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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

コメダが100%植物由来の新業態ブランド店舗を開店、「持続可能性」日常に

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「コメダ珈琲」を展開するコメダ(愛知・名古屋)は15日、新業態ブランド「KOMEDA is □(コメダイズ)」の第1号店を東京・東銀座にオープンした。メニューは調味料まで徹底して、100%植物由来を使用。環境負荷の低減や循環型社会の実現を意識し、店舗内の装飾などにも廃材、コーヒーかすを利用する。「コメダ珈琲」の食べ応えを損なわず、普段ヴィーガンを意識しない人も気軽に利用でき、日常に根付いたサステナビリティを体現した。同社は大和証券と共同で、「SDGsを身近に」をテーマとした店舗を今月オープンしたばかり。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本 啓一)

コメダ珈琲と言えば、「気軽な日常感」や「名古屋発のモーニング」、「ボリューム感」などのイメージを持つ人が多いのではないだろうか。「お肉を休む日を、つくろう」を合言葉に「100%植物由来」のコンセプトを掲げた新ブランド「KOMEDA is □」は少し意外な印象もある。

実際に店舗を訪れ「べっぴんバーガー(アボ照り)」を注文してみると、まず大きさのインパクトに驚いた。少食の人なら半分でも満足しそうなボリューム感は、これまでのコメダのイメージ通りだ。タッチパネルでの注文時にカットする選択ができるので、シェアしやすい。肝心のパテは言われなければ植物由来の大豆ミートだと気付かないだろう。店舗でなければそう言われても疑ってしまいそうなほど、肉に近い食感だ。

フードだけで約40種にもなるメニューにはバーガーのほか、定番のモーニングやパスタ、サラダ、米粉のパンケーキ、「コメダ初」のアルコール類などが並ぶ。そのどれもが肉・乳・卵はもちろん調味料まで動物性のものを使っていない。同時にこれまでの「コメダ」のイメージを踏襲し、ヴィーガンかどうかに関わらず違和感なく利用できる。

べっぴんバーガー(アボ照り)

ターゲット限定しないコンセプト

コメダは50周年を迎えた2018年、サステナビリティのコンセプト「KOMEDA COMES TRUE.」を定めた。その根底に「いつものくつろぎを、いつまでも、どこまでも続けてゆく」という思いがあるという。「お客様と同じ方向を向いていきたいと考えています」と同社コーポレートコミュニケーション室の中島絵里子氏。「KOMEDA is □」はヴィーカンの人たちに限定したコンセプトではなく、「植物由来100%のメニューを食べたことがないという人に来ていただきたいです。満足いただきたいということが一番にあります」と話す。

同店を企画した同社事業開発部の上石安寿部長は「根本的なコンセプトは『地球とくつろぐ喫茶店』です。食肉が環境に与える負荷が大きいことを知り、プラントベースの店舗で、地球にいいことができるのではと考えました」という。近年、畜産による環境負荷が問題視され、米国では代替肉を扱うインポッシブル・フーズ(カリフォルニア)が躍進。食習慣の変革による温暖化の緩和の必要性は世界で注目されている。

メニューは料理家の廣瀬ちえ氏が代表を務めるべっぴんプラス(愛知・名古屋)と共同で、1年をかけて開発した。コスト面には苦労はあったというが、食器などの細かい部分も含めて全体としてグレードアップすることで、銀座エリアという地域にあって、周辺のビジネスパーソンの普段使いに違和感のない価格帯になっている。コーヒーかすを再利用した壁材や、廃棄されるガラスや木材などを活用した床材、装飾など、店舗の設計もサステナビリティにこだわった。

「プラントベースだからと高級感を出すのではなく、皆さんに利用していただきたいと思っています」(上石氏)

ナチュラル調の明るい店内。席間を広めにとり、ゆったりとした空間。ウィンドウ際の1人席には仕切りが設けられた。中央のオブジェは廃材を利用した「再生の木」
一部の床材には不要になったガラス瓶を粉砕・再利用した素材を使用。使用されるガラスはエコマーク認定されている
廃棄されるはずのガラスを再利用したライト

ニューノーマル実装の一端

「KOMEDA is □(コメダイズ)」というユニークな店舗名には「お客様に□(空白)に入る新しい魅力、価値観を見つけてほしい」という思いがあるという(もちろん、同店のメニューに多く使われる米・大豆の意も)。新型コロナ禍に直面し、多くの人が立ち止まって価値観を振り返るタイミングにこの店舗をオープンしたことは象徴的だ。

「影響があるときだからこそ、日常がかけがえのないものだったことが再認識できました。『いつもよ、続け、どこまでも』という、コメダのサステナビリティのコンセプトにもかかってきます。こういうお店がこの時代に必要なんじゃないか、という思いを持っています」(上石氏)

コメダの既存ブランドの「コメダ珈琲」でも7月1日、大和証券と共同で「SDGsを身近に」をコンセプトとした店舗を東京・吉祥寺に開店している。同店では店舗デザインだけでなくSDGsカードを設置するなど、利用者がSDGsを知り、店舗の取り組みを通じて触れることができる工夫をした。

50周年を機にサステナビリティの実装へと舵を切ったコメダ。今回「KOMEDA is □」が打ち出したコンセプトは、新たな価値観が日常にとけこんだ「ニューノーマル」実現の一端を感じさせる。

KOMEDA is □ 東銀座店

東京都中央区築地 1-13-1 銀座松竹スクエア1階
席数 68席(全席禁煙)
営業 7時~23時(アルコールの提供は11時~23時)
年中無休(年末年始は異なる場合あり)
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沖本 啓一(おきもと・けいいち)

フリーランス記者。2017年頃から持続可能性をテーマに各所で執筆。好きな食べ物は鯖の味噌煮。