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国際

気候変動会議COP28が30日から開催――1.5度目標は達成軌道に乗せられるか

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COP28が開かれるアラブ首長国連邦のドバイ(COP28公式HPより)

気候変動対策について各国の首脳らが交渉するCOP28(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が11月30日から12月12日まで、アラブ首長国連邦のドバイで開かれる。いちばんの注目点は、世界全体での温室効果ガス排出量削減の進捗状況を科学的に評価する、初の「グローバル・ストックテイク(Global Stocktake:GST)」が行われることだ。世界の平均気温上昇を1.5度に抑える目標達成に向け、各国が2030年の目標の強化と、次の2035年目標をより野心的なものとするよう合意できるかどうかが大きな焦点となる。(廣末智子)

パリ協定後、初の「グローバル・ストックテイク」の成果が鍵に

2021年のCOP26(英グラスゴー)では、パリ協定の目標を事実上、1.5度に強化することで世界が合意。2022年のCOP27(エジプト、シャルム・エル・シェイク)では、気候変動の影響により深刻化する途上国の損失と損害(ロス&ダメージ)を先進国が補償するための新たな基金を設立する合意がなされたが、1.5度の達成に向けた全体的な削減目標の強化には至らなかった。

今回のCOP28で実施されるGSTとは、パリ協定の目標達成に向けた進捗状況を、世界全体で把握するための仕組みを指す。協定で各国は5年ごとに削減目標などを定めた「国が決定する貢献(NDC:Nationally Determined Contributions)」を改定することが義務付けられているが、その際に最大限の目標の引き上げを検討するための“判断材料”として活用してもらうのが目的だ。

パリ協定によってGSTは2023年に1回目を、以降は5年ごとに行うことが決まっており、今回の初実施に向けて、国連は各国の排出量や削減策の実態などについての情報をもとに、パリ協定の長期目標が世界全体でどの程度達成されているかを専門的・実務的な見地から評価するプロセスを約1年かけて踏んできた。今年9月には各国の代表や専門家、非国家アクターらの対話の結果をとりまとめた統合報告書が発表されている。

それによると、1.5度目標の達成機会は現実になくなりつつあり、目標強化に向けて早急に議論を開始すべきこと、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書の内容も受け、世界全体の排出量を2035年までに2019年比で60%削減すべきという科学的な知見に基づいた方向性が打ち出された。このために、各国のNDCがより野心的な削減目標を掲げることの必要性が強調されている。COP28では各国がこれに合意し、削減目標の引き上げのための具体的な施策を盛り込んだ政治的なメッセージを成果文書としてどう提示できるかが大きな鍵になる。

石炭火力の段階的削減を、化石燃料全体に広げることができるか

一方、温暖化の要因である化石燃料をめぐる問題についても、COP28では議論の行方が注目される。COP26では成果の一つとして、「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の段階的削減」で合意した。COP27ではその対象を石炭火力だけではなく、化石燃料全体にまで踏み込み、削減策を打ち出すことが期待されたが、島嶼国やEUなど80カ国が賛同したにも関わらず、産油国の強い反対で合意が得られなかった。

COP28のホスト国であるアラブ首長国連邦のスルタン・アル・ジャーベル議長は、国営石油会社のCEOでもあり、再生可能エネルギー企業の創設者でもある。こうした立場から、石油ガス業界に対し、「エネルギー転換を加速し、1.5度を達成可能な範囲に保つための野心的な脱炭素化目標に向けて団結するよう」呼びかけを行うなど、このテーマに対して積極的で、現時点で「化石燃料の段階的な削減は避けられない」という見方を示していることからもCOP26に続く成果が期待されるところだ。

ここでキーワードになるのは、“排出削減策が講じられていない”という意味で使われる“unabated”という言葉で、これが「化石燃料」の前に付くかどうかが、争点の一つとされる。化石燃料の生産国、あるいは日本や米国を含め、化石燃料に依存する国々は、化石燃料の使用を廃止するのではなく、CO2回収や貯留(CCS)といった技術を活用して、排出量を削減する方策を示している。つまり、化石燃料の前に“unabated”という言葉を入れることで、一方の “削減策が講じられた”化石燃料については、段階的な削減や廃止の対象に入らない、ということになる。

G7(主要7カ国首脳会議)は今年4月、“排出削減策が講じられていない”火力発電などを対象に、段階的に廃止していくことで合意したが、7月のG20会議では見送られた。1.5度目標の達成に向け、すべての化石燃料を段階的に廃止するのか、それとも排出削減策を講じた化石燃料は別なのか、COP28でも各国の駆け引きが激化することは避けられない。

他のアジェンダの注目点は「損失と損害」ファンドの設立

そして、COP28で他の大きなアジェンダの一つとなるのは、COP27で合意がなされた、「損失と損害」に対する資金支援のファンドの設立であり、それがどのような形で立ち上がるのかは今後の気候変動対策を大きく左右する。

COP27では、資金支援の対象を先進国が「温暖化の影響に脆弱な後発開発途上国に限る」と主張したのに対し、途上国側が強く反発し、最終的に、「途上国、中でも脆弱な国々」といったあいまいな表現がとられた。ファンドの運営についても、米国などの先進国が世界銀行による運営を提案する一方、途上国側は国連が新たな機関を設立して運営を担うよう求めるなど、双方の溝は大きい。

COP28では、この溝をどのように埋められるのか。温暖化の深刻な影響に苦しむ途上国と、排出責任のある先進国、急速に発展する新興国の間で、革新的な資金メカニズムを打ち出すのか。来年2024年には各国が2035年の削減目標を提出しなくてはいけない期限が迫る中、GSTという科学的な進捗評価を経てなされるCOP28の成果が世界における今後の気候変動対策の基盤となるだろう。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年10月からSustainable Brands Japan編集局デスク兼記者に。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。