SDGsで新たな共創モデルの構築を:SDGsワークショップ――サステナブル・ブランド国際会議2019東京
SDGsセミナー&ワークショップ セミナーの様子
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サステナブル・ブランド国際会議2019東京」(SB2019Tokyo)の1日目には、「SDGsで新たな共創モデルを構築するセミナー&ワークショップ」が行われた。自治体、企業、NGOなど、多様なセクターが参加し、グループごとに自治体が抱える課題を解決するためのアイデアについて話し合った。 (オルタナ編集部=中島洋樹)
前半の共創に関するセミナーでは、3人のパネリストが共創について自身の考えや経験談を語った。
ミシガン大学のJoe Arvai氏は、SDGsの目標達成には、5つのP「People(人間)、Planet(地球)、Partnership(パートナーシップ)、Peace(平和)、Prosperity(豊かさ)」に取り組むことが大事であると強調する。その取り組みは、WinWinWin(企業にとっても、消費者にとっても、地球環境にとっても有益であること)につながらなければならない。そのためには今までと違った視点を持ち、「自分たちが変革の担い手になる」という意思が必要ではないかと述べた。
シーザーズ・エンターテインメントのWendy Bagnasco氏は、同社がカジノ施設を展開するラスベガス地区で、人身売買や移民問題といった課題に対し取り組んでいる事例を紹介した。ライバル・競合企業と連携し、貧困層の雇用創出を進める。「ライバル・競合企業にも営業上の関係を超越して加わってもらったことで、目標達成に向けて取り組む共通意識が生まれた」と話した。
ネスレ日本の阿部純一ステークホルダーリレーション室長は、栄養失調に苦しむ乳幼児を救う手助けをしたいと、牛乳に小麦粉・穀粉・砂糖を混ぜた粉ミルクを製造販売したことが同社の始まりだったと紹介。その想いは現在も継続され、自社の事業を展開することによって、地域社会の課題解決につながり、企業の持続的発展に結びつくCSVの考えに生きているという。具体的事例として、高齢者の多い地域での、同社のネスカフェアンバサダーを利用した「介護予防カフェ」の展開を挙げた。地域と連携してコーヒーを飲みながら高齢者が集い語り合える環境を創出することで、高齢者の寝たきり防止に向けて取り組んでいる。
ミシガン大学のJoe Arvai氏
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シーザーズ・エンターテインメントのWendy Bagnasco氏
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ネスレ日本の阿部純一氏
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パネリストの発表後はグループごとにワークショップが行われた。グループごとに、自治体の地域ニーズ(困りごと)を抽出し、その課題解決に向けたアイデアを参加者同士で話し合った。
横浜市文化観光局の倉澤知久氏は、同市が近年の外国人観光客の増加により抱えている課題を紹介した。それは交通機関の乗り換えに関する課題(交通機関ごとに運賃の支払い方法が別々で内容を理解してもらうことが難しい点)、宿泊先で出されるゴミに関する課題(分別することを理解してもらうことが難しい点)、公共案内に関する課題(外国人観光客向けに分かりやすい内容となっているか)などである。
その解決策として、全てを一括支払いできるアプリの導入、ゴミの分別方法について絵を中心としたガイドで周知する、マイカップを用いることでゴミを減らす、公共案内について旅行者目線で更新していく――といったアイデアが出た。さらに夏場に涼しく休憩のできる公共施設のガイドブックを作ってはどうかとの意見も出された。
横浜市政策局共創推進室の相羽洋一氏は、同市は範囲が広く、みなとみらい地区に代表される観光地がある一方で、郊外では人口の減少により発生する空き家や廃校の利活用の課題があることを説明した。
それに対する解決策として、外国人観光客に観光地ばかりでなく郊外も案内する、空き家や廃校を活用したカフェを開く、民泊施設としての活用といった意見が出された。
岡山市市民協働局の小西美紀さんは、同市は行政や民間事業者及び資金提供者等が連携して、社会問題の解決を目指す「ソーシャルインパクトボンド」を活用し、人口減少など市の抱える課題解決に取り組んでいることを紹介した。
参加者は他のグループ発表時には参考になる意見を吸収しようと真剣な眼差しで聞き入っていた。
本セッションのファシリテーターをつとめた一般社団法人CSOネットワーク事務局長/理事の黒田かをり氏は、「課題に対する具体的な解決策がいくつも出され、出席された皆さんも共創することの意義を実感いただけたと思う。ぜひ、職場に戻って実際に取り組んでいただければ」と総括した。
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