• 公開日:2016.06.29
フランスで「エコ・リノベーション」が急拡大
    • 羽生 のり子

    (C)Agence Parisienne du Climat

    フランスで、古いマンションを低エネルギー消費の建物に改修する「エコ・リノベーション」が急速に進んでいる。パリ15区にある1967年建造の高層マンションでは、この改修によって一戸あたりのエネルギー消費量が67%削減する。このほか現在、パリ市の後押しによって700の民間マンションの管理組合で改修計画が進んでいる。

    ユネスコ本部に近いパリ15区では、1960-70年代に高層住宅が増えた。その一つのゲスクラン通りにある民間マンションが、低エネルギー消費建物に生まれ変わるモデルケースとして注目を浴びている。

    パリでエコ・リノベーションを主導するのはパリ市の支援で生まれたNPO「パリ気候事務所(APC)」。パリでは建物がエネルギー消費の35%、温室効果ガス排出の12%を占めている。

    改修が急務だが、管理組合内部の話し合いと決議がなければ始まらず、発案から工事終了まで4-5年必要だ。また多額の費用がかかるため、予算や施工業者の選択に慎重にならざるを得ない。そこでAPCは、管理組合の相談に無料で応じ、改修のプロセス、業者の選び方、助成金の申請、資金調達などについて助言し、計画実現まで指導している。

    これを受け700の管理組合が改修に向けて動き始めた。建物には住居だけでなくテナントも入っているので、4万7千世帯と120社がエコ・リノベーションに向かっていることになる。700のうち100の組合が改修を決議し、工事計画に取り組んでいる。

    15区のマンションには105世帯が入居。エネルギー消費だけで管理費が年間65万ユーロ(約787万円)にも上っていたが、改修後は54%削減できる。エコ・リノベーションを決める管理組合の総会には組合員の9割が出席し、満場一致で賛成した。一戸あたりの負担は2万ユーロ(約242万円)。低収入者には国の援助がある。

    実際の工事では、外壁を25センチ厚くして断熱にし、窓を替え、暖房の熱が逃げないようにすると同時に、室内に湿気がこもらないよう内部の空調設備を改良した。建物の様式を尊重しつつ、より美しい外装することも重視した。今秋改修が終了する予定だ。

    written by

    羽生 のり子(はにゅう・のりこ)

    環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。

    News
    SB JAPAN 新着記事

    「エネルギー白書2025」が示す『解』の見えない日本の脱炭素方針
    2025.06.30
    • ニュース
    • #再生可能エネルギー
    学びを重視する人材流動化時代のマネジメント戦略とは
    2025.06.27
    • ニュース
    • #人的資本経営
    魚が手に入らない――水産資源の危機に立ち上がった料理人たち
    2025.06.27
    • ニュース
    • #気候変動/気候危機
    • #リジェネレーション
    • #生物多様性
    欧州発「エコ規制」にどう向き合うか——ESPR、DPPを成長戦略に
    2025.06.26
    • ニュース
    • #情報開示
    • #サーキュラーエコノミー
    • #サプライチェーン

    Ranking
    アクセスランキング

    • TOP
    • ニュース
    • フランスで「エコ・リノベーション」が急拡大