
スポーツ・アウトドアブランドを手掛けるゴールドウインは、自社ブランド「Goldwin(ゴールドウイン)」で、役目を終えたウエアをリペアやアップサイクルによって再生する循環型プロジェクト「サーキュラーアクション」を始動した。第1弾として、同社がユニフォームを提供してきたフリースタイルスキー・モーグル日本代表チームの着用品を回収し、再生した「アップサイクルプロダクト」を10月15日から販売。デジタルプロダクトパスポート(DPP)を導入し、売り上げの一部は公益財団法人全日本スキー・スノーボード連盟に寄付する。14日に都内で開かれた発表会には同代表の堀島行真選手も登壇し、「環境負荷の低減とアスリート支援の両方を目指す取り組みとして、多くの方に知っていただきたい」と語り、プロジェクトへの期待を示した。
「10年前には考えられなかった」雪不足の現実
「10年前、20年前なら考えられなかった。企業や個人の環境への取り組みは、雪を守るという意味でも、非常に大事なアクションだ」。発表会のトークセッションに登壇した堀島選手は、気候変動が競技環境に及ぼす影響を語った。
2025-26シーズンには、米ユタ州ディアバレーで2026年1月に予定されていたワールドカップが、積雪不足や高温の影響で開催地の変更を余儀なくされた。移転先のウォータービルバレーでも、濃霧によって1試合が中止となり、翌日の競技形式が変更された。
スキーを起源に雪とともに歩んできたゴールドウインにとって、ウィンタースポーツを取り巻く環境変化は事業の根幹に関わる。サーキュラーアクション始動の背景には、そうした危機感があった。
廃棄ゼロと「リマニュファクチャー」
同社は2024年、「人を挑戦に導き、人と自然の可能性をひろげる」という新たなパーパスを策定した。ステークホルダーをNature(自然)、People We Inspire(価値の提供先)、Co-Creators(価値を協創する仲間)の3軸に整理したサステナビリティ方針「Goldwin Regenerative Journey」を定め、2030年に自社の廃棄ゼロ、2050年にはサプライチェーンを含む廃棄ゼロを目標に掲げる。

ゴールドウイン事業本部ゴールドウインマーケティング部長の蓑輪光浩氏は発表会で、サーキュラーアクションを循環経済の階層構造の中に位置付けて説明した。「リサイクルは実は環境負荷が高い。いったんどこかへ持ち込み、回収し、運び、洗い、選別して、また何かを作る。その工程が環境負荷を高めてしまう」。サーマルリカバリー(熱回収)についても、「諸外国では、燃やしている以上サーキュラーとは言えないのではないかという見方もある」と指摘した。
その上で、既存の製品に新たな機能を与えてよみがえらせる「リマニュファクチャー」として、今回のプロジェクトを位置付けた。
「捨てられない」ユニフォームをプロダクトに
ゴールドウインは2018-19シーズン以降、フリースタイルスキー日本代表のモーグル、スキークロス、エアリアルのユニフォームを提供してきた。サーキュラーアクションの第1弾では、モーグル代表の選手が大会や練習で実際に着用したユニフォーム約20点を回収し、トートバッグやサコッシュなど7種類に再生した。価格は4950円~2万4200円(税込み)で、10月25日まで東京・神田の店舗「GRAVITY KANDA」で販売する。ウエア本体だけでなくフードや各パーツも可能な限り生かす設計とし、全て「一点もの」だ。
スポーツアパレル業界では、プロ野球やJクラブで選手着用品のアップサイクル事例があるが、日本代表のユニフォームを対象とした体系的な取り組みは珍しい。

今回のプロジェクトは、選手側の切実な事情にも応えるものだった。蓑輪氏は「選手は大会のオフィシャルウエアなど、非常にたくさんのものを受け取っている。全部を自宅で保管することはできず、フリマアプリにも出しづらい。古着として譲る文化はあるが、限界がある」と語る。
堀島選手も支給されたユニフォームを捨てるに捨てられず、「8年分のウエアがたまっていた」と振り返る。売り上げの一部は全日本スキー・スノーボード連盟に寄付され、アスリートの活動支援に充てられる。モノと資金の双方がアスリートと企業の間で巡る循環モデルだ。
DPPで来歴とCO2を可視化
今回の製品には、タグの2次元バーコードから、アップサイクル前の製品情報や着用したアスリート、CO2排出量、ケア方法などを確認できるDPPを導入した。欧州では繊維製品を対象に2028年をめどに義務化される見通しで、ゴールドウインは欧州市場でも事業を展開していることから、対応を進めているという。
同社はCYKLUSとNTTドコモビジネスがアパレル分野で進めるDPP活用の共同実証に参画しており、Jリーグ・カターレ富山のユニフォームや、11月に開催される富山マラソン参加者向けのウエアでもDPPを実装する。

同社は今後、モーグル代表以外の選手にも対象を広げる考えだ。将来的には一般顧客の製品を対象としたアップサイクルへの拡大も視野に入れる。
選手支援、サステナビリティ、DPPによる情報の透明化を一つのプロダクトに束ねた今回の試みは、スポーツ用品メーカーが競技と気候変動の双方に向き合う一つのモデルを示した。一方で、第1弾の販売数は約70点にとどまる。収益性と拡張性の両立、そして一般顧客を巻き込んだ循環へ、どう歩みを広げていくのか。今後の展開が注目される。
眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。










