
世界的な傾向と同様に、ドイツでは太陽光発電が急速に伸び続けている。2024年末、設置容量が100GWを突破した後、2025年も順調だ。一方、日本は地元の反対が目立つようになり、伸びが鈍化している。
本稿では、ドイツの太陽光拡大のポイントともいえる屋根置きに焦点を当て、日本でのヒントを提示したい。
世界の国別太陽光発電の導入容量、ドイツが日本を抜いて4位に躍進
1970年代の「サンシャイン計画」から、長く太陽光発電先進国だった日本だが、その導入容量トータルで、昨年インドとドイツに抜かれて5位に落ちた。現在、導入容量の合計は90GW程度と推定される。
昨年末でちょうど100GWを越えたドイツは、今年になってもさらに拡大を続け、ドイツ連邦ネットワーク庁によると11月中旬現在115GWと、日本との差がさらに拡大している。2024年のドイツでの伸びのけん引役は、野立てのメガソーラーであったが、ここ数年を通してみると、屋根置き、特に住宅用の伸びが大きく貢献している。
下のグラフは、連邦ネットワーク庁のデータに基づき、BSW-Solar(ドイツ太陽光発電協会)がまとめた、設置済み太陽光の分類を示したものである。

ちょうど100GWを越えた時点での各設置場所の割合は、付随するイラストで分かるように、左側の住宅用屋根置きが38GW(つまり38%)、下側の企業向け屋根置きが29%、右の野立てが32%となっている。屋根置きが合計で全体のほぼ7割を占め、残りの3割が野立てという構成である。特に、ロシアのウクライナ侵略から始まったエネルギー費の高騰で電気代に苦しんだ一般家庭が自宅に太陽光発電導入に動いたことが影響している。
ドイツでの割合を見て、そんなものかとお思いかもしれないが、日本の場合はだいぶん様相が違っている。
自然エネルギー財団が2021年に発表した資料「屋根置き太陽光発電の拡大策」によると、屋根置きは、住宅系およそ2割、非住宅系2割の合計4割に対し、野立ては残りの6割と最も多くなっている。ドイツとは、屋根置きと野立てがおおよそ逆転していると言ってよい。
経済産業省が最近よく、日本は平地が少なく太陽光発電の用地を使い尽くしているというデータを公表しているが、屋根置き設置が遅れているというのが実態ではないだろうか。
実際、日本の屋根置きのポテンシャルはまだまだあると考えられていて、この資料の中で、自然エネルギー財団は2035年末までに合計で160GWに達する可能性を示している。
住宅は太陽光発電の宝庫、ドイツで急伸するバルコニー発電
住宅というカテゴリーで考えると、面白いのが、ドイツで今年100万件を突破したバルコニー発電(ドイツ語でBalkonkraftwerke)だ。1件当たりわずか800W程度の小さい容量ではあるが、家庭用のコンセントにつないで電力を利用できる簡便さから、爆発的に拡大している。
前のグラフでは右上段の小さい割合0.7GWがそれに当たるが、太陽光パネルにコンセントがつながったイラストがその性格をよく表している。ドイツは、このシステム、プラグインソーラーの発祥地であり、最も大きなマーケットとなっている。

上図のように、パネルで発電された電力は、マイクロインバーターから家庭のコンセントを通じて、各種の電化製品に送られ利用される。
図の出典となっている「Plug-In Solar PV」では、1軒の家や建物で、バルコニーに限らず、傾斜の強い屋根やファザードなどでの利用例が示されている。都市では再生エネ発電のスペースを取る事が難しく、莫大な需要に対して供給がわずかしか見込めないのが通常で、そのデメリットの解消に一定の役割を果たす可能性も見えてきた。
日本では、屋根置きの太陽光発電についての統計も非常に少なく、脱炭素実現での注目度はあまり高くなかった。しかし、ドイツとの比較を見れば、住宅や都市の建築物でのポテンシャルを生かす必要性を理解すべきと考える。
政府も来年度から、一定のエネルギー消費を行っている企業などに対して、屋根置き設置の目標作りを義務化する方向で進んでいる。屋根置きの最大のネックだった耐荷重の問題に対しては、ペロブスカイト太陽電池の普及が解決の切り札となる可能性も出てきている。
洋上風力の撤退やメガソーラーへの反対など再生エネ停滞に目を取られがちな昨今だが、ビジネスチャンスも含めた新しい可能性の展開にもしっかり期待したい。
| 【参照サイト】 ・自然エネルギー財団「屋根置き太陽光発電の拡大策」 https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/REI_RooftopSolarPV_202409.pdf |














