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国連気候行動サミットで取り上げられなかった畜産物の話

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MARIA LETTINI
本物の肉のような植物性代替肉 (Impossible Foods)

9月23日に開催された国連気候行動サミット2019では、エネルギーや交通、建築に関する議論は活発に行われたが、畜産物にはスポットライトが当てられなかった。私が所属する過剰な畜産物の生産による投資リスクの啓発を行うイニシアティブ「FAIRR」が参加した生物多様性の会議では、行動をすぐに起こす必要があるとされている。(翻訳=梅原洋陽)

先週、私は国連気候行動サミット2019に参加するためにニューヨークにいた。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、世界のリーダーに4年前のパリ協定よりも効力のある具体的な計画を持ってくることを求めていた。

しかし、その要求はほぼ果たされなかった。中国とインドは気候変動に関するより責任ある行動は約束せず、米国、日本、オーストラリア、サウジアラビアそしてブラジルは何も言及しなかった。世界最大の13の石油会社からなる連合は、よりクリーンな選択肢に移行するのではなく、この先数十年にわたり石油やガスの使用を持続させるように見える提案を行い批判を招いていた。

エネルギー、移動や建築に関しては活発に議論されたが、農業動物に関してはスポットライトが当たっていなかった。これは大きな問題である。最新のIPCCの報告によると、25-30パーセントの温室効果ガスは食糧品関連のようである。

サミットと同時に開催され、私が参加していた生物多様性に関する会議では、行動をすぐに起こす必要があるとされた。

食習慣が気候変動を緩和する

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書は、肉が中心の西洋式の食事から、野菜中心の食事に変更することは、気候変動を大きく緩和することにつながると伝えている。

Rise財団によると、ヨーロッパの肉と乳製品の生産を2050年までに半分にしないと世界が掲げる目標は達成できないと伝えている。政府には行動の変化を促す、多くの政策手段が備わっている。例えば、公的調達、教育、産業戦略、課税などだ。

実際にこのような道を進んでいる例もある。デンマークやスウェーデン、ドイツの政治家達は、FAIRRの2017年に議論された白書にあるような牛肉への課税を検討している。

畜産業界の環境対策

供給側からすると、食品業界がカーボン・フットプリントを減らすためにできることは沢山ある。最初の1歩は現在の排気量を公開し、少しでも減らすために目標を設定することだ。

FAIRRはたんぱく質生産に関するインデックスを発表した。これは世界最大の肉・魚・酪農企業60社のサステナビリティ・リスクの管理状況を分析したものだ。これらの会社は温室効果ガスに関する項目で100点のうちたった17点しかないことが分かった。そして、排出状況を公開し、削減目標を設定している企業はほとんどない。

この表によると主要な動物タンパク質製造業社のうち7社しか排出量に関する項目に回答しなかったようだ。この項目は、動物飼料生産や家畜の腸内発酵など、家畜生産の80%を占める排出量に該当するため非常に重要である。

同インデックスは、肉・酪農企業の中で米タイソン・フーズがただ1社、パリ協定の内容に合致する科学的根拠に基づく削減目標を設定していることを明らかにした。

興味深いことに、サミットの始まる直前に、ダノンやネスレなどの食品企業59社がパリ協定の最も野心的な、産業革命前から気温上昇を1.5度に抑えるという科学的な目標にサインしたようだ。

食品関連の温室効果ガスの排出量を考えると、これは喜ばしい進展だ。しかしインデックスを見れば、彼らのサプライヤーの取り組みの欠如を考えると実際に目標に到達するには厳しい取り組みが必要になるだろう。

代替たんぱく質の今後の見通し

サプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量を減らすためには、世界の食料品企業は飼料を育てるのに使用する肥料を減らし、腸内発酵を減らすために飼料添加物や二酸化炭素を削減する堆肥の管理方法に投資する必要がある。

しかし、未だ世界の主要な食料品企業や小売業者はサプライチェーンを通しての気候に関する取り組みを進められていない。製品のラインナップに代替たんぱく質を取り入れて多様化することで、肉や乳製品のような温室効果ガスを多く輩出する製品を減らすことで、企業は即座に影響力を示すことができる。

例えば、2019年に米食品大手ゼネラル・ミルズは2010年の基準年と比較して、乳製品の購買を減らしたことで農業部門は17%の温室効果ガス排出量を減らしたと伝えた。同じく、代替肉バーガーで有名なインポッシブル・フーズのライフ・サイクル調査は、植物由来のインポッシブル・バーガーの排出量は一般的な牛肉のハンバーガーより89%少ないと報告している。

ダノンとネスレは目標に到達するために、代替たんぱく質を使用することを戦略の一つとしている。ダノンは植物由来タンパク質に特化した研究所を2カ所に設立し、2019年1月には植物由来のヨーグルトの新たなラインナップを打ち出した。ダノンのCEOは今までの伝統的なヨーグルトの売上高に10年以内に追いつくと見込んでいる。

私たちの2019年7月版のAppetite for Disruptionレポートは、ネスレを代替タンパク質のリーダーとして取り上げている。いくつかの植物由来のブランドを立ち上げ、代替プロテイン製品を新たに展開している。同社のインクレディブル・バーガーはドイツのマクドナルドで使用されている。

先月シンクタンクのRethinkXは興味深い記事を出した。代替たんぱく質の製造コストが劇的に下がっているようだ。代替プロテインの1kgあたりの製造コストは2025年までに$10を下回り、2030年までに通常の動物性プロテインの費用の5分の1に、2035年までに10分の1になると伝えている。

マーケットはリターンに対して期待をしながらも、スウェーデンの16歳の環境活動家グレタ・トゥーンベリ氏のスピーチの高評価に戸惑っている。政府や企業、そして投資家が気候変動を抑える戦略の核として、フードシステム改革が持つ可能性を理解することを願いたい。