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循環型ファッションの米欧最新動向――繊維分別の可能性を示すレポートの発表と、新たなイニシアチブの発足

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Image credit: Sarah Lötscher

米欧のファッション業界で、循環型モデルの取り組みが加速している。企業プラットフォーム「ファッション・フォー・グッド」は5月、「循環のための分別」と題した新たなレポートを発表した。このレポートでは、米国の繊維廃棄物をめぐる現状と、繊維リサイクル拡大の可能性が示されている。コペンハーゲンで行われたグローバル・ファッション・サミットでは、エレン・マッカーサー財団による新たなイニシアチブ「ザ・ファッション・リモデル」が発足した。参画企業は、製品だけでなく、ビジネスモデル自体を循環型にしていくための取り組みを加速する。(翻訳・編集=茂木澄花)

レポート:米国では、繊維の分別に15億ドルの市場機会がある

サステナブルなファッション業界を目指す企業のプラットフォーム「ファッション・フォー・グッド」は5月、レポート「循環のための分別 米国版(Sorting for Circularity USA)」を発表した。消費者による処分行動、繊維廃棄物の構成、そして米国で繊維から繊維へのリサイクルを拡大できる可能性について深掘りした、過去に類を見ないレポートだ。循環型の事業を実現するためのさらなる投資、インフラ開発など、次のステップを決定するために必要な知見が示されている。

米国の繊維廃棄物の現状を把握する

米国は繊維の消費量と廃棄量がいずれも世界最多であるため、二次的な原材料としての使用済み繊維の最大級の供給源となっている。にも関わらず、米国で出る繊維廃棄物のうち再利用されているのは15%にとどまり、残りの85%は埋立地か焼却炉行きだ。

公的機関と民間企業の両方が、繊維から繊維へのリサイクルを推進している。それとともにEUや一部の米国の州で間もなく施行される政策も影響し、使用済み繊維の回収、分別、リサイクルに関わるインフラの需要は高まっている。同レポートは、現在生じている需要と供給のギャップと、それを埋める市場機会を明らかにするために公表された。

「循環のための分別 米国版プロジェクトでは、繊維廃棄物を価値ある資源に転換するという、繊維業界の重要な課題に取り組んでいます」。こう話すのは、ファッション・フォー・グッドのマネージングディレクターを務めるカトリン・レイ氏だ。「このプロジェクトでは、消費者の行動、廃棄物の発生、利用可能なリサイクル技術の間にある関連を調べました。すべての繊維を有効に使い、廃棄を最少にするシステムを構築することを目標としています」

同プロジェクトは、2023年1月にファッション・フォー・グッドと米国の専門コンサルティング会社リソース・リサイクリング・システム(RRS)が立ち上げたものだ。ファッションのバリューチェーンを循環型に移行するための、戦略的な意思決定に欠かせない知見を提供することを目指している。

プロジェクトの基礎となっているのは、2021年にファッション・フォー・グッドとオランダの循環型経済推進団体サークル・エコノミーが導入した枠組みだ。英マトハ社の近赤外線(NIR)技術を活用して繊維廃棄物の構成を分析し、繊維から繊維へのリサイクルの可能性を明らかにする。

プロジェクトに参加したのは、下記の企業・団体だ。

【ファッション・フォー・グッドのパートナー企業】
アディダス、インディテックス、リーバイ・ストラウス、ターゲット
【外部パートナー】
イーストマン、H&Mグループ、ルルレモン、ニューヨーク州サステナブル原材料マネジメントセンター(NYS CSMM)、ノードストローム
【主要なプロジェクト実行パートナー】
二次原材料とリサイクル繊維協会(SMART)、グッドウィル・インダストリーズ、ヘルプシー、ユナイテッド・サザン・ウェイストなど

Image credit: cottonbro studio

重要な2つの分野のデータ不足を解消する

レポートでは、実際に機能する回収のサプライチェーンと必要なインフラを構築するにあたって、データが不足している重要な2つの分野が示されている。「消費者による処分行動」と「使用済み繊維製品の素材的な特徴」だ。同プロジェクトでは、こうしたデータ不足を解消するため、全国的な消費者調査と廃棄物構成の分析が包括的に実施された。

米国の成人1200人に対する調査で、回答者の60%が繊維製品を寄付、再販売、家族や友人への譲渡などを通じて必ず転用しているのに対し、4%の人は常に廃棄していることが分かった。常に廃棄している主な理由には、「製品の状態やサイズが合わないこと」「何が寄付、再利用、リサイクル可能なのか自信がないこと」「本当に再利用やリサイクルされるのか疑っていること」などがある。一方、廃棄物の構成分析では、繊維の種類は綿とポリエステルが最も多く、使用済み繊維製品の56%以上が、再び繊維にリサイクルするのに適した状態であることが分かった。つまり、使用済みの繊維製品は、物理的リサイクルや化学的リサイクルの原材料としてかなり有力だ。

「データがほとんど、もしくは全くなかった回収のバリューチェーンの2つの側面について、この調査で正当性のある知見が示されました。1つ目は、消費者が不要になった繊維製品の処理方法をどのように決定しているのか、2つ目は使用済み繊維製品の繊維構成です」とRRSのシニアコンサルタント、マリサ・アドラー氏は話す。「これらの新たな知見により、より多くの繊維製品を回収できる体制を強化し、繊維リサイクルの経済的な可能性を算出し、データに基づいて協力的な政策を構築することができます。私たちは今回の調査を基に、繊維を循環させるためのさらなる機会を提示し続けることに熱意を持っています」

