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WWFが農場で発生する食品ロスの推定ツールをリリース――サプライチェーン上流のデータ不足解消へ

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Image credit:Joshua Hoehne

WWF(世界自然保護基金)はこのほど、農場における食品ロスを推定するツール「グローバル・ファーム・ロス・ツール」をリリースした。世界の農場では大量の食品ロスが発生しているにもかかわらず、その現状に関するデータは不足している。同ツールは、WWFが食品関連企業と協働して生産者向けに開発したもので、食品ロスに関する現行の報告プログラムとも整合する。農場の現状把握と食料の有効活用に役立つことが期待されるツールだ。(翻訳・編集=茂木澄花)

WWFは4月16日、あらゆる規模の生産者が、農場での食品ロスの測定・報告を容易に行えるようにする「グローバル・ファーム・ロス・ツール(GFLT)」の提供を開始した。

このツールは、WWFが開発し、国際的な消費財業界団体であるザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF)の食品ロス連合とその生産者による試験運用を経たものだ。農家や買い手が、農場における食品ロスの原因と、スコープ3の排出など関連する影響を特定して対策するのに役立つよう、シンプルで使いやすいアプローチが取られている。

GFLTの目的は、グローバル・サプライチェーンの中で特に重大なポイントである、農場における食品ロスを減らすことだ。WWFとテスコの調査によると、世界では年間約12億トンもの食料が、農場で収穫中とその前後に失われているという。これは食料生産全体の約15%に当たる。さらに、未収穫の作物の量に関して、生産者と買い手が持っているデータが限られているという問題もある。未収穫の作物には、売り物になるもの、売り物にはならないが問題なく食べられるもの(傷があったり形が悪かったりするもの)、食べられない状態のものがあるが、それぞれの量はよく分かっていない。

生産者と買い手はGFLTを使うことで、現在の食品ロスの水準を把握し、栽培した作物の活用拡大のために新しいチャネルを開発するといったアクションにつながる知見を得ることができる。収穫後の農地や、その後の工程(加工や包装作業など)で残ってしまう余剰作物(熟した状態まで育ったもの)の量を推定することが可能だ。今回の初の公開版ツールは、すべての作物に利用可能だが、特に果実、野菜、ナッツ類に適している。

「食品ロスが多く発生しているところを特定し、その背後にある原因を把握するためには、可視化が必要です」。WWFの食品ロス担当シニアディレクターであるピート・ピーターソン氏はこう話す。「GFLTはその解決策の一つとして設計されています。グローバル・サプライチェーンの中の農場レベルで、食品ロスに関する実用的な一次データ収集の不足を解消するのに役立つものです」

GFLTの試験運用は、CGFが編成する食品ロス連合の協力で実施された。同連合には、18社の世界的大手食品企業や小売企業、メーカーが加盟し、国連SDGsの目標12.3に準じて、2030年までに世界の食品ロスを半減させることを目指している。CGFとWWFは加盟企業と協働し、この新しいツールのインパクトを継続的に評価していく予定だ。どうしたらユーザーにとってより使いやすいツールになるか。現場で幅広く役立つツールとなり、グローバル・サプライチェーン全体でより多くの種類の食品に対応するためにはどうすればよいか。新規の生産者やサプライヤーの利用を推進する方法なども検討する。

「生産者は、サステナブルなフードシステムを作るにあたって極めて重要な存在です」。CGFの健康・サステナビリティ担当ディレクター、シャロン・ブライ氏はこう語る。「CGFは、加盟企業をサポートすることで、そのサプライチェーン内の生産者が農業のフットプリントを追跡して対策し、最終的には削減できるよう取り組んでいます。より効率的な循環型のフードシステムへの移行を促進するために、今回のデータは欠かせないものです」

GFLTは、食品ロスに関する既存の報告プログラムとも整合性がある。世界資源研究所の「10x20x30」、英WRAPの「フード・ウェイスト・アトラス」、国連食糧農業機関の「食品ロス指標」などだ。「チャンピオンズ12.3」に参加する食品ロスの専門家たちの支持も得ており、サステナブル・フード・トラストの「グローバル・ファーム・メトリック」など、既存の農場サステナビリティ報告枠組みにも組み込まれる見込みだ。今後約1年の間に、農場における食品ロスに関連するスコープ3の排出を推定する新機能を開発する予定もある。

同ツールは、GlobalFarmLossTool.orgで、世界中の生産者や農家向けに無料で提供されている。