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再生型ビジネス (1) リジェネレーションの歴史と実践

CAROL SANFORD

サステナブル・ブランドの今年のテーマは「リジェネレーション(Regeneration:再生)」だ。リジェネレーションはいま、サステナビリティよりさらに進んだビジネスのあり方として広がり始めている。今回から再生型ビジネス(Regenerative business)の専門家キャロル・サンフォード氏の連載を紹介する。(翻訳=梅原洋陽)

40年前、私は再生型ビジネス・デザインを行っているというビジネスデザイナーやビジネス開発者の集団に出会った。彼らはP&Gで大成功を収め、革命を起こしていた。人と資産を使って、高い投資利益率を生み出しながら、ビジネス界に最先端のアプローチを提供した。利益率が5%を切るような業界で、彼らの手法は同業者が羨むほどの収益を生み出した。

彼らの革新的な売り出し方やビジネスモデルはさまざまな形で真似されたが、同じレベルの収益を上げる企業はほとんどなかった。それは、背後にあるものを理解していなかったからだ。この集団は同じ手法を化学、製紙、食品業界などに持ち込み、驚異的な成功を収めた。1980年代、ハーバード大学や同大学の有名な教授、マイケル・ポーター氏、ロザベス・モス・カンター氏、マイケル・ハマー氏などによって最も研究された1960年代のサクセス・ストーリーだ。

私も1970年代後半に独自に研究にとり掛かり、再生型ビジネス・デザインに基づいた、膨大な数の事例を見てきた。私の著書『責任あるビジネス(Responsible Business)』でもそのうちのいくつかを読むことができる。私は、著書のタイトルを「再生型ビジネス」にしようとしたが、当時は2011年であり、出版社ジョッシー・バスからは誰もそのような考え方を聞いたことがないと言われて変更した。サステナビリティという概念が新しく出てきたばかりの時で、そのマーケットにアピールできるタイトルをつける必要があると感じていた。一方で、私以外の多くの人たちはサステナビリティの不完全性と欠落した要素に気付いており、他のアイデアを探していた。彼らは、当時の風潮であった(そして今もそうだが)、「現状と比較すれば悪くない」以上を目指すべきだと感じていた。

多くのコンサルタントや会議プランナー、著者たちが「サステナビリティの先」(それが私の編集者が最初に考えた私の本の題名だった)へ進もうとしていることを示そうとして、さまざまな用語を採用した。「レジリエンス」という言葉を試してみたり、「リストレーション(復元)」という用語も復活した。サステナビリティの前に人気だった「リニューアル」を使ったものもいた。そして、少数の人たちが「リジェネレーション(再生)」という言葉を使い始めた。この単語はセクシーで若々しかった。再生型経済、再生型都市、再生型ビジネスといった具合にだ。

しかし、リジェネレーションという用語を使うのと、その言葉の深い意味を理解することは、まさにP&Gの事例で起こったことと似ている。アイデアをただ借りるというのは、アイデアの意味を深く掘り下げることほどの成果や変革はもたらさないのである。

これはリジェネレーションの歴史、実践、そして由来や科学まで深く検証するシリーズの序章である。

わたしたちの考える「リジェネレーション」の定義とは

リジェネレーションは、あらゆる生命体を特異性のあるものとみなし、その不可欠な特異性をもって、生命体が一員として組み込まれ長い時間の中で形成された全体(地球、生態系)を相互補完的に成立させるために、生命体自体を発現し成長させることができるパラダイムとそれに付随する能力。生命体は、価値を付け足していくプロセスとして追求される場合にのみ再生(リジェネレーション)される。

多くの要素を含んでいるが、すべてがリジェネレーションにつながるものである。一つずつ見ていこう。

パラダイム:リジェネレーションは世界がどのように成り立っていると認識しているかに基づいている。私たちがどのように生きるべきかを示す世界観とは違い、パラダイムは知恵と言える。リジェネレーションは生態系の科学にその端を発している。特に、DNAに基づく生命科学と、環境に適応しながら自らの異なるバージョンに進化できる生物の能力を参考にしている。それぞれの個体が独自の能力を持ち、時代や環境に合わせて変化したり、一部は再生されたりする。

能力:リジェネレーションは「行動」を規定するのではなく、むしろ世界を異なるレンズを通して見ることができる力のことを指す。慣れ親しんだ、しかし不完全な見方に陥ってしまうのを防ぐには、教育や成長が必要である。近くにある物の全体像を捉えることができず、普遍のものとして認識しがちである。ほとんどの場合、このような能力は伝統的な教育や最先端の教育の一部にも含まれていない。

特異性は、身体面やDNAのレベルでさえ、同じ生物はいないということを意味する。それぞれの生物は、その生物自身の再生を除くと、再び創り出されることはない特有の再現不可能な本質を持っているのである。

生物は、それぞれが入れ子のように組み込まれている全体の中で、生存し、繁栄し、死ぬ。生物相は、特定の流域や生態系の中の植物が植えられている土壌の中で生きている。孤立しているものなどはなく、生態系内の他の要素によってほとんどすべてが決められる。しかし、一つひとつの実体は全体が効果的に作用するように貢献し、システム全体の一端を担っている。これこそが相互関係である。すべてが組み込まれている全体の大枠を理解することが、人間が有益に、そして搾取する形ではなく、生態系に介入できるようになるための方法である。

すべての存在や試みを価値を付加する過程として考えるということは、それぞれの存在を生きているものとして認識し、そしてその本質をより明らかにするものとして考えるということである。その人が何者であるか、どんなものであるかをより考えるということだ!これは、その存在が持っている可能性を解き放つことに繋がる。例えば、シアン化ナトリウムには物質を結合するという本質があることが一度分かれば(多くの場合、金を抽出するために使われたのだが)、他の有害物質と「結合」し、抽出することができると分かる。これにより、現在、使われている有害化学物質を本来あるべき働きの場に戻すことができる。

健康な土壌は種を受け取り、土壌と生態系がその種を育む。種は成熟した植物に成長し、食物と新しい子孫を生み落とす。どの時間軸で考えても、もしくは生命の一つの段階として研究したとしても、無生物の部分に切り分けられていく。これは人間の身体についても同じことが言える。全体を断片的に理解することはできない。生物の先生がカエルやブタの胎児を解剖して教えてくれようとしてもだ。生命の過程や価値の付加は、全体の繁栄のためであり、死や次のサイクルに向けてそれぞれの段階で起きているということを理解する必要がある。

次回の記事では、存在や挑戦が再生的に働くために必用とされるリジェネレーションの7つの段階に目を向ける。そして、健康や活力、生存能力、あらゆる実体の進化や試みを促進するために必要な6つの本質的な付加価値プロセスに着目したいと思う。