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ESG2.0:宣言から行動へ “S”に取り組み、真のダイバーシティを実現するには

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Maxine Perella

ESG(環境・社会・企業統治)は、企業が宣言をし、害を減らす段階から、宣言を実行し、社会に実際に良い変化をもたらすESG2.0への進化が求められている。ブルームバーグ・インテリジェンスの昨年の予測によると、ESG資産は2025年までに53兆ドルに達し、世界の総運用資産の3分の1以上を占めるとされる。しかし投資家にとって、ESGの「S」にあたる社会的側面、とりわけ多様性や公平性、包摂性(DE&I)については、企業の業績への影響を評価する上で依然として課題が残っている。

企業や金融機関、富裕層、起業家などに戦略的フィランソロピーやインパクト投資、ESG投資の専門知識を提供する米レベック・コンサルティング(フロリダ州マイアミ)のアリックス・レベックCEOは、ESGへの投資は拡大しているにもかかわらず、ダイバーシティの改善や差別の撤廃にほとんど寄与していないと考えている。

「ESG投資の領域では前向きな動きが起きてはいるものの、あるべき姿からはまだ程遠い」

レベックCEOは米サステナブル・ブランドの取材にそう語る。

レベック・コンサルティングは、「女性が所有し、率いる企業(woman-owned and women-led firm)」であることを掲げる一社(米国では、女性が経営する企業であることを示す政府公認の「WBENC(Women’s Business Enterprise National Council)認証」があり、ロゴを掲載した商品も販売されている)。同社はホームページで、「現代の企業は『自社が存在することで、世界はより良くなるのか?』という問いに答えなければならない。今こそ大胆で、変革を起こすリーダーシップが必要だ」と呼びかけている。

経営層の多様性の欠如がもたらすさまざまな課題

2019年のデロイトの調査によると、米国の大手金融機関107社のうち女性CEOはわずか6社。「企業でグローバル・サステナビリティの責任者に就く女性が増えている一方、金融資産の98%は白人男性によって管理・運用されています。こうした経営トップの多様性の欠如は、あらゆる部分での多様性や投資の優先順位に本質的な影響を及ぼします」とレベックCEOは言う。

財務上の意思決定は、どの投資を優先するかに影響を及ぼす。そのため、レベックCEOは、リーダーの多様性を積極的に改善することが重要と考える。

「ベンチャーキャピタル業界は、女性が率いる企業が優れた財務・営業実績を出しているというデータがあるにもかかわらず、女性起業家への投資額は全体のわずか2%です。有色人種の女性起業家となるとさらに低い数字になります」

企業は、コミュニティ・地域社会に与える影響、サプライチェーン内の従業員・労働者の扱いについてより深く理解するために、社会的影響に関するデータの開示や分析を全面的に向上させることが必要だ。こうした点からも、「社会(S)に関するデータの報告について明確なガイドラインと要件を提示することは、確実に役立つことです」とレベックCEOは言う。

「欧米のみならず、発展途上国や新興国市場においても同じように機能するESGの測定・報告方法のグローバルスタンダードが必要です。それにより、リスクを減らし、より平等で持続可能な世界をつくるための積極的な投資判断に役立てることができます」

この点に関して、投資家にとって役立つ進捗の一つに、ESGの測定・報告に関する国際的な開示基準を提供する国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)がある。さらに具体的なものでは、ナスダックの取締役会の多様性(ダイバーシティ)規則がある。ナスダック証券取引所に上場する企業に、取締役会レベルの多様性に関する情報の開示と、白人の男性取締役以外の取締役(1人は女性と自ら認識する人、もう1人は人種・民族マイノリティ、LGBTQ +と自ら認識する人)を少なくとも2人登用するか、登用しない場合はその理由の説明(コンプライ・オア・エクスプレイン)を求めるものだ。

レベックCEOは、この2つの取り組みを明るい兆しと捉えているが、それでもまだ道半ばだと強調する。

「現在のESGレーティングは最適とは言えません。企業が世界に与える影響よりも、世界が企業に与える影響に重きを置いており、効果的ではありません。

ESGはまだ完成形ではないのです。ESGの最大の可能性は、ESG投資とインパクト投資の交差点にあります。受動的なダイベストメント(投資引き揚げ)やネガティブ・スクリーニングから、長期的で持続可能な利益を生み出す積極的な投資へと移行することが必要です」

DE&I課題を発見するには

では、投資家はESGポートフォリオ・マネジメントを行う際、DE&Iの課題を見落としていないかを確認するために、どのようなステップを踏むべきだろうか。レベックCEOはさまざまなレベルで精査するよう助言する。

「投資先の企業を率いているのは誰なのかを掘り下げてみて下さい。取締役会や経営陣の多様性はどうか。給与情報の開示も求めましょう。従業員に十分な給与を払っているのか。そして、同じ仕事をしている多様な従業員の間で給与の公平性が保たれているのかを把握する必要があります」

さらに、レベックCEOは、投資家が企業文化やDE&Iに関する企業行動について、従業員からのフィードバックを得ること、サプライチェーンを調べることも必要だと話す。

「国内外のサプライチェーン全体で、従業員がどのように扱われているのか。サプライチェーン内で、児童労働や女性虐待の事例や報告はあるか。また、ESGのすべての要素は相互に関連していると考えるので、自社のESG関連の投資がもたらす社会的インパクトについてもデータを求めます」

SDGsは、国際的に認知されているだけでなく、ESGの目標を設定し達成するための有効なフレームワークでありバロメーターと考えることができ、役に立つものだ。レベックCEOは、欧米のみならず、ダイバーシティへの投資を世界的に拡大する重要性を強調する。

「多様な視点があることは、より良い結果をもたらします。世界の金融やビジネスの意思決定が多数派主導になり、白人男性によって行われることは、視点やイノベーション、新たなアイデアの創出を阻むだけでなく、人や地球、長期的な収益性が交差する課題の解決策を発見することをも阻むことになります」