SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイトです。ページの先頭です。

SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)
アメリカ

NYの多様性、「コーシャー」とは?

コーシャーフード認定マークの「Star-K」©️ Kasumi Abe

人種のるつぼ、ニューヨーク。市の人口は862万人(2017年)に上り、外国生まれが36%(2010年)を占める。加えて、言語も多種多様で、100以上もの違った言語が話されているという(中には800以上という見方をしている専門家もいる)。NYにはさまざまな多様性があるが、その1つに、日本でまだあまり知られていないコーシャー(kosher)がある。イスラム教のハラルフードのように、コーシャーはユダヤ教徒が食べられる食物を指す。(ニューヨーク=安部かすみ)

超正統派ユダヤ教徒(※注)の人々も含めて、ニューヨーク市内に住むユダヤ人の人口は110万人以上とされている。つまり市民の8人に1人がユダヤ人という計算になる。

ユダヤ教の聖典には食べて良いもの、食べてはいけないものが記されており、ユダヤ人は厳格にこの規律を守りながら生活している。「コーシャーソルト」(塩)はその中でも最もポピュラーなもので、米国の一般的なスーパーでよく見かける商品だ。

ユダヤ法にのっとった食べ物

コーシャーフードは主に肉、乳製品、パラブ(肉や乳製品やその成分を含まない食べ物)の3つのカテゴリーに分けられる。例えば、肉は調理前に完全に血抜きをし、肉と乳製品を別々に保管し、専用のコーシャーキッチンを使うなど調理も別々に行う。一緒に食べてはいけないものもあり、こうした細かい規制がある。

「コーシャーとは私にとってラビ(ユダヤ教指導者)認証された食べ物を指し、ユダヤ法によって収穫および生産されたもの」と教えてくれたのは、ニューヨークに住むリベラル派ユダヤ人のリアさんだ。

「例えば豚、ウサギ、貝類、甲殻類などはコーシャーではないので食べられません。動物は承認された方法で飼育され、屠殺(とさつ)および処理されなければなりません」(リアさん)

ニューヨークに住む超正統派ユダヤ教徒の人々©️ Kasumi Abe

ユダヤ教と言っても、一見して判別できる超正統派の人々から、「私はユダヤ人です」と言われるまで分からない人々までさまざまいる。では、超正統派以外の人は、どの程度生活にコーシャーを取り入れているのだろうか。

リアさん曰く、「私の父方の祖父母のように超正統派の人々は、家でもレストランでもコーシャーのみを食べますが、母方の祖父母のようにモデレート(中程度)の正統派の人々は、家でコーシャーを食べ、外食する際は通常のレストランに行ったりもします。ただその場合でも、肉と乳製品が一緒になったチーズバーガーのようなものは食べません」。

「コーシャー」認証マークで判別

ユダヤ人でなくても、ニューヨークで生活しているといろんな場面でコーシャーを見ることがある。例えば、グリーンマーケットで開催された子ども向け教育ワークショップを取材したときのことだ。そのワークショップでは、マーケットで売っている新鮮な野菜を使って試食を配り、子どもに近郊農場の貴重さやオーガニックの新鮮野菜を食べることの大切さを教えていた。

簡易調理台の上にコーシャーソルトが置かれてあったので担当者に聞くと、「今日参加しているのが、ユダヤ系の学校の子どもたちだからよ」ということだった。

さて、コーシャーフードは実際にどこで手に入るのか。品ぞろえはユダヤ系のスーパーが最も充実しているが、一般のスーパーでもコーシャーフードは販売されている。

コーシャーフードは認証団体によるマークがついているか否かで見分けられる。認証団体はいくつかあるが、米国の主な認証はUマークのOrthodox Union(OU)や、KマークのKof-Kなどだ。

乳製品やベーカリー類にも認証マーク

一般向けの人気大手スーパー、トレーダージョーズ(Trader Joe’s)でも、さまざまなコーシャーフードが販売されている。肉類、乳製品、パンやクッキーなどのベーカリー類、スナック、コーヒーや茶、ドライフルーツ、ナッツ類、冷凍食品、サプリメントなどに至るまで多種多様で、ウェブサイトでも分かりやすく紹介されている。

トレーダージョーズで販売されているコーシャーソルト(1.69ドル)©️ Kasumi Abe

トレーダージョーズの売り場を見ると、1.69ドル(約190円)のコーシャーソルトが飛ぶように売れていた。商品を手にとった人たちに、なぜコーシャーソルトを選んだのかを聞くと、「デザインで決めた」「サラサラの塩を探していたから」(通常コーシャーソルトは岩塩だが、トレーダージョーズ商品は粉状)といった答えが返ってきた。

つまり、手に取った人はそれがコーシャーだとは知らずに選んでいて、「コーシャーだから選んだ」という人はその場では会えなかった。

1934年創業の老舗、ゼイバーズ(Zabar’s)も一般向けのスーパーだ。もともとユダヤ系スーパーだったが、現在は一般向け商品がメインだ。ここでも、コーシャーフードのラインナップは充実している。店内を見る限り、トレーダージョーズと同じように、品ぞろえは決して多くないが、ハムやソーセージ類、ケーキ、チーズ、ヨーグルト、パン類、コーヒー豆、オリーブオイルで、コーシャーフードの認証マークを見つけることができた。

(左)ゼイバーズで見つけた、コーシャー認定されたオリーブオイル(13.98ドル)。(右)ゼイバーズのコーシャー認定チーズケーキ(23.98ドル)。同店では29種のケーキのうち8種がコーシャー系だった©️ Kasumi Abe
(左)ゼイバーズで見つけた、コーシャー認定されたコーヒー豆(9.88ドル)。(右)同じくコーシャー認定されたハムやソーセージ類©️ Kasumi Abe

いずれもコーシャーフードだからといって特段味が違うこともなく、認証マークもパッケージデザインを崩さない程度に小さく入っており、意識をしなければ気付かないほどなので、一般の人々はそれがコーシャーだとは分からずに購入し、消費していることも多い。

ユダヤ人が多く住む国を訪問することがあれば、そういう視点でスーパーを覗いてみると、コーシャーについてより知ることができるだろう。


※注:超正統派ユダヤ教徒(Orthodox Judaism):男性は厳格なドレスコードがあり、ヒゲやパヨット(payot)と呼ばれるもみあげをカールさせる。女性の洋服も肌を露出させないコンサバティブなもので、超正統派の中でもハシディック派の女性は髪を剃ってカツラを着用する、など細かいルールがある。