• 公開日:2020.01.15
英企業がタンザニアで取り組む「生理の貧困」問題
  • SALINA TOLL

経済的な理由で生理用品を買えない「生理の貧困」という問題がある。発展途上国だけでなく、格差が広がる先進国でも問題となっている。英国では2017年、若い女性の10人に1人が生理の貧困に陥り、それを理由に年間13万7700人が学校を休んでいることが分かった。ソウル市は2016年から低所得者層の子どもへの生理用品の支給を補助している。生理用品を手に入れられるかは健康や生活の質、学校や働く機会を左右する深刻な問題だ。(翻訳=梅原洋陽)

発展途上国では、多くの少女や女性が生理用品を手に入れるのに苦労している。「生理の貧困」の問題は特に支援が届きにくいサハラ砂漠以南のサブサハラアフリカで深刻だ。根本的な男女格差を生み出している。自家製の代替品の多くは不衛生で、血液が漏れやすく、匂いもする。その結果として仕事や学校へ行けずに、個人や社会、そして経済に打撃を与える障害になってしまっている。

この問題の解決に挑むことは簡単ではない。偏見や誤解が社会や文化に根付いており、政府の方針はなかなか変わらない。水、公衆衛生、処理施設等がある学校は少なく、生理に関する知識や手に入る商品が基本的に少ない。

持続可能な砂糖やコーヒー豆、アルミなどの原料を販売する英ウィンドワードは、英やアイルランドの開発援助組織から5年間の助成を受け、タンザニアで貧困や排除を生み出す社会制度を変えるために活動する「インクルーシブ・ディベロップメント・インスティチューションズ」と協働して、必要な生理用品を、最も必要としている人達に届ける取り組みを行っている。

長期的な変化にはイノベーションが必要となる。だからこそ従来のようなアプローチではなく、より商業的な方法を取ることが必要だ。行政機関やNGO、製造業、そしてパートナーなど業界を横断した効果的な連携ももちろん必要だが、生理用品市場の限界を押し上げる具体的な取り組みが求められる。

ウィンドワードが、タンザニア最大の都市ダルエスサラームから離れた支援の行き届いていない2つの地域でどのようにして生理の貧困に取り組んでいるかを紹介する。

どこで何が売られているか店舗を把握する

ウィンドワードでは、近くの配送センターから配達地点まで荷物を運ぶ物流業者ルート・プロの卸売や小売店舗に関する3000件の位置調査を頼りに、取り組みを行っている。この調査対象にはデューカスと呼ばれる小さな非正規の店も含まれている。サプライヤーはこのデータを用いて、現在どこでどのような物が販売されているかを把握し、市場における問題を特定しながら支援の少ないエリアに届けるための販売計画を練る。

さまざまなブランドを巻き込む

協働するのは世界的に有名な生理用品ブランド「Always」「Human Cherish」、現地ブランドの「Kipepeo」や新ブランド「Glory」「Binti」、新製品の「Hedhi」の月経カップ、生理管理アプリなどの技術イノベーションも含まれる。それぞれの売上高、流通パート―ナーとの契約、関係性を分析し、市場戦略や消費者調査を見直しながら、改善の余地を探っている。

また、ラストワンマイルの運送方法、ターゲットを絞ったサンプル配布、学校や大学、病院での教育など市場への新たなアプローチも試している。そうすることで、女性たちにどこで、いくらで生理用品が入手できるかを知ってもらおうというのが狙いだ。それに加え、より小さく、価格の安いセット商品を売り出す支援も行う。

共同配送でコストを下げて、遠い地域まで届ける

協働するサプライヤーは日用消費財、特に飲み物と錠前の流通が専門だが、現在、低価格の生理用品を必要とする遠方の地域まで届けている。流通のコストを分割できる上に、遠くまで届けてくれる。サプライヤーは携帯のアプリを使って、店やGPSの位置情報から売上高を把握し、製品がどこまで行き渡っているかを把握できるのだ。

今後、新たな課題に直面することもあるだろうが、柔軟にアプローチを変えて取り組みを続ける必要がある。もしこのイニシアティブが成功すれば、他の企業が「生理の貧困」に取り組むための参考となるビジネスモデルになるだろう。

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