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国際

ナイキが北極海航路を利用しないことを宣言、企業の賛同促す

ナイキはNGOのオーシャン コンサーバンシーと連携し「アークティック・シッピング・コーポレイト・プレッジ(北極海航路企業宣言)」を策定した。気候変動により北極海の氷が融解し、航行時間を短縮する新たな航路が開ける一方で、同社はそれらの航路の利用が環境に大きな影響を与える可能性を懸念。脆弱な北極海の生態系を通過する航路を選ばないことを約束した。アパレルを扱うコロンビアやH&Mなどに加え、海運業の長栄海運、ハパックロイド、MSCなどの企業がこの宣言に賛同、署名している。(サステナブル・ブランド ジャパン=沖本啓一)

気候変動の影響で懸念される北極海の「輸送航路」の問題

北極・アラスカを昨年の夏に訪れたというナイキのEVP チーフ・アドミニストラティブ・オフィサーで法務担当責任者のヒラリー・クレーン氏は「美しいだけでなく、広大な地域で、地球の健康にとって重要な地域だ」と話す。

「世界の冷蔵庫」と呼ばれることも多い北極圏は地球の温度を調節し、気候変動に対抗する上で重要な役割を果たすが、気候危機の影響で他の地域の2―3倍の速度で温暖化が進む。氷が融解することで地球上の環境はさらに不安定になるだけでなく、北極圏の貴重な生態系を脅かしているという。

これらの海氷の減少は環境にとってリスクである一方、貨物輸送という観点では、新たな「北極海航路」が開けて従来のルートに比べて航行時間が短縮されるというビジネス上のメリットをもたらす。一部の海上輸送業者によって行われた試験航海と研究によれば、北極海ルートは2030年までにアジア-ヨーロッパ間のコンテナ貿易全体の約8%に利用されると考えられ、2050年までにその貿易の最大10%に利用が増加する可能性がある。利用の増加は「脆弱な北極海の環境に大きな影響を与える」と同社は警鐘を鳴らす。

NGOと協力し誓約を策定、企業巻き込む

「ゼロ・カーボン」「ゼロ・ウェイスト」を目指し「Move to Zero」を掲げるナイキは「Nikeにとって気候変動対策とは、製品の設計と製造方法、世界中に製品を届ける方法を考えることを意味する」とし10月23日、「北極海航路企業宣言」を策定した。「今回の宣言で、私たちは地球を守る、北極海を保護するために役立ちたいという明確な選択をした。それは北極海を利用することではない」とヒラリー・クレーン氏は話す。

ナイキと協働し宣言を策定したのは、米国に本拠を置き海岸のクリーンアップ活動などを行うNGO「オーシャン コンサーバンシー」だ。CEO のジャニス・サールズ・ジョーンズ氏は「ナイキが北極海を健全に保つことが誰にとっても責任のあることであり、それが本当に大事なことであるという認識を持ってくれたことを賞賛する」とし、「今回の発表によって危険な北極海輸送を防ぐために、必要とされる行動を促し、世界的な輸送に伴うCO2排出を削減するためのさらなる協力が生まれることを期待している」と話した。

ベストセラー(デンマーク)、コロンビア(米国)、Gap,Inc.(米国)、H&M(スウェーデン)、ケリング(仏)、利豊(リー&ファン、香港)、PVH Corp.(米国)といったアパレルに関わる大手企業に加え、海運企業からはCMA CGM(仏)、長栄海運(エバーグリーン、台湾)、ハパックロイド(独)、メディテラニアン・シッピング・カンパニー(MSC、スイス)らが、この誓約の作成に関わり、賛同の署名をしている。

Arctic Corporate Shipping Pledge

北極海航路企業宣言

北極は、地球の他の場所よりも2-3倍の速さで温暖化(気温が上昇)している。これにより、夏の海氷が縮小しつづけ、かつてないような海洋生態系の再編成が起き、この地域で暮らす人々にも大きな脅威となっている。北極海航路を通る貨物船が増えることは、さらなる危機を及ぼすことになる。

気候変動により北極の氷が解けることで、これまで航行できなかった航路も貨物船は通ることができるようになる。これらの海路を使うことにより航行時間の短縮も見込めるが、北極海をわたる海運が今後増加すれば、世界でも最も脆弱な環境に大きな影響を与える可能性も懸念される。

世界中に商品を運ぶ企業として、輸送によって排出される温室効果ガスが北極海に危機をもたらし、この航路を通るのをやめなければ状況が変わらないことを認識している。それとは別に、私たちは世界中に商品を輸送することで排出される温室効果ガスの量を減らす努力を続ける。気候変動がすでに北極に暮らす人々、海の生物、生態系に大きな影響をおよぼし脅威となっていることに大きな懸念を持つ企業として、さらなる危機をもたらすことを拒否し、以下の通り誓う。

1. 北極海航路を避ける

a.消費財企業:環境への潜在的影響(見込まれる影響)を認識し、自発的に、各社の商品を北極海航路(地図を参照)を経由して輸送しないようにする。同様に、各社が契約する外洋貨物船や運送会社もこれらのルートを通らない。

b.物流企業:環境への潜在的影響(見込まれる影響)を認識し、各社は意図的に北極海航路(地図を参照)を経由する輸送サービスをしないようにし、自社の貨物船がこれらのルートを通らないようにする。

2. 環境や人への負荷を下げる輸送を促進する

われわれが北極海航路を避ける誓約をしたとしても、誓約することを拒む企業もいる。そうした場合があることを認識し、私たちは環境負荷を下げ、この地域で暮らす人の安全性を確保するための予防措置的な北極海航路の使い方を開発する支援を行う。

この支援では、北極海での重油の使用と輸送の禁止への動きや、国際海事機関(IMO)による「PSSA(特に敏感な海域/A Particularly Sensitive Sea Area)」としての中央北極海の指定、重要な生態学的および先住民の文化的地域を保護する、影響の少ない輸送航路の評価、そして厳格な汚染管理の採用などの活動を促進することが含まれる。

まっすぐ北極海を通過する「北極海航路」は環境への影響が懸念される
沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。