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面白がり、ワクワクする従業員の経験価値「EX」が企業活動を支える

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Day1 ブレイクアウト

今世界的に企業が求められているのは、DEIから一歩進んだ「DEI&B」への取り組みだ。Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)、そしてBelonging(帰属意識)の頭文字から成るこの概念の根幹には「ウェルビーイング」があるという。そしてそのウェルビーイングを実現するために必要なものが、「Employee Experience(EX)」だ。従業員が企業や組織の中で体験する経験価値「EX」をどのように生み出して事業に結び付けているのか。カヤック、日本航空、合同会社CGOドットコムが自社の取り組みを紹介した。(蒼井海)

ファシリテーター
山岡仁美・サステナブル・ブランド国際会議 D&Iプロデューサー
パネリスト
佐藤純一・カヤック グループ戦略室 執行役員
伊藤翔次郎・日本航空 経営企画本部 経営戦略部 エアライン事業戦略グループ アシスタントマネジャー 兼 W-PIT(Wakuwaku-Platform Innovation Team)サ旅事業ユニット
竹野理香子・合同会社CGOドットコム 総長

サステナブル・ブランド国際会議 D&Iプロデューサーの山岡仁美氏は冒頭、「Belonging」について、「一人一人の心理的安全性が高く、会社や組織、あるいは社会に属している実感を持てている状態だ」と話し、そうした背景を基に個々人のパフォーマンスが上がっていくのだと説明した。さらにそうした状態になれば、誰もが働きがいや生きがいを感じられる「ウェルビーイング」となり、そこで得られる従業員それぞれの経験価値、即ち「EX」が企業活動を支え、事業の推進力となるという。パネリストとして登壇したのは、インパクトのあるEX創出を実現し、ユニークな事業を展開する3社だ。

佐藤氏
  • 「面白がる」を会社として追及

ゲーム、広告、Webサービスの他、葬儀事業なども展開する、“面白法人”カヤックの佐藤純一氏は、「事業内容にはこだわりがない。社員の約9割を占めるクリエイターこそが、自社の経営資源だ」と話し、「面白がる」という会社の在り方を追究しているという。

昨年、サントリーホールディングスと企画した法人向けサービス「社長のおごり自販機」は、広告電通賞を受賞した。社員が2人揃って社員証などを同時にタッチパネルにかざすと、飲み物が出てくる仕組みで、在宅勤務などが進み希薄になった社員同士の交流を促す目的がある。こうしたアイデアが出て来る秘訣として、佐藤氏は「ブレストをとても大切にし、アイデアを放出する時間としている」と語った。

ギャル目線で作成された同社の決算報告資料(講演資料より)

また自社の決算報告資料をより多くの人に見てもらうために、「ギャル目線」の資料を作成。まずギャルたちに説明し、報告書の内容をギャル言葉に書き換え、資料の扉にはギャルがその場で描いた各事業部長の似顔絵を入れている。「いいアクセントになった」と佐藤氏は笑顔を見せた。

伊藤氏
  • “Wakuwaku”をコンセプトにした社内ベンチャーチーム

日本航空の伊藤翔次郎氏は、所属する組織W-PITを、異業種共創により新たな価値やビジネス創造に挑戦する、JAL公認の社内ベンチャーチームだとし、2023年度は120人が参加していると紹介した。大企業ならではの特性を生かし、グループ会社や企業内のさまざまな部署の社員が自発的に集い、年齢や職位などを超えたフラットな関係性の中で、「JALをベンチャーに。」をミッションに活動している。

(講演資料より)

伊藤氏は、「新しいものを生み出すときに、JALのアセットや発想だけでは足りないので、異業種の方と一緒に考え悩んで作っていくことを大切にしている。それを実現するための仲間は本当に大事」だと話す。また活動のコンセプト“Wakuwaku”について、単に「ただ楽しいこと」と捉えられてしまうが、「自分たちの(実現したいという)潜在的な意志を大切にしている。実は大変なことの方が多い」という。

W-PITが企画した「JAL音楽チャーターフライト~音の翼がつなぐ世界~」は、2021年のコロナ禍で苦境に立たされた航空業界と音楽業界がタイアップし、ピンチをチャンスに変えたコンテンツだ。「上空1万メートルでお客さまに東京交響楽団のバイオリンの生演奏を楽しんでいただくもので、私の好きな航空業界と同じく好きな『音楽』の業界が手を組んだら、一体どんなものが生まれるだろうと思ったら、ワクワクした」と、実現のきっかけを明かした。また伊藤氏は、JALという名前があるからこそ、他社に話を聞いてもらえるメリットがあるとする一方で、「社員として他の業務と兼業状態であり、苦労は多い」という。ワークライフバランスをどのようにしていくかが課題のようだ。 

竹野氏
  • ギャルマインドが事業を生み出す

登壇者の中でもとりわけ異色なCGOドットコムの総長“バブリー”こと、竹野理香子氏は、「ギャルマインド」を武器に事業を展開する。竹野氏によるとギャルマインドとは、「自分軸」「直感性」「ポジティブ思考」から成るという。

同社では「ギャル式ブレスト」から事業を考えていくという。まず、ギャルマインドを軸にした斬新なコミュニケーションスタイルを提供。自分らしく自由に意見を述べ、語り合える環境を作ることで、社内や職場で抱える課題解決につなげていく。ブレストの場では、「敬語禁止」「あだ名で呼び合う」など5つのルールを設け、こうしたブレストを通じて創出されたアイデアを、「ギャルマインドの社会実装」として具体的に実現する。

札幌市との取り組み事例(講演資料より)

竹野氏が事例として挙げた、札幌市にある大倉山ジャンプ競技場の「サッポロスマイル 標高バイブスアゲ⤴リフト」は、従来の無機質な印象のリフトにカラフルな装飾を施した取り組みだ。札幌市の職員と共にアイデアを形にした。ギャルマインドが詰まったリフトをきっかけに、コミュニケーションが自然と生まれ、乗客の「バイブス(心の温度)」を上げる狙いがあったという。

「ギャルマインドを持ち続けるためには?」という山岡氏の質問に対して、竹野氏は、「日頃から自分らしくあるためのトリガーを持っているといい」と自身のデコラティブなスマートフォンを見せ、「これを見た時に自分はギャルマインドを持っていると実感できる」と話した。

三者三様の「らしさ」はあるものの、今回のEX創出について佐藤氏は、「つまらないものでも面白がり、『面白がる』という在り方を追究していくと、社内からいろいろなものが生まれてくる。ぼくらの会社の『面白がる』は、『ギャルマインド』とほぼ一緒。自社のブレストは、『面白がる』を社内や社員にインストールする行為。たぶん佐藤さんの“Wakuwaku”も一緒」とまとめた。

面白がり、ギャルマインドを持ち、ワクワクをどう日常化させ、クリエイティブな解釈で事業に結びつけていくか。ひいてはこうした企業活動を通じ、社会問題の解決にまでつなげ、社会全体のカルチャーとしていけるか――。課題はあるが、会場にいる一人一人に元気を与える、希望にあふれたセッションとなった。