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「横横プロジェクト」に学ぶ、都市と地方の再エネ連携成功の秘訣

左から横浜市温暖化対策統括本部 薬師寺えり子本部長、日本郵船のグリーンビジネスグループ中村利グループ長、青森県横浜町の野坂充町長

神奈川県横浜市は昨年2月、「ゼロ・カーボン横浜」の実現に向けて東北の12の市町村と再生可能エネルギーに関する連携協定を締結した(下記、関連記事を参照)。この取り組みの第一弾として現在、横浜市の15社が青森県横浜町の風力で発電された電力の利用を開始している。サステナブル・ブランド国際会議2020横浜では、プロジェクトの関係自治体である横浜市、横浜町に加え、電力を供給するみんな電力(東京・世田谷)や需要家の日本郵船をむかえ、「横横プロジェクト」が実現した経緯や課題、成功の鍵を語った。(環境ライター箕輪弥生)

電力のトレーサビリティで地域間を結ぶことが可能に

エネルギーの大消費地である都市(横浜市)と、再生可能エネルギー(以下:再エネ)が豊富な地方(青森県横浜町)を結ぶ「横横プロジェクト」は小泉進次郎環境大臣が「これからの新たな再エネの在り方を表しているのではないか」と期待を寄せるなど、注目されている取り組みだ。

2050年までに脱炭素を目指す横浜市は、省エネをできる限り進め、足りない電力を再エネで導入していくことでその目標を達成することを目指している。

しかし、「必要な再エネはポテンシャルが豊富なエリアから調達しないと間に合わない」(横浜市温暖化対策統括本部 薬師寺えり子本部長)。そのため昨年、東北の 12 市町村との「再生可能エネルギーに関する連携協定」を締結し、再生可能エネルギーを通じた地域循環共生圏を構築した。

連携協定を結んだ市町村のひとつ、横浜町の電力の横浜市内15社への提供が始まったのは昨年末からだ。この理由を、「早く具体的な成果事例を作りたかったこと」や、「みんな電力からの供給に関する良い提案があったから」と薬師寺本部長は説明する。

ファシリテーター:みんな電力 大石英司代表

みんな電力は「顔の見える電力」をコンセプトに再エネを中心とした電気を供給する小売り事業を行っているが、2018年からはブロックチェーンを活用して「どの発電所からどれだけの電気を買ったのか」という電力取引を履歴化するシステムを開発し、世界で初めて「電力トレーサビリティ」システムの商用化を実現した。

「横横プロジェクト」にもこのシステムが生かされ、横浜町の14基の風車から生み出される電力を、日本郵船、横浜銀行、大川印刷、など横浜市の15社に届けている。

この取り組みが実現した背景にはまた、横浜市に民間からの提案を受け入れる「オープンドア」の仕組みがあり、良い提案であれば受け入れる官民連携の風土があったことも明らかにされた。

時流を読み、小さくてもいいから具体的な1歩を

さて、電気を作る側の青森県横浜町はどのような経緯で横浜市への電力供給を実現したのだろうか。横浜町の野坂充町長は「最初はみんな電力がどんな企業かもわからず、送電は東北電力経由が当たり前なのにどうやって横浜市に送るのかと半信半疑だった」と打ち明ける。

しかし、地元に縁のある人から話はつながり、今では電気だけでなく横浜市との人とモノの交流にまで広がりを視野に入れる。

横浜町は「再生可能エネルギー推進協議会」を作り、横浜町で事業を行う再エネ業者に加入してもらい、利益の数%を町に寄付してもらうことで、地域にお金が落ちる仕組みを構築し、再エネによる経済の地域循環も推進している。

一方で需要家はどのような経緯で横浜町の再エネの導入を決めたのだろうか。日本郵船は、当会議が開かれたみなとみらいで造船された約90年の歴史をもつ船舶「氷川丸」に横浜町の電気を使っている。

日本郵船のグリーンビジネスグループ中村利グループ長は「氷川丸はまさにわが社のフラッグシップ。それを100%再エネ化することで、新しい流れを作る大きな1歩になりうる」と社内を説得したと話す。

中村グループ長は、これまで化石燃料を運ぶことが事業の大きな分野を占めていたが、再エネの時代への転換の潮流を感じたことや、トップのESG経営へのシフトなどをとらえ決断したという。

今後の課題として、横浜市の薬師寺氏は「再エネを使う需要家を増やすこと」だとし、そのためにも「小さなことから具体的な1歩を踏み出した事例は参考になる」と話した。

一方横浜町の野坂町長は、今後さらに陸奥湾で12基の大型洋上風力の計画が進んでいることを発表し、「六ヶ所村など原発関連施設に囲まれている場所で、脱炭素化を実現する町にしたい」と抱負を語った。

最後に、セッションの進行役を務めたみんな電力の大石英司代表は「電気を使わない人はいない。再エネによる電気は需要家には地域との関係を、生産者にも人とモノを含む多くのつながりをくれる」と話し、「電気を通じた創造的なつながりをさらに増やしていきたい」と締めくくった。

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。

http://gogreen.hippy.jp/