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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

パナソニックとサムスンがCES2023で発表した、革新的なサステナビリティ家電とは

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Sustainable Brands
Image credit: Panasonic

世界最大のテクノロジー見本市CES(Consumer Electronics Show)が1月5―8日、米ラスベガスで開催され、環境・社会のサステナビリティを実現するテクノロジーに注目が集まった。その中から、パーソナルケア製品のリサイクルに着手し、循環型のサプライチェーン構築を目指すパナソニックと、スマート家電によって省エネ・脱炭素を促進し、さらにアウトドアブランド「パタゴニア」と共同開発した洗濯物から出るマイクロプラスチックの海への流出を減らす洗濯機のコース・洗濯フィルターを発表したサムスン電子のイノベーションを紹介する。

パナソニック、パーソナルケア製品のリサイクル開始へ

Image credit: Panasonic

パナソニックは、シェイバーやトリマーなどのパーソナルケア製品をリサイクルする新プログラム「Take Back for Tomorrow」を発表した。

現在、米国で電動シェーバー・電動トリマーを使用する人口は8800万人に上る。しかし、これまでは使用済みの製品をリサイクルするインフラがなかったため、製品は廃棄され、バッテリーや金属、そのほかの使用可能な部品もリサイクルされてこなかった。

パナソニックの新プログラムは、こうした電子廃棄物を利用することで循環型のサプライチェーンを実現し、さらに消費者が循環型の取り組みに参加しやすくするよう仕組みを整えるものだ。同社は、消費者向け製品を皮切りに循環型のサプライチェーンを構築していきたい考えだ。

電動・電池式のシェーバーやトリマーの利用者は専用サイト「PanasonicMultiShape.com」から申し込むとプログラムを利用できる。パナソニック以外のメーカーの製品でも構わない。パナソニックが送料を負担し、電子機器の修理・リサイクルを行う米ERIと連携して製品の回収を行うため、利用者は専用伝票を使って使用済みの製品を発送するだけだ。

電化製品の部品のリサイクルはERIが行う。同社は全米に拠点があるため、使用済み製品の輸送量を削減でき、炭素効率のより高い輸送を実現できる。

製品に使われているリチウムイオン電池は米レッドウッド・マテリアルズに送られる。同社は、テスラの共同創業者兼CTO(最高技術責任者)のJB・ストラウベル氏が設立。EV(電気自動車)用バッテリーのリサイクルなど、持続可能な電池材料の回収や修理、リサイクル、精錬、再生などリチウムイオン電池の循環型サプライチェーンの構築を手掛けている。リサイクルされた金属はパナソニック製EVバッテリーの正極・負極材に使用される。

さらに、広告・マーケティング会社MRMが加わり、参加企業が共通して掲げるサステナビリティ目標を達成できるように、リサイクル業者の監査などプログラム全体の管理を担う。

パナソニックの家電・美容家電担当ディレクターを務めるウォルター・タファレロ氏は「使用済みの製品のすべての部品を分解、リサイクルし、再利用することは天然資源を保護するためにも不可欠だ。他社と協働し、何一つ廃棄することなく、別の方法で再利用し、より持続可能で循環型の未来に向けて連携していく」と語った。

新プログラムに参加して製品を送ると、パナソニックの新製品「パナソニック・マルチシェイプ(Panasonic MultiShape)」を30%オフで購入することが可能だ。同製品は、持ち手となる1台の充電式バッテリーグリップに、シェイバーやトリマー、歯ブラシなどの付属ヘッドを付け替えて利用できる持続可能な多機能製品で、モーターや充電池、電源アダプターをいくつも所有・利用する必要がない。

サムスン、家庭での環境負荷を削減する次世代型家電を発表

Image credit: Samsung

サムスン電子は、持続可能な暮らしの新時代を切り開く数々の家電イノベーションを発表した。同社の役員でデジタル家電事業のR&D部門を率いるリ・ムヒョン氏は「CES2023で公表するテクノロジーは、ユーザーエクスペリエンス(UX:ユーザー体験)の根幹にサステナビリティを据えたものだ。われわれは世界で最もエネルギー効率が高い家電ブランドになることを目指している。当社の最新の製品やパートナーシップは、より多くの人・コミュニティーが持続可能な暮らしを実践するのに役立つだろう」と語った。

プラットフォーム「SmartThings」で省エネを最大化

Image credit: Samsung

およそ8000万台のデバイスと接続しているというサムスンのIoTプラットフォーム「SmartThings(スマートシングス)」は拡張を続けながら、家庭から排出される二酸化炭素を削減する製品・サービスを提供する。同社によると、SmartThingsアプリの新サービス「SmartThings Energy(スマートシングス・エネジー)」のAIエネルギーモードを利用すると、対応する冷蔵庫では最大15%、エアコンでは最大20%、洗濯機では最大35%の電力使用量を節約できるという。

米EPA(米国環境保護庁)は今月4日、SmartThings Energyを強化・拡大するサムスンのSmartThingsに、第1号となる「スマート・ホーム・エネルギー・マネジメント・システム(SHEMS)認証」を付与した。この認証は、電力利用に関する情報を消費者に共有し、省エネ行動の喚起や電気料金の削減、電力網への負荷を最小限にするデマンドレスポンス措置を促進するために、コネクテッドデバイスを管理・オートメーション化するスマートホーム家電やサービスを評価するものだ。

ネット・ゼロ・ホーム実現に向け前進

より多くの人が家庭でエネルギーを自給できるようにするために、サムスンは同社の掲げるネット・ゼロ・ホーム・イニシアティブの次の段階として「スマートシティ・プロジェクト」を発表した。同プロジェクトでは、米コロラド州リトルトンの新たな住宅地「スターリング・ランチ」とその長年の技術パートナーである独シーメンスと協働し、スターリング・ランチを最新のテクノロジーが利用でき、持続可能性に配慮した、3万人が暮らすコミュニティーになるよう支援する。

SmartThings Energyは電化製品と一体化し、家庭の電力・水・天然ガスの使用量を居住者にリアルタイムで知らせる対話型アプリケーションとして活用される予定だ。スターリング・ランチでは、エネルギー効率の高い電化製品を使うことで電力使用量を削減し、さらに水の利用をモニタリングしながら、太陽光パネルと家庭用バッテリーによって電力を生産・貯蔵することができるようになる。

洗濯物から出るマイクロプラスチックを削減する技術

Image credit: Samsung

電化製品や住居から生じる環境負荷を減らすことは持続可能な未来を築くために不可欠だ。一方で、その他の喫緊の環境リスクに注目することも必要だ。サムスンはパタゴニアと共に、フリースなどの合成繊維やポリエステルを洗濯することで排出され、水域を汚染する“マイクロプラスチック”の問題に取り組んできた。2社の連携の成果が、マイクロプラスチックを減らす洗濯機のコースとフィルターの開発だ。

洗濯する際にコースの中から「Less Microfiber Cycle」(マイクロファイバーを減らす洗濯コース)を選ぶことで、マイクロプラスチックの排出量を最大で54%削減できるようになる。現在、欧州のみで利用できるこの洗濯方法は、今年2月から韓国でも対応する洗濯機で利用できるようになり、米国でも近く利用できるようになるという。

マイクロプラスチックを減らすフィルター(Less Microfiber Filter)は、マイクロプラスチックが洗濯機から海に流出するのを防ぐ役割を果たし、2023年後半には欧州で一部の洗濯機に搭載される。フィルターは個別に購入することができ、メーカーを問わず市場で販売されているどんな洗濯機でも利用できる。