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イギリス

英、25万人の雇用を創出する「グリーン産業革命」計画発表 ガソリン・ディーゼル車は2030年までに販売禁止

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英国はこのほど、新型コロナウイルス危機から持続可能な社会・経済へ復興するための「グリーン産業革命」計画を発表した。総額120億ポンド(約1兆6700億円)を投じ、2030年までに最大25万人のグリーン・ジョブの雇用創出や支援を目指す方針だ。具体的には、洋上風力発電や低炭素水素への技術投資、環境保全など10部門の目標を掲げる。ボリス・ジョンソン首相は今回の計画を通して、「グリーン・テクノロジー、グリーン・ファイナンスの世界の中心地を目指し、今後数十年にわたる経済成長の基盤を築いていく」としている。(サステナブル・ブランド ジャパン=小松遥香)

新型コロナウイルス感染症の脅威が続く中、EUをはじめ各国が、気候変動対策と生態系の保全をしながら、持続可能な社会・経済の構築に向けて復興していこうとする「グリーン・リカバリー」を推進するための具体策を発表している。

産業革命発祥の地、英国が今月18日に発表した、「グリーン産業革命」のための計画「10ポイント・プラン」は、10部門における今後の方針、見込まれる社会・経済へのインパクト、短中長期目標を示したものだ。ガソリン・ディーゼル車については、2035年までに新車販売を禁止するとしていた目標年を前倒しして2030年までに設定し直した。新たな計画を実行する上で、政府投資は120億ポンド、民間投資は約420億ポンド(約5兆8000億円)を見込む。さらに、来年には、「2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロ」目標を達成するため、主要な経済部門における排出量削減をふくむ「ネット・ゼロ戦略」を発表する方針だ。

<10ポイント・プランの概要>

●洋上風力発電の推進
2030年までに洋上風力発電による発電量を4倍にし、現在、全家庭で使用されている電力以上の発電量を生み出す。
●低炭素水素を促進
2030年までに5GWの低炭素水素を生産。水素タウンを実現する。
●新しい高性能の原子力発電
大型原子炉のほか、小型モジュール炉や高性能モジュール炉へのさらなる投資を行う。
●ゼロエミッション自動車への移行を加速
2030年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売は終了。ハイブリッド車は2035年まで販売可能。EV(電気自動車)の充電が簡単にできるように、充電インフラを拡大する。
●環境に配慮した公共交通機関や自転車、徒歩による移動の割合を増やす
数千台のゼロエミッションバスを投入し、街に自転車レーンを増やし、鉄道網も拡大する。
●ゼロエミッション航空機・船舶の実現
持続可能な航空・船舶燃料の導入を進め、低炭素の移動を実現する。
●環境に配慮したグリーンな建物を増加
建物のエネルギー効率を高め、化石燃料ボイラーを段階的になくしていく。学校、病院、公共の建物の脱炭素化に投資する。
●炭素の回収・利用・貯蔵に投資
2030年までに年間1000万トンの二酸化炭素を回収する。最大10億ポンド(約1380億円)を投資して、各産業で炭素の回収・利用・貯蔵が確立されるよう支援。
●自然環境を保全
新たに国立公園や特別自然美観地域をつくり、英国の面積の30%の自然環境を保全。炭素を吸収するために、2025年までに毎年3万ヘクタールの土地に木を植樹する。4年間で10件の長期景観回復プロジェクトを立ち上げる。洪水対策に最大52億ポンド(約7200億円)を投資する。
●グリーンファイナンス・イノベーション
2027年までに研究開発(R&D)への投資額をGDPの2.4%まで引き上げる。二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするまでの移行期に発生するコストを下げ、より優れた製品や新たなビジネスモデルの開発を促進し、消費者の行動を変容させる。2025年までに、経済界全体に気候関連の財務情報の開示を義務付ける。

今回の計画について、国際環境NGO英グリーンピースのレベッカ・ニューサム氏はガーディアン紙のコラムで、政府が投入する120億ポンドは、以前に約束しているものも合わせた額だと指摘し、「新たな支出は40億ポンドとされているが、40億ポンドはグリーン・リカバリーに必要な投資額の頭金ほどでしかない」「再生可能エネルギーの発電コストは原子力の半分以下になっているにも関わらず、政府はいまだに原子力にこだわっている」と語っている。英最大野党の労働党も、「政府が支出する予算は、直面している失業や気候変動の危機を解決するには遠く及ばす、ドイツ(400億ユーロ、約4兆9800万円)やフランス(300億ユーロ、約3兆7300万円)がグリーン・リカバリーに投入する額とは比較にならない」としている。

来年11月、英北部グラスゴーで国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が開催される。今回発表された計画書では「COPの現在の取り組みでは、パリ協定の目標は達成できず、2100年までに産業革命以前から約3度上昇する可能性もある。COP26で、取り組みの強化を決めることが重要だ。英国のネット・ゼロに向けた野心的な取り組みを通して、他の国々が同様の目標を掲げる後押しをしなければならない」と、開催国としての意気込みを記している。

小松 遥香 (Haruka Komatsu)

アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。一般企業で働いた後、出版社に入社。2016年から「持続可能性とビジネス」をテーマに取材するなか、自らも実践しようと、2018年7月から1年間、出身地・高知の食材をつかった週末食堂「こうち食堂 日日是好日」を東京・西日暮里で開く。前Sustainable Brands Japan 編集局デスク。