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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

SDGs時代の新しいまちづくり

左からファシリテーターの川久保氏、本宮氏、竹田氏、高井氏

SDGsの17のゴールの一つに「住み続けられるまちづくりを」という目標が掲げられている。このような国際開発目標群の中に「まちづくり」が組み入れられることはSDGsの採択以前に例がなく、「住み続けられるまちづくり」に期待が集まっている証といえる。サステナブル・ブランド国際2020横浜のセッションでは、新しいまちづくりに実際に挑んでいる企業関係者が集まり、SDGsを原動力とした、強靭かつ環境に優しい魅力的なまちづくりをどう実現していくかを議論した。(岩崎 唱)

都市開発にどのようにSDGsを取り入れていくのか

このセッションのファシリテーターは、世界の共通言語であるSDGsを生かした建築・都市づくりを研究している法政大学デザイン工学部 准教授の川久保俊氏が務めた。川久保氏は、国連全参加国の193ヵ国が合意したSDGsをいち早く実践することでマーケットリーダーになれると指摘する。また、1950年を境に世界の人口は指数関数的に急増し、それにつれ経済も急成長した。その一方で環境面では二酸化炭素濃度が急上昇している。

さまざまなデータから見て1950年を境に時代が変わり、地質学の分野では完新世が終焉し人類の時代「Anthropocene(人新生)」が到来ともいわれている。そして、2015年に国連で「アジェンダ2030」が採択され、その3か月後には第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において1997年に採択された京都議定書以来、18年ぶりとなる気候変動に関する国際的枠組み「パリ協定」が採択された。これらの大きな採択が行われた2015年は将来、メモリアルイヤーになるだろうと語った。

SDGsの特徴は、市民生活を支えているビジネスを取り込んでいることで、民間セクターも大きな役割を担っていることだ。経済、社会、環境の3側面を調和させることが重要だと川久保氏は述べ、すでに先駆的なまちづくりに取組んでいる3社がSDGsをどのような形で都市開発に取り入れているかを紹介した。

社会と自社の二つの視点でまちづくりの最重要課題を特定

「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」を経営理念に掲げる竹中工務店は、創業から400年、会社の創立から120年を誇り、近年は中高層木造建築に力を入れている。設計本部プリンシパルエンジニアの高井啓明氏は「事業部門によってSDGsへの取り組み方は異なり、社外にもたくさんのステークホルダーの皆さまがいる。そうした方々にどう取組んでいったらいいかを知ってもらうために『SDGs利用の社内プラットフォーム」を開設し、自由にアクセスしていただき、情報の共有化を図っている」と語った。

取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定に関しては、社会課題リストの作成、社会と自社の2つの視点からの優先順位付け、方策・KPIを検討し妥当性を評価、重要課題を特定し長期経営計画に盛り込むという4段階のプロセスを踏んでいる。上がってきた課題は、SDGsゴールの中で建築に関連深い7番から12番のゴールとどのような関係があるかを検討し、さらに横軸を自社、縦軸を社会にしたグラフ上にプロットして双方に重要な課題を特定していると述べた。

こうしたプロセスを経て特定した最重要課題のうち持続可能な建築・まちづくりに関しては「環境(ゼロエネ・脱炭素)・社会に配慮した建築とサービスの展開」と「サステナブルなまちに向けた社会システムの創出」が挙げられる。環境・社会の分野では「木造・木質建築の推進」、「ZEB-エネルギーマネジメントの推進」、「ウェルネス建築の推進」。サステナブルなまちづくりの分野では「まちの社会課題探求と課題を解決する社会システムの検討」、「社会システムの構築により事業化の推進」、「まちづくりの起点となるプロジェクト創出」が課題解決のための方策・指標(KPI)として挙がっているという。

さらに高井氏は、持続可能なまちづくり事例として、横浜市の新市庁舎、渋谷PARCO、江東区の運河や川を抱くエリアの新たなまちづくり「イーストベイ構想」への参画、島根県雲南市との健康なコミュニティを支える事業創出に向けた連携協定の締結、千代田区九段のkudan house(旧 山口萬吉邸)のシェアオフィス化、長野県塩尻市の奈良井宿まちづくり事業への参画などを紹介した。

最重要テーマを制定し、持続可能なまちづくりを展開

続いて三菱地所横浜支店 支店長の竹田徹氏が、同社のSDGsの考えた方とまちづくりの事例を紹介した。

1930年代に岩崎小彌太が記した三菱の三綱領が、三菱グループ各社が共有する行動理念で、これは今の時代にも通じる。その上で三菱地所グループは、2030年に向けてSustainable Development Goals 2030を制定した。これには「Environment」「Diversity & Inclusion」「Innovation」「Resilience」の4つの最重要テーマを定めている。これに沿ってESGへ取組み、事業を通じて価値を提供していこうとしている。

