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アトランタ市が取り組むフード・フォレスト 「食べものの森」は都市の食料問題解決になるか

Scarlett Buckley
アトランタ市のフード・フォレスト IMAGE: URBAN FOOD FOREST AT BROWNS MILL

米ジョージア州アトランタ市は住民の食料不安に対処しようとしている。その一環として、国内最大の「フード・フォレスト(食べものの森)」事業に取り組んでいる。無料で利用できる2.8ヘクタールの森には、無農薬の薬用、食用の植物が2500種類も植えられている。こうしたフード・フォレストは、住民の心身の健康にも役立つほか、都市のフード・デザート(食の砂漠)問題の解決策にもなりうると期待されている。(翻訳=梅原洋陽)

フード・フォレストは、自然界のシステムやパターンを模して、食べられるさまざまな植物を植えるものだ。フォレスト・ガーデンとも呼ばれ、表層、下層、低木層、草本層、根層、グランドカバー層、つる性植物層など多層構造のエコシステム(生態系)で形成され、近隣住民が利用できる食料や農産物を育んでいる。アトランタ市が運営する「アーバン・フード・フォレスト――ブラウンズ・ミル」は現在、国内最大規模のフード・フォレストで、食料を供給するだけでなく、同市ブラウンズ・ミル地区近隣に住む約6600人に栄養について学ぶ機会も提供している。

「これは食料を得るためだけの場所ではありません。心や身体の健康を保ちながら、人々が学び、自然や都市農業について理解を深める場所です」と、薬草医でありフード・フォレスト・スチュワード兼Trees Atlantaのコミュニティー・コーディネーターのセレステ・ローマックス氏は言う。

元々はピーカン畑だったこの土地は、ディベロッパーに住宅地にするという計画で売却された。しかし、2008年の景気後退により計画はなくなり、2016年にコンサベーション・ファンド(Conservation Fund)が購入するまでは空き地となっていた。アトランタでは住宅地で食べ物を栽培するのは違法だったが、2014年に都市部での農業を許可する条例が認められた。これがフード・フォレストを推し進めるきっかけとなった。

アトランタの人々の健康や幸福にとって、都市部での農業を推進することは重要なことだ。現在、アトランタ都市圏には35以上ものフード・デザート(食の砂漠:健康的で手頃な価格の生鮮食品を入手することが困難な地域)があるとされている。ローマックス氏は、ブラウン・ミルズ地区から一番近いスーパーは8キロから10キロ離れているとメディア『allrecipes』に伝えている。

人口の集中している地域では、新鮮な食品の入手に格差がある。手軽に健康的な食品を手に入れられない人たちは、コンビニやファーストフードの食品に頼るようになり、健康を維持するのが難しくなる。米国に存在する多くの社会的不平等と同様に、この格差は特にBIPOC(黒人、先住民、有色人種:”Black, Indigenous and People of Color”の略)コミュニティに重くのしかかっている。これは、レッドライニング(金融機関が融資の判断をする際に、人種に基づいて居住地域を差別すること)のような何十年も続く差別的慣習によるところが大きい。BIPOCコミュニティは今なお、質の低い食事や空腹、肥満など健康に関する問題によって大きな影響を受けている。

ジョージア州によると、新型コロナウイルスがまん延する前は8人に1人が食料不安を経験していたという。これは16人に1人の子ども、60歳以上では13人に1人の割合だ。さらに今回のパンデミックで状況が悪化し、アトランタ・コミュニティ・フードバンクでは、食料支援を求める声は300%増加。配布する食料は1週間あたり30―40%増えている。

ブラウン・ミルズ地区にあるアーバン・フード・フォレストは、アトランタ市の掲げる、2022年までに85%の住民が家から800メートル以内で健康的な食料を手に入れられるようにするという目標の一環だ。このフード・フォレストは、米国森林局からコミュニティ・フォレスト・プログラムという助成金を受け、同市で森林保全を行うNPOツリーズ・アトランタ(Trees Atlanta)と提携して開発した場所だ。同事業の開始から、ブラウン・ミルズの住民に新鮮な季節の食材と、農業とサステナビリティについての教育を行なっている。

「1週間で40箱ほどの食料をコミュニティに届けています。一箱約18kgなので、1週間で大体720 kgの食料を届けていることになります。金曜日に収穫するので、収穫したものをそのまま箱に詰めています。そしてボランティアの方々にも提供しますし、欲しいという人には誰にでも差し上げています」とローマックス氏は語った。

ローマックス氏は、コミュニティの子ども向けプログラムも人気があると話す。食べ物を栽培したり、食用のハーブ、コンポスト、ミツバチの受粉、コウモリを保全するバットハウスに関する授業などもある。「子どもたちはこの環境をとても楽しんでいる」。

「このコミュニティに関わって10年になります。この森がもたらしてくれるものに近隣住民はとても感謝をしています。森は、私たちを肉体的にも精神的にも癒してくれています」と同氏は語る。

しかし、スーパーマーケットと同じく、森にもストックできる量に限りがある。ブラウン・ミルズのフード・フォレストは、他のコミュニティが食料不安とどのように向き合えるかを示すモデルにはなるものの、この森だけでは大規模な解決策とはならない。同プログラムの責任者も言うように、近隣の居住者以外を支援するキャパシティは持ち合わせていない。

フード・フォレストは、米国全土で2350万人に上る低所得者層の人たちが暮らす「フード・デザート」の助けとなる可能性がある。ブラウンズ・ミルのフード・フォレストは、食べ物や都市農業の可能性について知識を提供しながら、都市の生物多様性と、十分な支援を受けられていない都市コミュニティの人々の健康と栄養面に大きく貢献している。