Sponsored by 三井化学株式会社

温室効果ガス(GHG)排出量削減や資源循環は、いまや企業価値を左右する経営課題だ。プラスチックを巡っては、これまで埋め立てや焼却処理されてきた廃棄物のリサイクルを促進し、再生プラスチックを積極活用する動きが本格化しつつある。欧州のPPWR(包装・包装廃棄物規則)やELV規則(使用済み自動車管理規則)をはじめ、国内外で関連法規制の整備も加速しており、プラスチックリサイクルへの対応は持続可能なビジネスモデルの構築において避けて通れないテーマとなっている。
しかし各企業とも、循環経済への移行期にある今、最適解を模索している段階にある。そうした中、三井化学はこのほど「“素材×循環”で描く、持続可能なビジネスモデルとは?先進企業に学ぶ、プラスチックリサイクルの最前線」と題したイベントを都内で開催。アシックス、キッコーマン、ローソン、三井化学の担当者が登壇し、各社の取り組みと循環経済への展望を共有した。イベントの様子を詳報する。
アシックス:環境性能と機能性を両立したシューズ開発
アシックス スポーツ工学研究所 材料研究部 材料機能研究チーム マネジャー 山出貴士氏
アシックスの山出貴士氏は、リサイクル可能なランニングシューズ「NIMBUS MIRAI(ニンバス ミライ)」など、同社の製品開発やサステナビリティの取り組みを紹介した。

同社は「健全な身体と健全な精神のためには、健全な地球が必要だ」という考えのもと、サステナビリティ戦略を「People(人と社会への貢献)」と「Planet(環境への配慮)」の2軸で構成。その背景には、熱中症によるアスリートの棄権や屋外活動の制限など、気候変動がスポーツの現場に与える影響がある。
特に重点を置いているのは、GHG排出量削減に寄与する環境配慮と優れた性能を両立する、高品質な製品開発だ。スポーツ工学研究所では環境工学・環境化学も重要な専門領域として位置付け、多様な学問分野を融合させることで、人間の心身の健康と地球環境の両方を考慮した製品開発を進めているという。
具体的な製品事例として紹介されたNIMBUS MIRAIは、①加熱処理でアッパーとソールを容易に分離できる「易解体性接着剤」、②アッパー全体を100%ポリエステルで構成した「モノマテリアル化」、③シューズ内部のQRコードと連動し世界8カ国で展開する「回収スキーム」の3つの革新によってリサイクルを可能にした。第三者機関によるカーボンフットプリント評価では、1足当たりGHG排出量6.1kgと業界平均比約57%の削減を達成している。
山出氏は「機能性は絶対に妥協しない。そのことが消費者の信頼にもつながると思う。サステナビリティは単なる製品ではなく、企業としての姿勢だ。こういった取り組みは、競争ではなく共創によって初めて実現できる」と訴えた。
キッコーマン:食品容器包装における「プラスチックとのつき合い方」
キッコーマンビジネスサービス 購買部 容器包装 プロフェッショナル 桑垣傳美氏
キッコーマンの桑垣傳美氏は、食品メーカーとしての容器包装の現実と、ケミカルリサイクルによるプラスチック資源化への挑戦を語った。

「これらの商品の容器包装で、プラスチックを使っていないものはどれでしょうか?」。冒頭、桑垣氏はそのように会場に問いかけ、しょうゆ、食品、飲料など7種類の商品を示した。答えは全て「使っている」。⾷品などの容器‧包装には、内容物の品質を保持し、お客さまに安全・安心に商品を届けるため、バリア性、密封性、耐熱・耐寒性、保香性など、さまざまな機能が求められる。こうした機能をもたせるため、プラスチックは欠かせない素材であり、食品パッケージには異なる種類のプラスチックを重ねて多層にしたものや、アルミや紙など他素材と組み合わせた「複合材」として使用されている。ただ、この複合材こそが、リサイクルを妨げる要因の一つでもある。だからこそ桑垣氏は「プラスチックといかにうまくつき合うか」を基本方針として考え続けている。
桑垣氏はしょうゆの鮮度保持容器の進化も紹介した。2010年には酸素を遮断するフィルムと逆止弁を用いたスタンディングパウチを採用。2011年にはポリエチレン製二重構造容器、2018年にはマテリアルリサイクルが可能なPET製二重構造容器へと刷新してきた。二重容器では、内容物の減少に応じてボトル内袋が収縮し、しょうゆと空気の接触を防ぐことで、開栓後の鮮度保持を実現している。
サステナブル素材の使用に関する具体的な取り組みとして、桑垣氏は三井化学グループと連携して進めているケミカルリサイクルのスキームを紹介。これは、兵庫県高砂市のキッコーマン高砂工場から排出されるストレッチフィルム、ボトル、キャップなどのオレフィン系の廃プラスチックを、岡山県にあるCFPのケミカルリサイクル(油化)設備に送り、生成された熱分解油(廃プラ分解油)を三井化学が引き取り、プライムポリマーが樹脂化。この再生プラスチックを加工メーカーが再び新しいキャップやフィルムとして成形するという循環スキームだ。すでに、この連携体制の下、2025年10月から廃プラスチックを「油化」する新たな取り組みを開始しており、ケミカルリサイクルされた再生プラスチックをキッコーマングループの容器包装資材として活用する検討を進めている。

