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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

社会の側面を見落とさない 社員も企業も豊かにする鍵はD&Iの確立にある

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左から山岡氏、成澤氏、本多氏、前野氏

近年、組織運営や人材活用の文脈で取り上げられることが多くなった「ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)」という言葉。組織として多様性を重んじる「ダイバーシティ」がより包括的に進化することをイメージすると近いだろう。サステナブル・ブランド国際会議2020横浜では、D&Iをテーマにした分科会が行われた。(やなぎさわまどか)

山岡仁美・SB2020Yokohamaプロデューサーがファシリテーターとなり、「社会不安が取り巻くこの時代において、個人の感性やスキルが高く発揮される」と、D&Iが重要視されるべき理由を強調した。SDGs17目標のうち、人材活用に直接関わる目標はジェンダーの平等や働き方の2つだが、「それでいいのだろうか」と会場に投げかけて、熱気を帯びた75分がスタートした。

長年「幸福学」を研究している慶應義塾大学の前野隆司氏は、「ひとは幸せな状態でいることで、公私ともにいい結果が生み出せる」という事例を紹介。「幸せ」と「創造性」と「多様性」の関係性を健全に保つキーポイントも多様性にある、と言う。また、自身の研究結果では、幸せの4つの因子として、他者との関係や貢献といった行動から得られる「自己承認の力」を紹介した。

障がい者雇用における支援やコンサルティングを行うNPO法人FDAの成澤俊輔氏は、視力を失うなど「たくさんの社会課題が降ってきた」自身の半生の中で気づいた社会の側面を笑いを交えながら紹介し、会場全体が心を掴まれた。問題に対峙した際の「思考の転換」がいかに重要かと説き、「目から入った情報で他者と自分を比較して不幸になったりしますよね、僕にはそれがありません」と、一般的な弱みすら強みに変えられることを力強く伝えた。

国内老舗企業のひとつである資生堂においてもまた「D&Iの課題に日々向き合っている」と話すのは、昨年から同社ダイバーシティ&インクルージョン室長を務める本多由紀氏。化粧がもつ「人を元気にする力」を生かし、ガン治療による外見の変化を抱える方を対象に、化粧によりカバーするアピアランスケア活動を紹介した。参加したガンサバイバーの方々から逆に「やりがいや幸せや誇りを受け取る」と、同社の社員たちが自己のあり方に誇りを持ち始めると語った。

「この社会が多様であることはなにも近年の傾向ではない。社会とはそもそも多様なのだ」と再認識させられた4人のパネルディスカッション。日本全体のウェルビーイング向上は、社会を構成する私たち自身が多様性を標榜できるかどうかにかかっている。

やなぎさわまどか

神奈川県出身。ナチュラリストの母により幼少時代から自然食や発酵食品で育つ。高校在学中から留学など度々の単身海外生活を経験。都内のコンサルティング企業に勤務中、東日本大震災で帰宅難民を経験したことをきっかけに暮らし方を段階的にシフトする。現在は横浜から県内の山間部に移り、食や環境に関する取材執筆、編集、翻訳通訳のマネジメントなど。