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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

ペットボトル1本、ひと月の電気代から始められる社会貢献

「サステナブルTシャツをつくろう!」プロジェクト

「大河の流れも一滴の雫から」という言葉がある。どんなに国を挙げて地球温暖化阻止やCO2削減を訴えても、私達一人ひとりがそれに反する行動をしていたのでは意味がない。逆に言えば、たった一人の小さな行動でも、たくさん集まれば大きな流れとなり、世の中を変えていくこともできる──そんな思いを強く抱かせる2つのプロジェクトが、第4回サステナブル・ブランド国際会議2020横浜(以下、SB国際会議)にて紹介された。キーワードは「ペットボトル」と「電気代」。その意義を押さえておこう。(いからしひろき)

場所は各企業の展示やネットワーキングの場として活用されるスペース「Activation Hub」。お昼時、参加者はブッフェスタイルのランチを取りながら、和やかな雰囲気の中執り行われた。

横浜発の参加型サーキュラーエコノミープロジェクト

山本未來さん


まずステージに登壇したのは、横浜市立神大寺小学校5年生で「横浜ローズプロジェクト」はまみらいアンバサダーの山本未來さん。横浜のごみをTシャツに生まれ変わらせることを目指す、横浜発の参加型サーキュラーエコノミープロジェクト「サステナブルTシャツをつくろう!」の事業説明をするためだ。小学生とは思えない落ち着いた話しぶりで一つひとつ丁寧に伝えようという姿に、参加者の心は次第に引き込まれていった。

このプロジェクトは、一般社団法人「YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス」の旗振りにより、横浜市内で清掃活動を行っているNPO法人「グリーンバード」の横浜チーム、独自のリサイクル技術を持つ「日本環境設計」、地元横浜を代表するSDGs推進企業の「大川印刷」、そして横浜出身のデザイナーらのコラボレーションにより行われた。再生可能エネルギー100%でプリントされることで発行される「再エネ証明書」のデザインは、横浜市の「NPO法人ぷかぷか」で働く障がいがある方々が担当した。

山本さんにうながされて登壇した一般社団法人YOKOHAMAリビングラボサポートオフィス代表理事の河原勇輝さんは、プロジェクトのきっかけについてこう語った。

「横浜市内で清掃活動を行っていると、ポイ捨てされたペットボトルや廃プラごみを多く拾う。これらを良い形で循環できないか。そう考えていた時、山岡さん(編注※サステナブル・ブランド国際会議2020横浜 プロデューサー 山岡仁美氏)からTシャツにしたらどうかというアイディアをいただいた。そうであればぜひ子どもたちと一緒にやりたい。世界に100近くあるグリーンバードのうち、横浜のチームは子どもの参加率が1位なのです」

完成したサステナブルTシャツ。手前の小瓶はリサイクルされたマテリアル。

デザイナーの一人である山崎恵太さんは、デザインに使われている「水引き」のモチーフについて、「日本では古来、贈答品や祝い事に使われるもので、人と人とのつながりを表すもの。取り組みを世界に発信していく上で大変良いモチーフだし、サーキュラー・エコノミーという意味にもつながっている」と説明した。

再エネ証明書のデザインを担当した「NPO法人ぷかぷか」の六ツ見 光莉さんも、このプロジェクトに関われた喜びを率直な言葉でしっかりと聴衆に伝えた。

山本さんは最後まで司会の大役をこなし、サステナブルTシャツが会場内の横浜ブースで販売されているという告知も行った。

会場には多くの人。登壇は再エネ証明書をデザインした六ツ見 光莉さん

みんな電力:第7回グッドライフアワード記念プレゼンテーション

環境省の岡野隆宏さん

続いては、第7回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞の記念プレゼンテーションが行われた。テーマは受賞案件のタイトルでもある、〈発電者と消費者、自然エネルギーと消費地をつなぐ「顔の見える電力」〉
 
まずは、主催の環境省を代表して、大臣官房 環境計画課 企画調査室長で自然環境局 自然環境計画課 課長補佐の岡野隆宏さんより賞の主旨説明が行われた。

グッドライフアワードが始まったのは2015年、SDGsやパリ協定など国際的な約束事がかわされた時期だ。環境、経済、社会それぞれの問題を同時解決していくには、技術、経済社会、ライフスタイルの3つのイノベーションが必要であり、そのうちの「ライフスタイル」のイノベーションを表彰することが目的だと岡野さんは話す。

さらに一昨年、環境省が策定した「第5次環境基本計画」にも触れ、地域にある資源を循環的かつ有効的に使いながら、環境、経済、社会を統合的に向上していく「地域循環共生圏」という考え方を説明。いち早く「ゼロ・・カーボン」を標榜し、東北の12市町村と連係して電力を調達している横浜市は、その好例であると紹介した。その取組みを技術的にサポートしているのが、第7回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞を受賞した「みんな電力」であると説明して、同社代表取締役社長の大石英司さんにバトンを渡した。

「どうせだったら、福島で頑張っている太陽光発電所や、自分のふるさとの水力発電所に電気代を支払いませんか? ふるさと納税のように地方(の自然エネルギー発電所)に電気代を支払ったら、お金は海外に流出しないし、ふるさと貢献にもつながる。なおかつ、再生可能エネルギーを増やすことにもつながるんです」(大石さん)

熱く語る大石さん

電気の小売事業者である「みんな電力」。生産者の見える野菜を買うように、電気代を支払いたい発電事業者を選べるのが同社のプラン「顔の見える電力」の特徴だ。場合によっては発電事業者からお礼の特産品が届いたり、発電所へ見学に行ったりと、電気を通して“人と人のつながり”を実感することもできる。さらに法人向けプランでは、ブロックチェーン技術により、30分ごとに使用する再生可能エネルギーをトレーサビリティーする世界初の商用技術を開発。これが受賞の大きなポイントになったと大石社長は説明。

さらに、同事業は2007年、電車内でソーラー発電付きの小型携帯充電器を鞄にぶら下げていた若い女性を見て「このお姉さんから電気を買いたい!」と思ったのがきっかけだと説明。時は東日本大震災の前、電気など安ければ良いという風潮の中、理解を得られることも難しかったが、時勢の変化や地道な営業活動により、現在では多くの企業や自治体との協同事業を行うまでになったと、これまでの道のりを振り返った。

なお、本会議の電気代はすべて「みんな電力」が調達した100%再生可能エネルギーを利用している。また、横浜市と青森の横浜町による「横横プロジェクト」については、同日、大石氏のファシリテートによるトークセッションが行われた(詳細は後日レポート)。

最後に大石氏は、「家庭から出るCO2の48%が電気由来。つまり、皆さんの家の電気を切り替えるだけで、家庭から出るCO2は削減できる」と訴えた。

「サステナブルTシャツを作ろう」、「顔の見える電力」、2つの取組みに共通するのは、私達の行動がすべての源だということ。たとえ最初はペットボトル1本、家庭の電気代1カ月分でも、その思いがたくさん集まれば大きな流れとなり、世の中を変えるかもしれない。まさに「大河の一滴」なのだ。

いからし ひろき

ライター・構成作家。旅・食・酒が得意分野だが、2児の父であることから育児や環境問題にも興味あり。著書に「開運酒場」「東京もっこり散歩」(いずれも自由国民社)がある。