桑垣氏は「安全性の確保とコストを両立しながら、いかにこれを実現するかが課題だが、このコストに対する考え方を、社内はもちろん、社外でも醸成していくことが今後の私の仕事になる」と力を込めた。
ローソン:業界初のバイオ&サーキュラーレジ袋
ローソン 商品本部 商品サポート部 緒方智希夫氏
ローソンの緒方智希夫氏は、コンビニエンスストアとしての環境対応の独自性と、マスバランス方式※1を活用したバイオ&サーキュラー100%レジ袋※2の取り組みを紹介した。

ローソングループは長期的な環境ビジョン「Lawson Blue Challenge 2050!」のもと、1店舗当たりのCO2排出量を2013年比で2030年に50%、2050年には100%削減する目標を掲げている。容器包装プラスチックの使用量については、2030年までに2017年比30%削減、2050年にはオリジナル商品の容器包装100%を環境配慮型素材とすることを目指している。プラスチック製レジ袋については2030年までに100%削減を目指す方針だ。
こうした目標達成に向けた先行事例として、三井化学グループとの連携で実現させた環境配慮素材を100%使用した「バイオ&サーキュラー100%レジ袋」を紹介。これはマスバランス方式によって割り当てられたバイオマス特性・リサイクル特性を持つポリエチレンを主原料として100%使用したレジ袋で、国内初かつ業界初の取り組みとして注目を集めた。

緒方氏によると、ナチュラルローソンでのレジ袋辞退率は約9割(2024年10月時点)と、コンビニ3社の平均(約75%)を大幅に上回る。プラスチック対策の次のステップとして、2025年下期からカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの両軸で現行のバイオマス配合素材からさらに環境配慮型の素材検討を行い、2026年1月から「バイオ&サーキュラー100%レジ袋」を一部の店舗で導入し、今後ナチュラルローソン全店への導入拡大を計画している。
緒方氏は「マスバランス方式の認知度は世間ではまだ低いが、ペットボトルのリサイクルがいつの間にか当たり前になったように、マスバランス方式もいずれ自然な流れになる可能性があると考えている。いろんなことにトライしながら、その流れに乗っていきたい」と期待を込めた。
※1 マスバランス方式とは、製品を作る際の一つの手法で、原料を加工して製造する過程において、ある特性を持つ原料が混合される場合に、その原料の投入量に応じて、製造されたものの一部にその特性を割り当てる方式。
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/massbalance/
※2 バイオ&サーキュラー レジ袋プロジェクト
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/case/lawson/
三井化学:マテリアルリサイクルでの技術革新
三井化学 グリーンケミカル事業推進室 マテリアルリサイクルグループリーダー 沼野貢治氏
三井化学の沼野貢治氏は、マテリアルリサイクルの社会実装に向け、同社が2023年に開設した浜松実証実験場※3で進めている品質向上技術の開発状況や、関連法規制の動向などを紹介した。

