったのに対し、女性は70万人の減少と、1.8倍近く女性の減少幅が大きかった。役員を除く雇用者のうち男性は約8割が正規雇用であるのに対し、女性は半分以上が非正規雇用で、その数は2020年3月以降、13カ月連続で減少している。1度目の緊急事態宣言中(2020年4月〜5月)に、就業者数の減少幅が大きかった産業は、男性は「飲食」「建設」「製造」「小売」だったのに対し、女性は「飲食」「生活・娯楽」「小売」だった。

ひとり親世帯については、2016年の数値だが、1988年からの約30年間に102.2万世帯(母子84.9万、父子17.3万)から141.9万世帯(母子123.2万、父子18.7万)へと増加しており、母子世帯では約1.5倍、父子世帯では約1.1倍に。全体のひとり親世帯に占める母子世帯の割合は86.8%となっている。また2019年の厚労省による「国民生活基礎調査」によると、母子世帯の31%が年間所得金額が200万円未満で、41.9%が生活を「大変苦しい」と回答している。

7〜9月、シングルマザーの完全失業率3ポイント押し上げる

さらに母子世帯の場合、雇用者に占める非正規の割合も52.3%と高く、緊急事態宣言が出された2020年4月以降、男女共に完全失業者数が増加傾向で推移する中、同年7〜9月期平均の数字をみても、シングルマザーの完全失業率は約3%押し上げられていることが分かった。これに対し、子どもも配偶者もいる女性の完全失業率への影響はほとんどなかったという。2020年の年末に行われた「新型コロナウイルス感染症のひとり親家庭への影響に関する緊急調査」では、年末に向けての暮らし向きが苦しいと答えたひとり親は60.8%に上り、直近1カ月に必要とする食料が買えないことが「あった」と回答したひとり親は35.6%だった。

一方、生活面では、全国の配偶者暴力相談支援センターと「DV相談プラス(新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や休業などが行われる中、DVの増加や深刻化の懸念を踏まえて開設された相談機関)」に寄せられた相談件数を合わせると、2020年度の相談件数は19万30件で、前年度比約1.6倍に増加。さらに「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」には前年度比約1.2倍の5万1141件の相談があった。

さらに2020年の自殺者数は、男性が1万4055人で女性は7026人と、総数では男性の方が多いものの、前年比では男性は23人減っているのに対し、女性は935人も増え、コロナ禍において「例年とは明らかに異なる」傾向が如実に表れた。厚労大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」が2020年10月に発表した「コロナ禍における自殺の動向に関する分析(緊急レポート)」によると、こうした女性の自殺の背景には、経済生活問題や勤務問題、DV被害や育児の悩み、介護疲れや精神疾患などさまざまな問題が潜んでおり、「コロナ禍において、そうした自殺の要因になりかねない問題が深刻化したことが女性の自殺者数の増加に影響を与えている」などと指摘している。

こうした現状を踏まえた上で、白書は「ポストコロナ時代における男女共同参画の未来」と題し、産業構造の変化に伴う就労支援の在り方などを提言。テレワークによって「家事が増える」ことや「自分の時間が減ることがストレスである」と感じることが多い女性と、「通勤時間分を有意義に使える」「家族と一緒の時間が増えて良い」などと感じることの多い男性の「テレワークに対する認識のギャップ」を考慮しつつ、労働者が安心して働くことのできる良質なテレワークを推進し、定着させていくことの必要性に言及。またコロナ禍においても就業者数が増加している医療・福祉、情報通信業などニーズのある分野や成長分野などへのシフトを進め、職業訓練による人材育成や人材のマッチング、勤務環境の改善に政府としても取り組む方針を示している。

「時期を逸せず、ジェンダー視点踏まえた政策を打つ必要がある」

コロナ禍で貧困率や失業率が増大し、弱い立場の人がさらに苦境に陥り、格差が広がっているのは世界的な傾向であるとはいえ、白書は「わが国においては男女共同参画の遅れが露呈することになった」と指摘。その上で、「このコロナ禍で顕在化したさまざまな男女共同参画の課題を解決し、未来を切りひらいていかなければ、ジェンダー・ギャップ指数2021で世界156カ国中120位のわが国はさらに世界に遅れをとってしまう恐れがある。新型コロナという未曾有の危機と、それに伴う経済社会の構造変化は女性の地位向上を図るチャンスでもあり、この流れを後押しするよう、時期を逸せずジェンダー視点を踏まえた政策を次々と打つ必要があり、そのためには意思決定の場における女性の参加、そして女性の政治参画も重要である」と締めくくっている。

同白書は「男女共同参画社会基本法」に基づいて内閣府が作成。閣議決定を経て、毎年6月23日〜29日に定めている「男女共同参画週間」に合わせて公表している。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。