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ネスレ日本が積極的にシニア世代の採用を始めた理由

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ネスレ日本はこのほど、60歳以上のシニア世代を対象とした「シニアスペシャリスト」の採用を開始した。働く意欲が高く、経験や専門知識が豊富な人材を通年募集する。日本ではここにきて高齢者を活用する機運が高まっているが、ネスレ日本の狙いは何なのか。同社メディアリレーションズ室の細川得央室長に聞いた。(オルタナ編集部=沖本啓一)

ネスレ日本が募集を開始した職種は、一般事務職、営業職、マーチャンダイザー(商品計画の管理など)、工場の製造オペレーターやエンジニア、その他の間接部門と幅広い。その応募資格は「60歳以上で過去に募集関連職種の経験があること(その他、工場では各種資格取得者も募集)」。学歴などを求めない、完全な即戦力の採用募集だが、なぜ「60歳以上」なのだろうか。

「定年退職を迎えても、心身ともに健康なアクティブシニアの方は現在でも多く、高齢化社会を迎え今後も更に増えていきます。一方でそのような方が働く場所は限られます」こう話すのはネスレ日本のメディアリレーションズ室の細川得央室長。

実は、ネスレ日本は成長戦略の一つとして「ダイバーシティ」を大きく掲げている。2016年にはトムソン・ロイター ダイバーシティ&インクルージョン インデックスがネスレを「世界で最もダイバーシティが進んだ食品企業」として評価している。

今回の採用にあたっても「性別、国籍、年齢、障がいの有無、ライフステージ(育児や介護)などにかかわらず、様々な個性を持つ社員が集まった組織こそが新しい発想やイノベーションを生むと考えている」と発表した。

「定年後でも、働きたい方に生き甲斐や、やり甲斐を持っていただけること。そして、そのような人材が入ることによって、若い層にも刺激を与え、組織が健全に活性化することも重要なのです」と細川室長は説明する。「ネスレ内のノウハウだけでは対応ができないことにも、他社で長い経験がある方なら対応できます。社内に、客観的で新しい風を吹かせて頂けることは当社にとっても大きな意味があります」(細川氏)

活躍の場を求めるアクティブシニアのニーズに応えるだけではなく、企業とアクティブシニアの双方向にメリットがあるダイバーシティ推進。これこそがネスレ日本が「積極的に」シニア採用に動いた理由だろう。

人生100年時代を生き残る企業の姿勢

「高齢化社会」「シニア採用」と言えば、リンダ・グラットン氏の著書『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』で有名になった「人生100年時代」という言葉が想起される。人間の寿命が100歳になった時代に、どのように人生を設計するべきか。政府の「人生100年時代構想会議」は昨年12月、4回目の開催を終え、その中間発表が公開されている。

「教育・仕事・老後」というこれまでの単線形の人生設計は通用しなくなり、人はマルチステージの人生を送るようになる。特に生涯にわたる学習が重要で、地域コミュニティ活動などにも積極的に関わることも個人の人生や社会を豊かにする、と報告では言及されている。政府の方針では、いつでも学びなおし(リカレント)ができる教育機関の体制を特に重要項目として取り上げている。

100年時代の人生設計と言っても、個人の思考の切り替えだけでは、同じ社会の中で生き方を大きく変えることはできないだろう。社会も時代に対応しなければならない。それは地域コミュニティや教育機関だけではなく、企業も同様だ。

単に「老人が増えるから雇用しよう」というような一方通行の取り組みでは、どこかで歪みが現れ、長続きしない。変わっていく「個人」の生き方に対応し、それを受け入れるだけでなく、豊かな人材として企業の中で役割を持ってもらい、自社の風土に「新しい風を入れて頂く」。ネスレ日本の取り組みの根幹には、人生100年時代を人や社会と共に生き抜く企業の姿勢が見える。

サステナブル・ブランド 国際会議 2018 東京で「ネスレスペシャルトラックCSVアイデアソン」を開催

ネスレ日本は2018年3月2日、サステナブル・ブランド 国際会議 2018 東京で特別プログラム「ネスレスペシャルトラックCSVアイデアソン」を開催する。アイデアソンは「人生100年時代のGood life」をテーマに2部構成で行われ、前半は「高齢化社会に向けての取組み」、後半は「持続可能な社会を担う子どもたちの健康づくり」について考える。
イベント詳細はこちら

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

オルタナ編集部
好きな食べ物は鯖の味噌煮。