繊維が循環する未来への道筋を描く

このプロジェクトによって、繊維から繊維へのリサイクルには、15億ドルの市場機会があることが明らかになった。レポートでは、米国の繊維リサイクル産業の成長戦略が概説されている。特に、効率化、コモディティの価値評価の向上、拡大生産者責任(EPR)スキームといった政策のメカニズムによって経済的価値を高めることが強調されている。企業、政府、小売店、消費者、回収業者、分別業者、リサイクル業者、そして金融機関。こうしたステークホルダー間の協働が、サーキュラリティを推進し、研究開発に投資し、協力的な政策と技術革新を促すインセンティブの導入を提唱するために欠かせない。繊維製品をリサイクルし、循環させる活動には、大きな経済的な可能性があることは明白だ。

ファッション・フォー・グッドによれば、今回の知見を基に、さまざまな分別のビジネスモデルと(半)自動の分別技術の実行可能性を評価できる可能性があるという。また繊維製品のクローズド・ループ・リサイクル(使用済みの製品を同じ素材にリサイクルすること)に適したデモ施設を作れる見込みもある。最終的には、半自動の分別プロセスの商業的・技術的な実行可能性を評価し、全国的にソリューションを展開する投資の機会を明らかにする。

アパレルブランド各社が、ビジネスモデルの「改造」に着手

一方、5月21日には、世界的な大手ファッションブランド各社が、エレン・マッカーサー財団(Ellen MacArthur Foundation)のイニシアチブ「ザ・ファッション・リモデル」に参画した。新品の衣類を製造せずに収益を上げる方法を模索するためだ。

ザ・ファッション・リモデルは、コペンハーゲンで行われたグローバル・ファッション・サミットで発足した。循環型ビジネスモデルを当たり前のものにするため、一般消費者向けから高級ブランドまで、業界をけん引する企業や業界内のその他のプレーヤーが結束する。

プロジェクトの最初の参画企業には、アークテリクス、アーケット、コス、H&Mグループ、プライマーク、リフォーメーション、ウィークデイ、ザランドなどが名を連ねる。プロジェクトは、新品の衣料品の製造に頼らず収益を上げるためのソリューションや機会を特定し、循環型のファッション業界を実現するという長期的な目標を推進する。

「当社は、再びエレン・マッカーサー財団と協働できることを楽しみにしています」とH&Mグループのサステナビリティ責任者、レイラ・エルトゥール氏は言う。「ファッション業界の成長を、資源利用から切り離すことで得られるチャンスはとても大きなものです。このプロジェクトでは、こうしたモデルをさらに拡大する方法への理解を深められるでしょう」

配慮ある消費に対する消費者の関心は高まり、ファッション・フォー・グッドのような繊維のリサイクルを増やす取り組みは広がり続けているものの、ファッション業界の大部分はいまだに「採って作って捨てる」モデルで回っている。これにより、毎年何百万トンもの衣類が作られ、着られ、そして捨てられている。

レンタル、再販売、修理、リメイクといった循環型のビジネスモデルは、製品を使い続けることにつながる。最近エレン・マッカーサー財団が実施した研究では、2030年までに世界のファッション市場の23%が循環型のビジネスになると推定されている。ファッションの未来を変えるチャンスは、およそ7000億米ドルに値するということだ。

エレン・マッカーサー財団は、ファッション・リモデルがきっかけとなり、政策立案者の支援を得ながらファッションビジネスのやり方を変革できることを期待している。

「ザ・ファッション・リモデルの参加企業・団体は、循環型のファッション業界に向かう道のりに次の一歩を踏み出しています」。こう話すのは、エレン・マッカーサー財団のファッション分野担当ジュールズ・レノン氏だ。「従来の直線型のモデルに異を唱え、新しい当たり前を作り出すため、企業は製造と収益を切り離して考えなければなりません。今後の製品をデザインし直す努力を加速し、製品を顧客に届け、使い続けてもらうためのサービスとビジネスモデルを考え直す必要があるのです」

「ファッション業界は、刷新に根差した業界です。服が一度着て捨てられるのではなく、より多くの回数着てもらい、より多くの人の生活に関わる。そんな世界を目指す企業主導の取り組みを歓迎します」

同財団は、ザ・ファッション・リモデルから得た学びと経験を共有することで、より強靭(きょうじん)なファッション業界に向かう道を築けると考えている。同財団は2019年から2023年まで、参加企業にワードローブの定番であるジーンズを循環型経済に適したものに作り変えることを課した「ジーンズ・リデザイン」プロジェクトを実施していた。それに続くのが今回のプロジェクトだ。「ジーンズ・リデザイン」プロジェクトでは、製品をデザインし直したが、その製品を届け、使い続けてもらうためのインフラを変革するには、さらなる取り組みが必要だと分かったのだ。

すべての製品に「第二の命」を授け、循環型の未来へ

「アークテリクスは、長持ちする製品を作り、お客様に製品を使い続けてもらうためのツールと情報を提供することで、循環型の未来に貢献します」。アークテリクスの修理サービス、リバードのバイスプレジデント、ドミニク・シャワーズ氏はこう語る。「エレン・マッカーサー財団の実証プロジェクト、ザ・ファッション・リモデルに参加する第一弾の参加企業となれたことに、わくわくしています。アウトドア業界の循環の新たな概念を作るため、デザインと廃棄に対する考え方を見直し、当社が作ったすべてのものに第二の命が与えられる未来を築いていきます」