サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイトです。ページの先頭です。

サステナブル・ブランド ジャパン | Sustainable Brands Japan のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

なぜ消費者は分かっていても持続可能な製品を買わないのか

  • Twitter
  • Facebook
Melissa Radiwon

特集:SB’19 Detroit

「持続可能性は重要だ」と考えながら、消費者が実際に持続可能性に配慮した製品・サービスを購入するとは限らないのはなぜだろうか。6月に米国ミシガン州デトロイトで開催されたサステナブル・ブランド国際会議のセッションでは、この課題に関するいくつかの消費動向調査が紹介された。

米国MSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)のクリステン・スティーブンス氏(シニア・マーケティング・マネージャー)は、2018年に行った調査を紹介した。調査では、約2万5000人の米国の消費者が持続可能性を保証する第三者認証を望むと回答。しかし、持続可能な商品であることを保証する認証のついた商品があるということを知っていたのはわずか25%だった。同調査ではさらに、消費者が海洋プラチック汚染や乱獲といった持続可能性に関する問題を知っていても、そのことが必ずしも消費者の感情に訴えかけるとは限らないことが分かった。

「消費者に持続可能性に配慮した商品だと信用してもらうには、『感情』『証明』『安心』の3つが必要になる」とスティーブンス氏は話す。

「消費者の期待はかつてないほど高まっている」と話すのは広告代理店ワンダーマン・トンプソンのイノベーション・グループの欧州担当を務めるマリー・スタフォード氏だ。

スタフォード氏が発表した「新しいサステナビリティ」と題した、英国や米国、オーストラリア、中国の約2000人の成人を調査した調査によると、79%の人が個人の活動が地球に与える影響について関心があり、92%がもっと持続可能に暮らしていきたいと考えている。しかし、そうして正しいことをしたいと思いながらも、思いと実際の行動にはギャップがある。スタフォード氏は、「すぐ手に入って、手ごろで、便利なもう一つの選択肢がない」と指摘。

この調査は、サステナビリティがクオリティ(質)よりも強力な購買の原動力になってきていて、サプライヤーも含め、サステナビリティに取り組むことが当たり前になってくるはずだとしている。

ミレニアル世代の女性が生理用品を買うときの購買行動に関する調査を発表したのは、コミュニケーション会社「シェルトン・グループ」のスザンヌ・シェルトンCEOだ。再利用できる生理用品があれば、既存の生理用品を使うのをやめるかという問いに、47%はそうすると回答。シェルトン氏は、環境配慮の視点から製品性能や価格、健康/安全性を見直す余地があると指摘し、こう話した。

「まずは健康や価格、性能、環境配慮という要素を同じように重視し、製品をつくってから、ストーリーを伝えてください。この4点が同列に並べば、消費者はあなたのブランドを選び、購入するでしょう」

急成長する市場

PR会社ポーター・ノベリ/コーン・コミュニケーションのホイットニー・デイリー副社長は、パーパス(存在意義)を掲げるブランドメッセージとファンクション(機能)を掲げるブランドメッセージに対する消費者の反応を比べた調査の結果を発表した。

パーパスを掲げるブランドは、身体的かつ感情的な反応を呼び起こし、深い結びつきを生み出し、ブランドを熱狂的に支持するブランド・アドボケイトやブランドを拡散するブランド・アンプリファイアーの背中を後押しする。

ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスのランディ・クロンタル サッコ氏は、消費財企業に関する驚くべき統計を使ってこのことを裏付ける。

スターン研究所は、36分野7万点以上の製品の販売情報をもちいて持続可能な製品が消費財市場に占める割合は16.6%であると突き止めた。2013年から2018年までの成長率は50%、既存の消費財より5.6%早く成長している。この5年間で、持続可能な製品の購入は880億ドルから1139億ドルへと23%伸びている。

米包装材企業ウェストロックで戦略マーケティング部長を務めるマイク・ミューラー氏もサステナビリティ認証について話した。2018年12月に実施した米国の消費者2400人を対象にしたオンライン調査で、製品のパッケージを見てリサイクルやサステナビリティの対する企業の考えを読みとると答えた顧客は44%、企業のウェブサイトではわずか24%だったという

ミューラー氏は「サステナビリティ認証は直感に訴えかけるもので、簡単に理解できるもでなくてはならない」と話した。このほかに同調査で分かったのは、「リサイクル素材を100%使用」や「リサイクル可能」という言葉の方が「生分解性」「持続可能な管理をされている」という言葉よりも心に響くということだ。

(翻訳=小松遥香)