• 公開日:2025.12.26
SB-J エディターズ・ストーリー
【編集局コラム】米国の大学に入って気付いた、日本の「当たり前」と強み 
  • 山口 笑愛

取材現場で心を動かされた言葉、記事にはならなかった小さな発見、そして、日常の中でふと感じたサステナビリティのヒント。本コラムでは、編集局メンバーの目を通したそんな「ストーリー」を、少し肩の力を抜いて、ゆるやかにつづっていきます。  

今回の担当は山口です。 

ミネルバ大学とは? 

私は、ミネルバ大学という米国を拠点とする大学に在籍しています。今回はそこで学んだ、これまで目を向けていなかった日本の「当たり前」やサステナビリティに関わる社会問題について書いてみます。 

現在、私の学年のほぼ全員が東京に暮らしています。その理由は、ミネルバ大学が「旅をしながら学ぶ」大学だからです。 

大学が持つのは寮のみ。キャンパスは存在せず、授業は全てオンラインで行われます。大学の寮は世界複数の地域に散らばっているため、学生は4年の間に、アメリカ、日本、アルゼンチン、ドイツなどの4大陸を巡りながら学びを深めていきます。 

授業もとてもユニークで、先生が授業時間中の1割ほどしかしゃべらない「ディスカッションベース」という形をとっていたり、授業での発言が成績の一部になったりと、「意見をいかに、効果的に伝えるか」を重視したカリキュラムになっています。また、現地の街や企業と協力した地域ベースの課題(Location Based Assignments)もあり、住んでいる地域を活用して学ぶ、オンラインベースとは思えないほどの知識量とクオリティを日々感じています。 

ミネルバ、日本1期生 

そんなミネルバ大学が日本に拠点を追加したのは今年が初めて。私たちは「日本1期生」として、9月から東京に滞在しています。 

学期初めのオリエンテーションでは、日本に伝わる「縁」や「自然とともに生きる」というマインドセットについて学んだり、書道家の方に書き初めを披露していただいたりと、日本の文化を深く感じられる濃密な時間を過ごしました。 
 

オリエンテーションでの習字パフォーマンス 


また授業でも、「JSCC (Japanese Society and Culture Course)」という日本の社会と文化について学ぶ必須科目があります。そこでは、日本が対峙(たいじ)する社会問題の「人口減少」「自然災害」「食とサステナビリティ」という3つのテーマに分かれ、4カ月にわたり授業や課外学習を通して深堀りをしました。最終的には、学びから導いた解決案をグループごとにまとめ、それらを地域団体や企業の方々に発表させていただきました。 

日本で普段は得られない経験 

日本人として、自分が生まれ育った国の文化や社会問題について客観的に学ぶのはすごく新鮮でした。 

まず、さまざまな国の学生たちと日本で生活する中で感じた、「当たり前」のギャップ。 

「なんで住宅街の真ん中に神社があるの?」「コンビニ多過ぎない?」と、自分にはなじみ過ぎていて気付かなかった問いを投げられることもよくあります。そんな時に、パッと答えられない自分に気付き、「ああ、日本について、思ったより知らなかったんだ」と常日頃から思い知らされています。 

また、JSCCの授業では、人口減少のリサーチとして兵庫県姫路市に校外学習へ行きました。家島という島にある、全校児童25人の小学校にお邪魔したり、地域おこし協力隊や行政の方々に直接インタビューをさせていただいたりと、日本で普段暮らしていてもなかなか得られない学びを経験しました。 

家島(兵庫県姫路市)の風景

違いはたくさん。でもどこかでつながっている 

 約4カ月間、仲間と日本で暮らして感じるのは、違いはあれど存在する各国との「共通点」。 

例えば人口減少について、出身国から他の先進国に働きに出るシチュエーションに置き換えて考えるカンボジア人の友達。また、「ここで得た学びを自分の国に生かしたい」と振り返りで語った韓国人の学生など、それぞれが自分のバックグラウンドに照らし合わせて学びを深めていく様子がとても印象的でした。 

そんな中で、この4カ月で私が改めて感じた日本「ならでは」の強みは、ホスピタリティと敬意だと感じます。 

ベタな回答ですが、常に期待以上のサポートをしてくださった日本のミネルバチームの皆さんや、私たちの滞在を歓迎してくださった姫路市の方々を思うと、「日本は、人をハッピーにする力を持った人々があふれている国だな」と思います。 

私もこれから、どの国でどんな人に出会おうとも、相手が少しでも幸せやポジティビティ(前向きさ)を感じられる思いやりを持てるように振る舞いたい。そして、そう感じさせてくれた日本の方々にとても感謝しています。 

そしてインド留学へ

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 

最後に、個人的な話になりますが、私は2026年1月からインドへ留学します。 

サステナブル・ブランド ジャパンでは、5月から半年以上、インターンとして学びの多い日々を送らせていただきました。 

自分が読者・参加者側としてサステナビリティに興味を持つきっかけとなったSB-JとSB Student Ambassador(SBSA)で、 実際に記事の執筆やメンターをさせていただいたことは、自分の中でも一つ大きなマイルストーンを達成したような感覚です。初めての経験をさせてくださった温かい環境とSB-Jの方々に、心から感謝しています。 

インターンとしてはこの場を離れることになりますが、インドで身体も心もさらに一段階成長して、いつか恩返しができるように、これからも日本文化やサステナビリティについて深く探求していこうと思います。 

あっという間の7カ月を、本当に、ありがとうございました。 

家島でサイクリングを楽しむ筆者

written by

山口 笑愛(やまぐち・えな)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 インターン

ミネルバ大学在籍中。ユースコミュニティ「nest」に参加したのがきっかけで、高校1年生からSBに関わる。今はファッションと教育を主軸に、商品制作、メディア、イベント企画を通して発信活動中。

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