• 公開日:2019.01.31
待機児童ゼロに期待も、企業主導型保育に明暗
  • 辻 陽一郎

今年もSNSでは「#保育園落ちた」の投稿が多く見られるなか、待機児童解消の目玉である「企業主導型保育事業」に見直しが迫られている。昨年も制度を利用し、ANAやヤフーなどが新たに保育所を設立する一方で、内閣府が21日公表した資料では企業主導型保育所1420カ所のうち、約40%の定員に空きがあることが分かった。待機児童解消の一助にはなっているものの、世田谷区では企業主導型保育について自治体の関与の強化や審査方法の見直しなど要望を出している。(辻陽一郎)

企業主導型保育では「設置の際や利用の際に市区町村の関与を必要としない」ことが特徴だ。そのため各自治体では、空き状況や在籍児の情報が不足しており、保育内容を把握することも難しい状況にある。

一方、福岡市では昨年4月時点では充足率が45%だったが、市が定員の空き状況をホームページへ掲載したり、認可保育所の申込冊子へ企業主導型の事業概要・施設一覧を掲載、区役所の子育て支援コンシェルジュが保護者へ案内を実施するなどの対策を講じたことで、充足率は12月時点で65%と上昇した。企業主導型保育施設の利用によって40人が待機児童とならなかったという。

定員割れが4割という状態や保育所の質の問題を改善するためには、自治体との連携を強化することが重要だ。世田谷区は具体的な要望として、「関与を必要としないことの見直し」、「市区町村の意見を尊重し、その意見や指摘を遵守するルール設定」を挙げている。

企業主導型保育所では、「従業員」以外を対象とした「地域枠」を設定することができるため、従業員の職場復帰の助けとなるだけでなく、地域の待機児童解消につながることにも期待がもたれている。

だが福島県によると、地域でのニーズはあるものの、「従業員の保育需要のための施設であり、定員の空きがあっても、待機児童対策に活かしにくい」、「企業側が将来の保育需要のために定員の空きを確保しておくケース」などの課題をあげた。

保育士を確保できないことで、定員数まで受け入れない施設もあるという。福島県の企業主導型保育所は18施設・定員676人分あり、そのうち地域枠は154人だ。

written by

辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)

オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。

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