プラスチック循環利用協会によると、2024年に日本国内で排出された廃プラスチックのうち、180万トンはマテリアルリサイクルされているものの、その利用先の内訳をみると、国内循環利用(再生製品・再生繊維の合計)は69万トンにとどまり、残りは輸出されている。その要因の一つとして、マテリアルリサイクルされた再生プラスチックが、まだ国内市場の品質要求に十分に応えられていないことが挙げられる。つまり、マテリアルリサイクルの社会実装を促進させるためには、あらゆる産業で「使えるレベル」にまで再生材を品質向上させる技術開発を加速させる必要がある。
こうした課題を解決すべく、三井化学は静岡県浜松市に実証実験場を設置し、品質向上技術の開発と検証を推進している。ここではマテリアルリサイクルの検証に必要な設備⼀式に加え、国内でも保有者が少ない⾼度選別⼯程設備を導⼊。回収品に合わせ、少量から最適なリサイクルプロセスを実証できるオープンラボとして、顧客と共にマテリアルリサイクルの検討を重ねている。
その中で、沼野氏は、三井化学が開発している特徴的な技術として「粘度均一化プロセス」、「臭気不純物低減プロセス」を紹介。粘度均一化プロセスは、これまでマテリアルリサイクルの再生プラスチックの多くは粘度が不均一で、加工時の歩留まりの悪化や、限られた用途にしか展開できないという課題を解決するもの。具体的には、廃プラスチックの粘度をリアルタイムで計測できるインライン粘度計と、リサイクルプラスチックの粘度を制御する技術を開発し、粘度を一定にしながら、廃プラスチック含有量も一定に制御した再生プラスチックを得ることを可能にする。
また、廃プラスチックには使用時や回収時ににおい成分が含浸し、独特なにおいがする場合があり、それがリサイクルプラスチックの用途展開を狭めている側面がある。その課題解決に向け、三井化学が開発しているのが、臭気不純物低減プロセスだ。これは、廃プラスチックのにおい成分を除去するため、注水脱揮を複数回実施できる2軸押出機を採用し、検証を重ねている。沼野氏は「これらの技術開発により、マテリアルリサイクルの品質課題を克服し、より高付加価値な分野へと展開していく」と語った。
一方、規制の観点では今後、国内は再生材利用計画の提出と定期報告が法的に義務付けられ、EUのPPWRでは2030年以降のプラスチック包装における再生材使用が義務化される。欧州ELV規制でも2032年から自動車材料への再生材含有率が定められる見通しだ。沼野氏は「技術を確立するだけでは不十分。他社と共創しながら、再生材の価値を高めていく取り組みが必要だ。自動車業界のみならず、包装業界、あるいは家電業界などに再生材のチェーンをつなげていければ」と強調した。
※3 【三井化学】浜松メカニカルリサイクル(マテリアルリサイクル)実証設備紹介 https://youtu.be/1KK4aqwz50w
三井化学:ケミカルリサイクルが切りひらく、新たなビジネスモデル
三井化学 グリーンケミカル事業推進室 バイオ・ケミカルリサイクルグループリーダー 河村憲守氏
同じく三井化学の河村憲守氏は、ケミカルリサイクルの最新動向や素材産業に求められる役割転換などについて解説した。

河村氏はまず、素材産業に迫られている本質的な変化を問いかけた。「持続可能性はコストか、成長機会か」「なぜ環境対応は負担として語られがちなのか」——。これらの問いを通じて、「素材メーカーはもはや物性ではなく、循環性能を売る時代に入った」と指摘。良い素材を安く大量に供給するという従来モデルから、循環を前提として素材を設計し、回収・再資源化までを新たな価値として提供するモデルへの転換が求められているという。
欧州ではPPWR・ELV規制・SUPD(使い捨てプラスチック指令)のいずれにおいてもマスバランス方式が事実上の前提技術となりつつあるといい、日本でも2026年からのGX-ETS(排出量取引制度)によってCO2がコスト化する局面を迎える。河村氏は「もはや『やるかどうか』ではなく、『どう設計するか』の段階だ。そうしないと立ち遅れるという危機感を持っている」と警鐘を鳴らした。
三井化学のケミカルリサイクルの取り組みとしては、廃プラ分解油によるケミカルリサイクル製品を製造開始(2024年3月)し、包装用途を中心に複数の案件で採用が始まっていることを紹介。キッコーマンとの連携や、ローソンとのバイオ&サーキュラー レジ袋プロジェクトも、こうしたバリューチェーン全体を巻き込んだ連携の実践例だ。また、ケミカルリサイクルのさらなる規模拡大に向け、リファイナリーである太陽石油との協業検討なども推進している。

河村氏はケミカルリサイクルの強みとして「品質劣化を回避できること」「食品包装や自動車内外装といった高要求用途に対応できること」を挙げ、「ケミカルリサイクルは循環設計の⼀部であり、循環を成⽴させる “現実解”」であると語った。そして「循環は“技術課題”ではなく“経営課題”。循環を“後工程”として扱うのではなく、“最初の設計条件”に組み込まなければならない」と締めくくった。
クロストーク:社会実装に向けた壁を“共創”でいかに乗り越えるか
後半のクロストークには、前半に事例報告した5氏に加え、三井化学グリーンケミカル事業推進室ビジネス・ディベロップメントグループ事業開発推進リーダーの油井賢司氏が登壇。各社が共通して直面するコストの壁と、それを乗り越えるための「共創」というテーマが中心となった。モデレーターは、メンバーズ執行役員脱炭素DX研究所の原裕氏が務めた。

