
誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指す「Tokyo Pride 2025」のプライドパレード&フェスティバルが6月7、8日の2日間、東京・代々木公園を中心に開かれた。「Same Life, Same Rights」(同じ権利が全ての命に)をテーマに掲げ、LGBTQ+当事者やその支援者ら、過去最高の延べ約27万3000人(主催者発表)が参加。パレードでは国内外の企業・団体や若者が共に歩き、多様な性の在り方と平等に生きる権利を力強く訴えた。
自社のDEI施策をアピール

6月はLGBTQ+へ理解を深め、多様性を祝福する「プライド月間」。Tokyo Pride 2025はNPO法人東京レインボープライドの主催で、アジア最大級のLGBTQ+関連イベントだ。
会場の代々木公園イベント広場は、人、人、人で埋まった。国内外の企業・団体、NPOなど計209のブースが並び、自社のDEI施策の展示や法律相談、ワークショップなどを行った。
サントリーホールディングスのブースでは、イベント参加者がさまざまな色のシールにメッセージを記入し、ボードに貼り付けることで虹を作るワークショップが実施された。2回目の出展となるイオンはパネルを掲示し、「同性パートナーについても、法律婚のパートナーと同様に結婚休暇や住宅助成金などの福利厚生が適用される」など、自社の取り組みを紹介。同社の担当者は「LGBTQフレンドリーな企業であることを知ってもらえる良い機会だ」と話した。
若者が問う企業の「本気度」
会場には複数の大学がブースを構え、若者の姿も目立った。これから社会に出る大学生の目には、企業のDEI施策はどのように映っているのだろうか。
筑波大学3年生の学生は「性に関する困りごとはLGBTQ+だけの問題ではない。『男性だから、女性だから』という考え方が生きづらさを生んでいる。相談できる場があれば救われる」と強調。その上で企業に対し「小さな取り組みからで良いので、まずは行動してほしい」と期待を寄せた。
京都の龍谷大学は「人権問題」として性的マイノリティへの取り組みを進めており、Tokyo Pride 2025にも出展した。スタッフとして参加した同大4年生の野村碧海(あみ)さんは、同性カップルの友人がいるといい、「まだまだ社会には性的マイノリティへの偏見がある」と指摘。「同性カップルのパートナーシップ制度や『だれでもトイレ』の整備が進む企業は魅力的で、信頼できる」と話し、企業の「本気度」を注視しているのが伝わってきた。
渋谷・原宿を1万5000人がパレード

6月8日のパレードには企業などから60グループが繰り出し、約1万5000人が参加した。
「わたしたちには平等に生きる権利があるはずだ」「らしく、たのしく、ほこらしく」「多様性が私たちの力」「結婚の自由をすべての人に」
そのようなメッセージが書かれたプラカードを掲げながら、渋谷から原宿にかけて約2kmを行進した。沿道では、LGBTQ+の多様性や誇り(プライド)を象徴する「レインボーフラッグ」が振られ、笑顔でハイタッチ。「ハッピープライド!」の声があちこちで上がり、一帯は虹色に染まった。
パレードに参加した企業関係者も充実感をにじませた。武田薬品工業の女性社員は小学1年生の娘と初参加し、「ダイバーシティに積極的に取り組む会社で働けることが誇らしい。来年も歩きたい」と笑顔。通信関係の企業で働く30代男性は、会社のパソコンに自身が「アライ(Ally)」(LGBTQ+の立場や権利を理解し、支援・共に行動しようとする人)であることを示すステッカーを貼っている。「LGBTQ+の当事者がカミングアウトしやすい社内風土に変えていきたい」と力を込めた。
初開催のYouth Prideで「成人式」
Tokyo Pride 2025の一環として、6月14、15日には原宿で「Youth Pride」が初めて開催された。LGBTQ+当事者やLGBTQ+に関心を持つユース世代を対象としたイベントで、延べ1300人が来場。「学ぶ」「働く」「暮らす」「遊ぶ」の4つのテーマで、座談会やトークを展開した。2日目の「成人式」は「一人ひとりの『ありたい姿』を自分自身で祝う式」として開催し、ゲストと約40人のユースが「自分らしさ」を誇りながらランウェイを歩いた。
米トランプ政権の再登場で、性的マイノリティに対する逆風が吹いている。しかしTokyo Pride 2025の盛り上がりが示すように、多様性と包摂性を求める声は途絶えることはない。また、初開催のYouth Prideに参加したユース世代は、自ら学び合い、より良い未来をたぐり寄せようとしていた。この「熱」を持続し、真の「Same Life, Same Rights」を実現できるかどうか――。企業やわれわれ大人世代の「本気度」が問われている。
眞崎 裕史 (まっさき・ひろし)
サステナブル・ブランド ジャパン編集局 デスク・記者
地方紙記者として12年間、地域の話題などを取材。フリーランスのライター・編集者を経て、2025年春からサステナブル・ブランド ジャパン編集局に所属。「誰もが生きやすい社会へ」のテーマを胸に、幅広く取材活動を行う。