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SDGs達成度ランキング、日本は18位:「行動の10年」世界は具体的な行動と投資の加速を

SDGs達成度が高い国ほど濃い色になっている

SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)などは14日、165カ国のSDGsに関連する取り組みを分析した報告書を発表した。2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大により貧困率と失業率が増加し、SDGsの発効以来、初めて世界的に取り組みが停滞した。SDGs達成度ランキングでは、1−5位までをフィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギーの欧州勢が占めた。日本は昨年17位だったが18位に順位を下げ、例年と変わらず、ジェンダー平等や気候変動対策、陸上や海洋の持続可能性、パートナーシップが最大の課題とされている。報告書は、SDGsの目標年である2030年まで10年を切るなか、持続可能でより安心して暮らせる未来に向け、世界が共通して抱える課題の解決のために行動を加速させる必要があることを伝えている。(サステナブル・ブランド ジャパン=小松遥香)

報告書『サステナブル・ディベロップメント・レポート(Sustainable Development Report)』は、SDGsが発効する前年2015年に前身となる報告書が公開され、今回の2021年版で6年目を迎える。国連の提唱する「行動の10年」に入り、今年の報告書はこれまで以上に具体的な行動を促す内容となっている。

サックス氏は、国連総長のSDGs特別顧問も務めている

SDSNの責任者で、著書『貧困の終焉──2025年までに世界を変える』で知られる米コロンビア大学の経済学者ジェフリー・サックス氏は「新型コロナウイルスによって、毎年前進してきたSDGsの進捗は後退した。報告書は、より良い復興を目指すという意味の『ビルド・バック・ベター(Build back better)』ではなく、より良い復興を遂げ、さらに事前に約束したSDGsの達成に向けて社会を前進させる『ビルド・フォワード・ベター(Build forward better)』を実現するためのものだ」と語り、SDGsが掲げる課題を解決する大規模な投資とそれを可能にする資金供給が重要になることを強調した。

SDGs達成度ランキング2021

今年も北欧を中心に欧州の国々が上位を占めた。上位20位は、クロアチアを除きすべてOECD(経済協力開発機構)の加盟国。最下位の中央アフリカ共和国、南スーダン、チャド、ソマリア、リベリアは昨年から順位が変わっていない。地域では、東アジア・南アジアがSDGs達成に向けて最も進展をみせているという。

一方、報告書はフィンランドやスウェーデン、デンマークを含め多くの高所得国が、持続可能な生産と消費、気候変動、生物多様性の保全への取り組みの進捗に大きな課題を抱えていると指摘する。

また報告書が毎年指摘してきたように、ランキング上位の高所得国の経済活動や政治活動が途上国の環境や社会、経済にマイナスの影響をもたらし、結果的に途上国の国々のSDGsに関連する取り組みや達成度を阻害している実情がある。

租税回避なども問題の一つで、タックス・ヘイブン(租税回避地)によって途上国の税収が減り、SDGsに関連する取り組みへの資金投入が不足する事態を招いている。SDGsを達成するにはこうした構造的問題を解消することが必須で、今回の報告書から、他の国への波及効果(スピルオーバー)を数値化した各国のスピルオーバー・スコアと世界の地域別の平均スコアを比較する表が掲載されている。

日本のSDGsの進捗は

赤は「最大の課題」、オレンジは「重要課題」、黄色は「課題が残っている」、緑は「達成できている」。進捗を示す矢印は、↑は「達成に向けて進んでいる」、↓は「後退」、→は「停滞」、↗︎は「適度に改善」を意味する

日本の進捗への評価に大きな変化はないが、18位という順位自体は2016年に並び最も低い。引き続き日本の最大の課題は、目標5(ジェンダー平等を実現しよう)、目標13(気候変動に具体的な対策を)、目標14(海の豊かさを守ろう)、目標15(陸の豊かさも守ろう)、目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)。進捗が後退しているのは目標15。ただし、今回は目標10 (人や国の不平等をなくそう)と目標12(つくる責任 つかう責任)の進捗を測るデータが不足し、国内でも注目の集まる肝心な課題への取り組みの進捗が不明となっている。

詳細な評価項目をみると、最大の課題とされているのは、相対的貧困率、女性国会議員の数、賃金のジェンダーギャップ、無償労働に費やす時間のジェンダーギャップ、再生可能エネルギーの割合、上位10%の所得層の所得と下位40%の所得の比率を表すパルマ比率、化石燃料の燃焼とセメント生産によるCO2排出、輸入に伴うCO2排出、EUR60/t-CO2の炭素価格スコア、電子廃棄物、海の健全性、乱獲などによる漁獲量、生物多様性の保全に重要な海域・陸地・淡水の平均保護面積、レッドリストに掲載されている種の存続、輸入品に伴う海・陸・淡水の生物多様性への脅威、ODA(政府開発援助)などの国際譲許的融資、金融秘密だ。

他国への波及効果を表すスピルオーバー・スコアは、OECD加盟国の平均と比較しても若干低く、東アジア・南アジア地域との比較においても低い。

日本と各地域のスピルオーバー・スコアの比較

スピルオーバー・スコアは、貿易や消費によって生じる環境・社会への影響(CO2の排出、生物多様性への脅威、労働災害など)、金融に関連する波及効果(金融秘密や利益移転など)、安全保障・開発協力に関連する波及効果(ODAや武器輸出)をもとに算出されている。スコアが低いほど、負の波及効果が大きい。