Environmentの事例としては、大手町にある3×3Lab Futureという組織があげられる。この組織は、サステナビリティの3要素「経済」、「環境」、「社会」をテーマにサードプレイスとして業態業種を超えた交流・活動拠点として次世代社会の実現に寄与している。また、大手町・丸の内エリアでは、第3次の改造計画を進めている。第1次はレンガ造りの洋館の時代、第2次は鉄筋コンクリートの時代があり、今の丸ビルに至るまでスクラップ&ビルドを続けてきたが、壊すことにより大量の廃棄物がでる。そこで、築60年の大手町ビルでは、壊さずにリノベーションすることで環境負荷を低減し、循環型社会の形成を目指している。

Diversity & Inclusionの分野では、女性活躍をサポートするための保育所付きワーキングスペース「コトフィス」を設けた。「コトフィス」とは「子どもと働くオフィス」の意で、新国際ビル、山王パークタワーに開業している。

Resilienceは、ハード面だけでは実現できない。三菱地所では独自の災害対策マニュアルを用意し、非常災害体制を定めている。公民連携による災害時対応訓練も実施している。

Innovationの分野では人手不足社会の到来を見据え、AI搭載の警備・清掃・運搬ロボット等の実証実験を行っている。

持続可能なまちづくりを行う上で大切なのは、地域の地権者や行政、関係企業と一緒にまちづくりを行う仕組みづくりで、自社だけで将来像を決めるのではなく、そこに関わる人や団体とガイドラインを作り、それに沿ってまちづくりをしていくことが重要だと締めくくった。

100年先の心豊かなくらしづくりのために

JR東日本が1987年に民営化してから約30年が経った。今までは、鉄道事業の復権とお客様へのサービス向上にフォーカスして事業に取り組んできたが、これからの30年に向け、2018年にグループ経営ビジョン「変革2027」を掲げ、今までの鉄道インフラを起点としたサービス提供からヒト(すべての人)の生活における豊かさを起点とした社会への新たな価値の提供へと価値創造ストーリーを転換していくとJR東日本事業創造本部の本宮彰氏は語った。

JRグループでは、「環境」、「社会」、「ガバナンス」の観点からESG経営を実践し、事業を通じて社会的な課題解決とSDGsの達成に取組み、地域社会の発展に貢献することで顧客からの信頼を高め、JRグループの持続的な成長を実現しようとしている。「環境」の観点では、地球温暖化防止とエネルギー多様化が課題だ。鉄道は、自動車に比べ環境に優しいが、電気自動車の登場など自動車業界では大きな変革が起きている。同社では、鉄道事業でのエネルギー使用量を2030年に約5%削減(2013年度比)することを目標とし低炭素社会実現に向けて取り組んでいる。CO2においては、2035年に約4割を削減(同)するというチャレンジングな目標を立てている。「社会」では、サービス品質の改善、子育て支援、多様なお客さまへの対応、国際鉄道人材の育成等の社会課題への対応している。「ガバナンス」では、究極の安全を目指し、常に現場からの意見を大事にしているという。

JR東日本は、東京、新宿、渋谷で駅を中心としたまちづくりを行ってきた。最近では、大きな車両基地跡地に新駅をつくり、都市開発を行う「グローバルゲートウェイ品川」プロジェクトを手掛けている。世界につながり、地域をつなぐ、エキマチ一体の都市基盤形成だ。ターゲットは将来世代とし、孫の世代まで通じる100年先のこころ豊かなくらしづくりのための実験の場とし、建物の間隔を広くとって海からの風に配慮したり、駅舎にふんだんに東北の木を使ったり環境に配慮した開発を行っている。エリアの使用電力もJR東日本の自営電力の他、風力、太陽光、地中熱、食品廃棄物からのバイオガスなど多様な自然エネルギーを利用し、水素社会へ向けた取り組みも行っていくと語った。

最後にファシリテーターの川久保氏は「SDGsの17の11番目のゴール『住み続けられるまちづくりを』は、他と比べると具体的に生活空間に落とし込んだゴールとなっている。いま、都市人口は世界人口の60%を突破し、CO2排出量も70%が都市から出ている。国際社会には、都市が変われば世界が変わるのではないかという期待感がある。今日、ご登壇いただいた各社は、これからもフロントランナーとしてSDGsをリードしていっていただきたい」と締めくくった。