• 公開日:2026.02.20
【開催報告】SB’26 東京・丸の内「Adapt & Accelerate」を掲げ、サステナビリティ経営の実装を加速させた2日間
  • 横田 伸治

2月18日・19日の2日間、「サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内(SB’26 東京・丸の内)」が東京国際フォーラムで開催された。

日本開催10周年の節目となる今回のテーマは「Adapt and Accelerate(適応し、加速する)」。気候変動や地政学リスク、人的資本経営など、企業を取り巻く環境が激変する中、単なる「適応」を超え、サステナビリティ経営への変革をいかに「加速」させるか。会場には、その問いに挑む国内外のブランドリーダー、CSR担当者、マーケター、そして次世代を担う学生などが集結。2日間にわたり、立場の垣根を超えた議論と共創が繰り広げられた。

歌舞伎の「荒事」で社会課題を飲み干す

中村橋吾氏

1日目のオープニング会場に突然、低い太鼓の音が響き渡った。10周年の幕開けを飾るサプライズとして登場したのは、「社会問題に挑む歌舞伎者」こと、歌舞伎役者の中村橋吾氏だ。

披露されたのは、本会議のために練り上げられた口上と、独自の創作歌舞伎。中村氏は、世にはびこる社会課題を「災い・厄災」に見立て、それを真っ赤な大盃に封じ込め、豪快に飲み干してみせるという「荒事」を演じた。「歌舞伎の赤は魔を払うもの。そして血であり、肉であり、エネルギーでございます」――。中村氏が放つ圧倒的な迫力に、会場の空気は一変。参加者全員が一体となる熱気に包まれ、イベントはスタートした。

日本がリーダーとなるために、この場から始める

中村氏によるエネルギーの注入を受け、SB Japan総責任者の田中信康・Sinc代表取締役社長 兼 CEOが登壇した。過去の歩みを振り返りつつ、「私たちは10年間、サステナビリティの企業価値への接続を問い続けました。そして改めて、サステナビリティはブランドの持続的成長のための戦略そのものだと確信しています」と強調。米国をはじめとするサステナビリティへの逆風を踏まえ、「これは後退ではありません。世界はまさにその実効性と成長性を問うフェーズに移行しているのです」と今年のテーマである「Adapt & Accelerate」の意義を訴えた。

田中信康・SB Japan総責任者

また、SDGsのゴールである2030年まで残り5年を切ったことに触れ、「これまで以上のペースで取り組まなければ間に合わない」と危機感をにじませつつも、会場に集まった参加者へ向けて、「未来を作るのは私たちと、ここにいる皆さん。ぜひ、皆さんのインテリジェンスと熱いパワーを共創につなげ、この場からの発信をしていきましょう」と呼びかけた。

2日目のオープニングには、サステナブル・ブランドの創設者コーアン・スカジニア氏がビデオメッセージで登場。やはり国際情勢の懸念を念頭に置きつつ、「日本はサステナビリティにおいて世界をリードする存在になってほしい」と願いを込めた。

変革を促すリーダーたちの「Adapt and Accelerate」

こうしたメッセージに呼応するように、基調講演(プレナリー)では各界のトップランナーたちがそれぞれの「Adapt and Accelerate」を披露した。アシックスの廣田康人代表取締役会長CEOは、「気候変動によりスポーツができなくなることは、スポーツシューズを展開するアシックスにとっては致命的。産業を守っていくために、地球環境を守ることは経営の責務だ」と決意を述べた。

また、グローバルな視点からは、Flag のヴィクトリア・テイラーCEOが欧米の最新トレンドとブランドコミュニケーションの進化を、LIXILのジン・ソン・モンテサーノ取締役 代表執行役専務CPO(Chief People Officer)が衛生課題解決を通じた社会的インパクトとビジネス成長の連動性を示唆。参加者たちは、世界基準の潮流と日本企業の課題感を重ねながら耳を傾けていた。

講演だけでなく、登壇者同士、あるいは会場全体を巻き込んだ「対話」も随所に見られた。

1日目プレナリーのパネルディスカッションでは、花王の大谷純子・ESG部門執行役員と、オリオンビールの齋藤伸太郎・コーポレートバリュー・クリエーション部長が登壇。生活密着と地域密着という立場から、変革をリードする苦悩とやりがいを共有し合った。

また、人権を巡る複合的なテーマについても議論された。2日目プレナリーでは、Haluの松本友理代表取締役が障がいとマイノリティを起点に、インクルーシブ社会の実現とそのビジネス的価値について提言。またウェルビーイングとテクノロジーの在り方については、「プルラリティ(Plurality・多元性)」をキーワードに、LGBT当事者・大手金融会社・研究者らが垣根を超えて意見を交わした。

会場を移した両日のブレイクアウトセッションでも、その熱量は変わらない。テーマはサプライチェーンや循環経済、サステナブル認証、教育など多岐にわたり、一部のセッションは立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。具体的な事例共有にとどまらず、「自社ならどうするか」を問う質疑応答が飛び交い、終了後も登壇者を囲む輪が絶えなかった。

世代を超えた「共創」の実験場

展示・ネットワーキングエリア「Activation Hub」も、2日間を通じて活気にあふれた。企業が出展したブース周辺では絶えず新たな出会いが生まれ、ヘラルボニーやSincによるワークショップでは、初対面の参加者同士が深い議論を交わす姿が見られた。

1日目夜のネットワーキング・レセプションや、2日目夜のテーマ別ネットワーキング「Birds of a Feather」では、フードやドリンクを片手に、企業同士が課題を共有し合う光景も。SBが目指すコミュニティの姿が随所に見られた。

そして、SBの象徴とも言える「次世代」も存在感を示した。 SBのユースコミュニティ「nest」は年間の活動内容を披露したほか、2026年度の第5期メンバー募集開始を宣言。全国から選抜された高校生によるプログラム「Student Ambassador」では、高校生らが企業担当者に鋭い質問を投げかけ、企業側が彼らの柔軟な発想に刺激を受けるシーンも。会場の至る所で生まれた化学反応は、サステナビリティが一部の専門家だけのものではなく、全世代で取り組むべき課題であることを改めて印象付けた。

「Adapt & Accelerate」。その言葉通り、SB’26 東京・丸の内は、日本のサステナビリティ・コミュニティが「実践」と「加速」のフェーズへ大きく舵を切ったことを証明する場となった。

written by

横田 伸治(よこた・しんじ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者

東京都練馬区出身。毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバ職員を経て、現職。 関心領域は子どもの権利、若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりなど。

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