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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
コミュニティ・ニュース

ブランドの力を活用し、生活者と共に真の変化を生み出そう:SB国際会議特別企画「BRANDS FOR GOOD+ SUMMIT」(4)

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局

生活者が理想とする豊かさの概念が移り変わり、企業にとっては、モノを売るための時代から、社会に問いかける時代へと変わろうとしている。サステナブル・ブランド ジャパンが日本でローンチした米国発のグローバルなイニシアチブである「Brands for Good」は、人が必要とするもの、そして地球・社会が必要とするものの両方に訴求する商品やサービスをブランドとしてどう独自に設計していくかを考え、実行していくための枠組みだ。11月29日に行われた設立記念イベントでは、最後に、今、なぜこの取り組みを進めるのか、そこにはどんな可能性があるのかといったことが、米国企業の動きや、ローンチに先立って行った企業のワークショップの内容などを通じて具体的に示された。(廣末智子)

世界観をリードするブランディングの構築へ 企業を横断し展開

SESSION4「BRANDS FOR GOOD―持続可能な暮らしをブランドの力で引き起こす新提案―」
報告者:
青木茂樹・SB国際会議アカデミック・プロデューサー

セッション4には、SB国際会議アカデミック・プロデューサーの青木茂樹氏が、在外研究で留学中のデンマークからオンライン参加。米国が発祥のサステナブル・ブランド国際会議のネットワークの中から生まれた「Brands for Good」について、「一つの企業がエコな商品をつくるというのではない。いろんな企業が横断的に協力し、世界観をリードするブランディングをつくっていこうという動きであり、まさにコレクティブインパクトとしての展開だ」と説明した。

青木氏は、また「Brands for Good」が、情報が溢れる社会の中で、物的要求のみならず、つながりやコミュニティ、精神的安らぎを求める「グッドライフ2.0」を送る生活者を想定し、彼らが求める商品やサービスを提案するツールであり、「人々が欲するもの」と「地球・社会が必要とするもの」、そして「ブランド独自の提供価値」が重なり、これらを集約したところに向けて、「企業がいかに自分たちのリソースを使ってサービスや商品を設計し、届けられるか」を考えるための枠組みであることを強調。

その足がかりとなる指標として、「ブランドと生活者が一緒にできる最もインパクトのある9つのサステナブル・アクション」と呼ぶ項目を紹介した。

9サステナブル・アクションは専門家によって検証されたもので、大きく「気候変動への対応」と、「資源保持」、「多様な社会の促進」に分かれる。さらに「Brands for Good」では、このアクションに加えて、「THE 7 NEEDS STATES」と呼ぶ、人々の行動を動機付ける7つの要求(成長実感、自己承認・価値、帰属意識、シンプル、ルーツがある、楽しむ工夫、パーパス)を項目化しているのが特徴だ。

7ニーズステートには、生活者が「日々を生きていくためのコアバリュー」が反映されている。青木氏は、その思いを、「人々は自分の価値が認められ、大事にしているものが承認されることを欲している。また家族や会社、地域に所属していることで安心感を得たい。そしてシンプルな暮らし方、地域に根ざした生き方を楽しみ、自分のパーパスを大事にしたいと考えている」と解説した。

この7ニーズステートと9サステナブル・アクションを掛け合わせながら、企業がそこに投入できる商品やサービスを形にし、ブランドの規模と影響力を活用して生活者と共に真の変化を生み出すことが「Brands for Good」の目指す姿だ。青木氏は「決してマーケティング部門だけでなく、サステナビリティに関心を持つ企業に、自らのパーパスを見つめ直すためにも、部署横断的に取り組んでほしい」と強調し、セッションを終えた。

生活者のグッドライフをブランドがどうサポートするか ペルソナ視点で議論

SESSION5「Pull Factor Workshop―生活価値に飛び込んだストーリーづくりから得られたもの―」
パネリスト:
大上夏子・クラシエホールディングス 経営企画室 企画部 課長
高島太士・Brands for Good+ コミュニケーション・プロデューサー

「Brands for Good」では、参画企業に対し、同イニシアチブの基本的な考え方を学び、具体的なアクションに落とし込むための入口として、「Pull Factor Workshop」と呼ぶワークショップを提供する。続くセッション5には、このワークショップに3チーム9人で参加したクラシエの大上夏子氏が登壇し、司会を務めたBrands for Good+コミュニケーション・プロデューサーの高島太士氏とともに体験を語った。

ワークショップの内容は初めに9サステナブル・アクションや7ニーズステートについて講義を受けた後、チームに分かれてアイデアを書き出しながら議論を深める方式で、10月に約7時間かけて行われた。

大上氏

セッションで大上氏は、ワークショップでまず感じた、他のワークショップなどとの大きな違いを報告した。それは具体的なマーケティング戦略を描く上で、「Brands for Good」ではいわゆるターゲットではなく、商品やサービスの典型的なユーザー像を指す“ペルソナ”を選定するところから始まる点だ。

ペルソナについては、細かく状況が設計されている。その日、大上氏のチームが選んだのは、60歳で現役で仕事をしているが、最近、妻と共にニューヨークの中心地からロングアイランドに移住したエリック。最近生まれた孫のために地球環境をなんとかしないといけないと考え、もっと社会や環境に配慮した生活を送るにはどうしたらいいかと悩んでいる男性だ。

チームでの議論は、「ブランドオーナーとして私たちは彼に何ができるだろう、というところから」(大上氏)スタート。そこから9サステナブル・アクションと7ニーズステートの考え方を組み合わせ、〈彼は今もフルタイムで働いているが、ロングアイランドに移住し、社会と少し距離を置こうとしたのではないか〉〈次世代に暮らしをつなぐためには、資源を大事にすることも必要だが、まずは自分の暮らしを変えたいと思っているのでは?〉というようにさまざまな意見がエリックを巡って交わされたという。

この報告に、高島氏は、「それこそこのワークショップの醍醐味だ」と応じ、改めてこのワークショップの意味合いを、ペルソナに設定された人物像に迫った上で、「こういう人に商品を売るんだ、というのでなく、この人のグッドライフをブランドがどうサポートするかを考えることにある」と強調した。

ワークショップを終え、チーム外の社員とも結果を共有し合った上での感想を大上氏は、「ターゲットを絞ってソリューションをあてはめていく方法と違い、ペルソナに寄り添い、ペルソナのために何ができるかをみんなで解決しようという姿勢が非常に前向きで、考えるのが楽しかった」と笑顔で総括。ワークショップを通じ、「サステナブルなブランドをつくる上で何を軸にしないといけないかと考えることが、社員の成長にもつながる」とする手応えも語られた。

サステナブル・ブランド ジャパンでは今後、この「Brands for Good」の日本での参画企業を増やし、ブランドの規模と影響力を活用し、生活者と共に真の変化を生み出すための取り組みを加速させる。