環境対応はコストか、成長機会か——。この問いかけについて、アシックスの山出氏は「成長機会であることは社員の共通理解だが、足元には利益圧力がある。だから、お客さまにとって何が一番価値があるのかを前面に出す。シューズで言えば機能性。そこを入り口にし、“+α”の付加価値としてサステナブルであることを示すという提案が有効ではないか」と答えた。
キッコーマンの桑垣氏は「社内の多くは『やらなければならない』という認識はある」とした上で、「容器代にコスト増を乗せる難しさが現実としてあり、できるところからコツコツと採用事例を積み上げていく」と続けた。ローソンの緒方氏は「石油由来プラスチック製レジ袋の廃止という明確な目標があるため、環境配慮商品へのコスト増も目標と合致しやすい。ただし、レギュラーローソンへの展開は地域の受容度を見極める必要がある」と述べた。
会場からは、欧州のEPR(拡大生産者責任)を引き合いに、「環境コストの価格転嫁を前提とする社会規範が形成されないと、事業者だけが苦労を続ける状況は変わらない」という指摘も上がった。三井化学の油井氏はこれに対し、「環境対応を実施し対外訴求することは、ブランド毀損(きそん)やレピュテーションリスクを回避するのみならず、ブランド・企業価値向上に資する取り組みになり得る。それを“コスト”ではなく“投資“と位置付けることで、経営的な正当性を持ちやすくなる」と語り、「素材メーカーとしても、単にモノを提供するだけでなく、環境価値をストーリーとして消費者に届ける支援をしていきたい」と応じた。

廃プラスチックの回収効率やコストという共通課題に対しては、競合他社間での回収スキームの共有も選択肢として挙げられた。キッコーマンの桑垣氏は「(油化装置のある)CFPへの輸送を一緒にできる仲間が集まれば輸送コストの圧縮や効率化につながる」と提案し、アシックスの山出氏もヨーロッパでの実例として「他ブランドの実績も豊富なリサイクルパートナーを活用している」と紹介。ローソンの緒方氏は「店舗からの回収はコンビニ業態の構造上、なかなか難しい。回収よりもまずプラスチックの使用量を減らすことに重心を置いている」と自社のスタンスを説明した。
今後の展望として、アシックスは2050年CO2排出量ネットゼロを見据え、サステナブル商品の開発を継続し続ける方針だ。キッコーマンは工場廃棄物(PIR材:Post-Industrial Recycled材)のリサイクルにとどまらず、消費者が使用した容器(PCR材:Post-Consumer Recycled材)の安全なリサイクルへの展開という「夢」を桑垣氏が語った。ローソンは三井化学グループとの連携によるバイオ&サーキュラーレジ袋を足がかりに、2050年までに全オリジナル商品の容器包装を環境配慮型素材へ転換していく計画を進める。
循環は「後工程」ではなく「最初の設計条件」
業種も商材も異なる4社が今回浮き彫りにしたのは、「プラスチックとどうつき合うか」という問いへの、それぞれの現実解だった。リサイクルすることを前提に、化学的アプローチでシューズを簡単に解体・分別可能にするアシックス、廃プラスチックを油化して容器材料として循環させることに挑戦しているキッコーマン、日本初・業界初のバイオ&サーキュラーレジ袋を導入したローソン、素材のバイオマス化に加えマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルを組み合わせながらプラスチックの循環を促進している三井化学。いずれも「完成形」ではなく、地道な積み上げの途上にある。

河村氏が語った「循環は後工程ではなく最初の設計条件」という言葉は、今後の製品開発・調達・廃棄の在り方を根本から問い直すものだ。コストや規制の「圧力」が高まる中、プラスチックリサイクルを推し進め、循環経済を実現するには、業界の垣根を超えた共創が不可欠となる。今回のセッションは、その実践の場になったのではないだろうか。
| 三井化学では、「世界を素(もと)から変えていく」というスローガンのもと、バイオマスでカーボンニュートラルを目指す「BePLAYER®」、リサイクルでサーキュラーエコノミーを目指す「RePLAYER®」という取り組みを推進し、リジェネラティブ(再生的)な社会の実現を目指しています。 BePLAYER®、RePLAYER® https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/index.htm 素材に〇〇な情報メディア「素素–SOSO–」 https://jp.mitsuichemicals.com/jp/sustainability/beplayer-replayer/soso/ |
眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。












