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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

再生型ビジネス (2) 断片ではなく、全体を見る力を持つ

CAROL SANFORD

リジェネレーションを実践しているとどうすれば言えるか

リジェネレーションの考え方にはとても長い実践の歴史がある。もともとは生態系の概念から生じたものだ。P&Gの革命的ワークデザインの先駆者チャールズ・クローネ氏は「フレームワーク思考」を提唱した。仕事で「全体」を見る力を促す思考だ。その一つに、彼が「働きの段階(Levels of Work)」と名付けたものがある。P&Gの石鹸部門の担当者が、市場や消費者、石鹸作りにいたるまでを有機的な、生きているプロセスとして理解するために活用された。(翻訳=梅原洋陽)

「働きの段階」の枠組みによって、私たちはビジネスや他の活動の中で取り組む異なる働きについて理解できるようになる。働きのヒエラルキーを活用することで、イノベーションや問題解決から得られるリターンは大きくなる。どの活動にも異なる性質の働きが必要だ。チャールズ氏はヒエラルキーの基盤、仕事をやり遂げたり、上手くやることを「オペレーショナル・ワーク」と呼んだ。次の段階は「維持または持続」である。言い換えると、常に変化する生態系のなかで、モノの機能水準を最高の状態に保つ方法である。3番目の「システムの進化」レベルは、時を超えて複雑なシステムを改善させ続けることだ。最後は「リジェネレーションの働き」だ。これは継続的に、それぞれの役割や貢献を引き出していく、システム全体の力を確立することだ。これらのすべての段階が必要なものだが、自分の現在の立ち位置が分からなかったり、もっと悪い場合は自分たち自身で勘違いをしてしまうと、全く機能しなくなる。私は、イノベーションの現場において、このようなことを目にすることが時々ある。状況としては「リジェネレーションの働き」のレベルにいるにも関わらず、「維持または保持」のレベルの問題解決ツールが使われてしまっているようなケースだ。

前回の記事では、リジェネレーションの歴史と概念を取り上げた。再生的に働こうとすることは、その試みの最大の可能性を見つけようとする意図があり、7段階の思考と行動を経て、フェーズが他のフェーズを構築し、相互に作用する。ステージの代わりにフェーズ(段階)という言葉を用いることで、前進しながらも、自分の状況を振り返ることができるだろう。

全体を見るということ:ジンバブエのカエル

第1フェーズはこのブログの主題にもなっていることだが、リジェネレーション的な働きについて考え始めるための第一歩として、このコンセプトをより深く考えることだ。有機的で構造化された全体の見分け方を学ぶことから始めよう。

私の娘がスワースモア大学を卒業した時、現在は名誉教授になっているティム・ウィリアム氏が彼女に生物学で優秀な成績を与えた。彼女は動物や昆虫を解剖することを拒んだが、それでもファイ・ベータ・カッパ(成績優秀)で卒業した。解剖する代わりに、時に撮影装置なども用いながら、動物や昆虫が動いている(生きている)状態を研究した。

彼女の賢明さを評価して、教授は自身が平和部隊に所属し、ジンバブエで教師として働いた時の話を教えてくれた。彼は村の若い生徒に声をかけ、カエルを捕まえてきて与えた瓶に入れさせた。そして、彼らにクロロフィルムを使ってどのようにカエルを殺すか教えた。子どもたちは凍りついた後に叫び出し、全員仮設教室から逃げ出した。

すぐに現地のチーフが出てきて、村の子どもたちになぜカエルを殺すことを教えたのか彼に尋ねた。ティムは、カエルを理解するためには、彼らがカエルを解剖できる必要があっただけだと説明した。

チーフは歯のない笑顔でスクワットの体勢になってカエルの鳴き真似をしながら跳び回った。ティムの話によると、チーフはカエルの行動を非常に正確に描写していた。チーフは立ち上がり、「カエルが行う『全体的な』行動抜きでカエルを理解することはできませんよ」と言った。そして彼はティムにスクワットとジャンプをさせて、カエルになるように指示した。チーフは笑いながら、「本当にカエルを理解するためには、あなたは生きているカエルの全体を感じ取らなければなりません」と去り際に付け加えた。そして瓶のフタを外し、うれしそうなカエルたちは皆草むらの中へ跳んで行った。

有機的に構造化された「全体」とは何か

文字通りの意味、比喩的な意味の両方から、人体について考えてみよう。あなたは人体が全体を構成していることを知っているだろう。人体には独自の構造、システム、過程がある。

●それ自体が独立しながらも、包括する構造をしている。(例:骨格)
●体系化されたシステムがあり、全体の中で活動を順序立て、組織化している。(例:消化・排泄・循環器系)
●活動の過程は、閉鎖的な交換ではなく、自立したオープンな交換を活用する。(例:食べることは、他のシステムと繰り返し新鮮な物質の交換をすることである。閉じられた交換は常に外部からエネルギーの供給を必要とする。オープンな過程はその生態系の中で価値を付加したり、抽出することができる)