世界はSDGs達成に向かっているのか

日本国内でもSDGsの認知度が過半数に達するといわれるなか、これまでは世界的にSDGsやESGなど持続可能性に関連する取り組みが拡大していた。ここにきて、世界は実際にSDGs達成に向かっているのだろうか。

SDGsインデックス・スコアの世界平均の推移

SDGs達成に向けた進捗度合いを示すSDGsインデックス・スコアの世界平均は今年、初めて下がった。その主な要因は貧困率と失業率の増加だ。しかし、すべての国の進捗が後退したわけではない。ランキング上位の国の単独スコアは昨年より伸びており、コロナ禍において、目標達成に向けて取り組みが進んだ国とそうでない国との差が開いている。1位のフィンランドは昨年の83.8から85.9に、日本も79.2から79.8に上がった。しかし32位の米国は76.4から76.0に下がり、最下位の中央アフリカ共和国も38.5から38.3に下がった。もっとも昨年の国際統計が出揃っておらず、SDGsに関連する取り組みの停滞を過小評価している可能性もあると報告書は説明している。

しかし新型コロナウイルス感染症が拡大する以前から、目標2(飢餓をゼロ)、目標12(つくる責任 つかう責任)、目標13(気候変動に具体的な対策を)、目標14(海の豊かさを守ろう)、目標15(陸の豊かさも守ろう)の進捗は、世界的に非常に遅れているか、逆行している状況にあった。目標2は、栄養不良の人口の増加と体重過多・肥満の人口の増加により悪化しているという。

報告書は、持続不可能な生産と消費、海や陸、淡水の生物多様性の喪失が加速していることに警鐘を鳴らす。実際に、自然保護区は拡大しているにも関わらず、持続不可能なサプライチェーンが一因となり、生物多様性や森林破壊に関係する目標14や目標15の取り組みは進んでおらず、場合によっては後退している。経済活動が停滞した昨年でさえも、熱帯林の破壊は12%増加したという。

2015年からの各目標の進捗

目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)は大きく伸びているが、目標12(つくる責任 つかう責任)と目標15(陸の豊かさも守ろう)はマイナスになっている。

新型コロナウイルス感染症の影響

この数年間、1日あたり1.9ドル未満で暮らす極度の貧困層が大幅な減少をみせており目標1(貧困をなくそう)の取り組みが進んでいた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、昨年はサハラ以南のアフリカや他の地域でもその数が増加した。コロナ禍の昨年1年間で、低所得国・中所得国を中心に推定1億2000万人が極度の貧困に陥っているという。一方で、ビリオネア(保有資産10億米ドル以上)層は2020年4月から7月にかけ、その資産を27.5%以上増やした。

新型コロナウイルス感染症による死者数は6月半ば時点で380万人に上り、目標3(すべての人に健康と福祉を)の進捗に影響を及ぼしている。死亡率や平均寿命の低下は社会的に脆弱な立場にいる層で高くなっているが、欧米でも平均寿命が下がった。米国全体では1年下がり、なかでも黒人は2.7年、ヒスパニックは1.9年下がったという。この他にも、目標4(質の高い教育をみんなに)、目標5(ジェンダー平等を実現しよう)の達成にマイナスの影響を及ぼし、目標6(安全な水とトイレを世界中に)、目標7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)、目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)の進捗が停滞した。

誰一人取り残さない世界に向けて変われるか

報告書は、世界共通の目標であるSDGsを達成するには「質の高い教育(目標4)」「良質で安価な医療へのアクセス(目標3)」「再生可能エネルギーと循環型経済(目標7・12・13)」「持続可能な陸域・海洋生態系の管理(目標2・14・15)」「持続可能な都市インフラ(目標 6・9・11)」「デジタルサービスへのユニバーサルアクセス(目標9)」の6つの変革が必要だと指摘する。

さらに、これらの変革を実行するには、世界的に公共投資を拡大しなければならない、と強調する。とりわけ、コロナ禍からの復興とSDGs達成に投資する財源が不足している低所得国においては、国内はもちろん国際的な政策によって、自国の財政余地を拡大することが重要となる。

ジェフリー・サックス氏は「SDGsの進捗を回復するには、世界的な税制改革と国際開発金融機関による融資拡大によって、途上国の財政余地を増やすことが必要だ」と述べている。具体的には、世界市場と通じ経済復興が見込める先進国や新興国と比べると、信用力が低い低所得国が、GDPに対して富裕国と同等の規模の借り入れをほぼ同じ金利で行える、新たな形の国際政策支援を実行することなどが期待されるという。

報告書は、単独で解決することが難しい世界的課題を解決し、リスクを予防していく上で、今後こうした多国間主義に基づく協力体制がより一層必要になってくると念を押す。

SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」変革が行えるか。これまでの格差や分断を助長する社会、経済、政治体制を転換し、公平性のある、真に持続可能な発展に向けて取り組んでいけるか。地球環境の危機が深刻化するなか、人類には、歴史のなかで積み重ねてきた経験や知恵を結集して新たな未来を切りひらく具体的な行動が求められている。

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