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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
コミュニティ・ニュース

スペイン発、サステナブル・ファッションブランドの“思想”と行動:SB国際会議特別企画「BRANDS FOR GOOD+ SUMMIT」(2)

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

サステナビリティを体現するブランドは、他企業や生活者をどう巻き込んでコミュニケーションを広げているのか――。サステナブル・ブランド ジャパンが11月29日、企業がマーケティングを通して生活者の行動変容を促すことを目的とする米国発のイニシアチブ「Brands for Good」の日本でのローンチを記念し、東京・日本橋で開催した特別企画「BRANDS FOR GOOD+ SUMMIT」。ここでは、漁船と共に回収した海洋プラスチックごみで商品の素材をつくるなど、社会課題の解決につながるファッションを提案するスペイン発のブランド「ECOALF(エコアルフ)」の日本での展開を通して、ブランドが最も大事にしている自らの“思想”をより強く、効果的に伝える行動について考える。(廣末智子)

SESSION2「ブランド・コミュニケーションで加速するSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」

パネリスト:
下川雅敏・ECOALF JAPAN ディレクター
砥川直大・The Breakthrough Company GOクリエイティブ・ディレクター
ファシリテーター:
高島太士・Brands for Good+ コミュニケーション・プロデューサー
    

「第2の地球はないのだから」とアピール

下川氏

「ブランドのメッセージである『BECAUSE THERE IS NO PLANET B』という英文をどう訳すか。砥川さんと一緒に考えたのは、『第2の地球はないのだから』です。大事なのは、地球環境のためにファッションで何ができるか、どういうアクションを取っていけるか‥」

環境負荷が高く、世界的な汚染産業とされるファッション業界を変えようと、2009年にスペイン・マドリッドで生まれたファッションブランド、エコアルフ。その日本市場での展開を担う、エコアルフジャパンの下川雅敏氏は、セッションの冒頭、すべての商品をリサイクルもしくは環境負荷の低い天然素材のみで作っているというブランドの思想をそう伝えた。

砥川氏

エコアルフジャパンは、スペイン本国のブランドと三陽商会のジョイントベンチャーで、日本市場に合った独自のブランディングを行うよう本国から任されている。その方策を練るため、下川氏とタッグを組んだのが、企業のパーパスブランディングやNPOの支援などに取り組むクリエイティブ・ディレクターの砥川直大氏だ。

底引網漁船と協業し、海洋ごみを回収、ファッションの素材に

エコアルフは、環境や社会への貢献度など持続可能性において優れた企業に与えられるBコープ認証をはじめ、さまざまな国際認証を保有する。労働環境や製造工程におけるトレーサビリティを明確にしながら、ペットボトルや漁網、タイヤなどを独自の技術でリサイクルし、生地素材そのものを開発しているのも大きな特徴。

中でも注目を集めているのが「UPCYCLING THE OCEANS」と呼ぶ、底引網漁船と協業して回収した海洋ごみをファッションアイテムにアップサイクルする取り組みだ。下川氏によると、スペインからギリシャやイタリア、タイなどに広がり、約1万人もの漁師が関わるプロジェクトに成長している。そして、エコアルフの日本での1号店(東京・原宿)がオープンする2020年3月に向け、下川氏と砥川氏が真っ先に取り組んだのも、この壮大なプロジェクトに日本でも挑戦することだった。

国内のリサイクル工場や漁港を一つひとつ訪ねては海洋プラスチックごみの現状や回収することの意義を説明し、さらにそれをどうやったらアパレル製品にアップサイクルすることができるか、という相談をして回る日々。2氏によると、これに約2年をかけ、昨年になって第一弾のTシャツの製品化にこぎつけた。

この話に、ファシリテーターの高島太士氏が「そういう実際の場での交渉というのは、スムーズにいくものなのですか」と聞くと、下川氏は「どの業界でも問題になっているごみを、ファッションの世界で新しいプロダクトに生まれ変わらせようというところに関心を持っていただいた」と、ファッションブランドの持つ力に言及。そもそもナイロンやポリエステルでできている漁網は一度リサイクルして再生させた方がより強度が強くなるといった具体的な説明が決め手となって話が進むケースが多いという。

広告も廃材で、ソーシャルなアクションを

そのように、「UPCYCLING THE OCEANS」の活動は、ブランドの持つ思想や姿勢を丁寧に説明し、協働の輪を広げていく方法だが、エコアルフはそれをもっとダイレクトに、より多くの人に効果的に伝えるための工夫も独自の観点で行っている。次に話題に上ったのは、その代表的な例である「#資源を無駄にしない広告」についてだ。

ここでは砥川氏が、「環境問題に対する意識が海外に比べて低く、地球規模で遅れをとっているのが日本の現状とされる中で、エコアルフがどんなブランドになっていけばいいか」という視点をもとに、「服を売ることを目的にせず、消費者の視点で自分が買う商品によって社会を変えることができると気づいてもらえる、本当の意味でのサステナブルファッションを届けることによってブランドとして差別化を図ろう」と提案し、進めていったことを紹介。

例えば1号店の開店に伴う最初の求人広告のキャッチは、「売れれば売れるほど、地球がキレイになる服を売りまくりたい人」や「売れ残った服の廃棄問題に疑問を持ちはじめてしまったアパレル店員」といったものだった。

そして街中に店舗の大型広告を打とうというとき、砥川氏の頭によぎったのが、「洋服も廃材からつくっているように、広告も廃材で、環境負荷の低い方法でつくろうよ」というアイデアだ。

ある日、渋谷駅構内に出現したのは、日本のエコアルフ独自の「UPCYCLING THE ADS」の看板。大きく書かれた「スペイン発 サステナブルファッションブランド ECOALF 2020.03.13日本上陸」の文字の背景に、「ねぎだく牛丼」や「au学割」などといったポップが透けて見える。吉野家とKDDI、メルカリにみんな電力、朝日新聞とエイベックスの使用済みポスターを台紙として貼り合わせて使用した、文字通り廃材を利用した広告だ。

「廃材を利用するというアイデア自体は大したことない。でもまだ日本に上陸前のエコアルフがやってみたいことに対して、日本の名だたる企業が賛同し、協力してくれた。サステナブルという共通の意義のためであれば自分たちのポスターを塗りつぶしていいと。時代の潮目が変わったことを示す象徴的な広告になったと思います」(砥川氏)

セッションではこのほか、もともと抽出したコーヒーのかすを生地の原料として活用していたエコアルフが、今度はアサヒビールとの協働でコーヒーかすからビールをつくったり、パナソニックの企業広告として用いた約2万本の生花をTシャツの染料として活用したりといった、業種を超えた連携の数々も話題に。下川氏は、「最初に本国から聞いたのは、ストーリーテリングではなく、ストーリードゥーイングのブランドなんだということ。ファッションブランドとしての従来の概念を取り払い、本当の意味でソーシャルなアクションをすることが大事だと思ってやっています」と強調した。