こうした基準を満たし、構造やシステム、そして過程を備えた全体の例としては、顧客、地球、場所、そして被雇用者が挙げられる。それぞれが独立した上で他のものを包括する構造や、全体が繰り返し作用する働きを管理する体系化されたシステム、そして交換や燃料の供給を管理するシステムを持っている。

企業の場合、企業は全体の主体だ。部門は独自の構造、システム、プロセスをもった全体として成り立っている。学校は大抵の場合、より大規模な学校のシステムの中に属している。大きな全体の中で独立した一つの全体として稼働しているのである。

なぜリジェネレーションは、構造化された「全体」を必要とするのか

リジェネレーションされる(再生される)のは、構造、システム、過程である。もし有機的なシステムでなければ、再生することはできない。例えば、カリキュラムやプログラムは、過程の「一部」であり、更新することはできても再生はできない。逆に、私たちの骨格は、事故や骨の損失の後でも再生することができる。再生可能であるためには、全体の中でそのプロセスが行われ、固有のDNAを持ち、その状況、その時々のタイミングで、その人に合わせたやり方でなければならない。これは、物理的なものだけでなく、例えば落ち込んだ時の個人の精神状態でも同様だ。

全体から始めなければ何が起こるか

私たちは、骨を全体を構成するものとしてではなく、身体の一つの「部分」として見る時のように、全体から分裂したものから、活動を開始しがちである。私たちは「部分」を衰退や不調の問題点としてとらえ、衰退を止めようとする(今ほど悪くないようにする)。または、一般的に良しとされるものを追求する傾向がある。しかし、その一般的に良いものは私たちが再生したいと考える全体とは適合しない。例えば、ホリスティック(全体的)ではない医学や、繋がりのない(断裂した)、全体の「部分」的に行うサステナビリティのアプローチなどがある。水と森を分けて扱うなどもそうだ。

未発達な考え方で、部分を把握することは失敗につながる。私たちは全体を見ることを学ばねばならない。ビジネスにおいては、すべての部分を一つにまとめる監督が必要になる。医学においては、異なるサブシステムの部分ごとにそれぞれ専門の者を配置することだ。

どのようにして全体を識別し、分裂を避けるか

医学は多くの地域で、人間の健康をホリスティック(全体的)に考える方向に進んでいる。これは個々の症状の解決法を見つけ出すことよりも、人間にとって健康を作り出すとはどのようなものなのかを全体的に考えることに重きを置くことだ。それぞれが全体の一部として存在する環境の中で、システムを健康に保つための心血管システム、代謝システム、循環系システムを基盤にしてどのように機能すべきかを考える必要がある。

そうでなければ、生きているカエルを理解するために、解剖したカエルのパーツを用いているようなものだ。生命の全体を健康にするものが、人々の行動を制御すると同時に、生命維持に欠かせない構造やシステムを作り出す働きをしている。断片的に考えることがデフォルトの考え方となりやすく、その習慣を捨て去ることはとても難しい。ここにいくつかのヒントを挙げる。

1. 特定の全体の働きを理解するのに役に立つ質問を導く、有機的なシステムの枠組みを使う。例:「働きの段階」の枠組みや他にもさまざまな枠組みがある。枠組みは既存のパターンを複製する方法を示すモデルとは異なる。古典物理学や量子物理学における第一原理のようなるものである。枠組みは、前もって決められたパターンに従うのではなく、この時間・場所におけるパターンを生み出す。飛行機を組み立てるためにはモデルが必要である。しかしビジネスや経済、家族にモデルは必要ない。システムの枠組みは、その仕組みを示す答えではなく、疑問によってできている。例えば、私の著書はすべて有機的なシステムの枠組みを使って書かれている。『責任あるビジネス(Responsible Business)』では生態系の生命力、生存能力、そして進化について考えるためにペンタッドという、5つに分かれた枠組みを用いている。

これにより、読者のみなさんもシステムを一部に分けたものとしてではなく、一つのシステムとして使えるようにしている。理解するというのは、いつも同じことを理解するという訳ではない。再考することで、より高い水準の思考や力を引き出すことができる。再考によって、つながりや関係性が見えてくるのである。

2. 全体の特徴を考察する
●全体がどんな構造を持っているか、存在なのか実体なのかを問いかける。すべての構造が有機的なシステムなわけではない。階段も建物も、どちらも生きてはいない。
●その生命を維持するシステムは何なのか。
●他のシステムとは何を交換しているのか。内的な交換のプロセスのみなのか、外部と交換するプロセスなのか。有機的なプロセスによって交換は促進されるのだ。

3. 避けるべきもの
●リスト:「全体」がない、簡単な手引き
●ビジネスにおけるマーケティングのような全体の中での機能

今の時代の最も重要な課題は、全体の働きと全体像を見ることができる知性だ。それによって、思考の断片化や地球のような有機的なものに対して断片的な働きかけを行わないようになる。

次回の記事では、「有機的なものや働きを断片的に考えずに見る方法」について考察する。一匹のカエルをまるまる手にしたら、どのようにそれが動いていると理解するだろうか。